弁護士大窪のコラム

2020.09.15更新

2014年にベネッセコーポレーションが個人情報流出させた事件を覚えていらっしゃいますでしょうか。

この事件については、個人情報流出について損害賠償を求める民事訴訟が複数提起されています。そのうちの一件(男性が慰謝料を求めた訴訟の差し戻し控訴審)で、2019年11月20日に大阪高裁は、プライバシー侵害を認め1000円の支払を命じた判決を下しています。この裁判は、一審と二審はともに損害を認めていませんでしたが、2017年に最高裁が精神的損害の有無や程度を十分に検討されていないとして、審理を高裁に差し戻したという経緯を辿っていました。

この事件の判決文については最高裁のホームページで掲載されていますし、判例時報2448号28頁でも紹介されていますので、興味を持たれた方は判決文にあたってみてください。本件訴訟の争点であるそもそも精神的損害が発生したと言えるか否かという点についてはかなり丁寧な認定を行なっていると思いました。

裁判所は、氏名・住所・電話番号等に関して「今日のように,情報ネットワークが多様化,高度化し,容易に入手可能なさまざまな情報を組み合わせることによって趣味嗜好や思想等まで把握されかねない危険性のあることが危惧されていることにも鑑みると,本件個人情報は,個人特定の基本となるベース情報として機能し,それを基に情報集積がされかねないものとしては重要な価値を持つものと評価すべき」とし、また本件で流出した子の氏名・性別・生年月日及び親との続柄については、「日常的に開示されることが多いものであるとはいえ,家族関係が一定程度明らかになる情報や
教育に関心が高いという属性が含まれており,前者に比してより私的領域性の高い情報ということができる」と認定しました。

また、上記各情報が流出したことにより、情報流出元が「教育関係の会社であったことや控訴人の年齢等から今後の学業生活等に関する支出が見込まれる顧客情報として,それらに関係する業者からは価値のある情報として有望視されることは避けられないもの」であり業者等からの広告,販売活動を受け,それに煩わしさや不快を感じる機会が増大することが予想されること、「流出した情報の全てを回収して抹消させることは不可能な状況となっているといわざるを得ない」ことなどから、「故意かつ営利目的を持って本件個人情報が流出したこと自体が精神的苦痛を生じさせるものである上,その流出した先の外縁が不明であることは控訴人の不安感を増幅させるものであって,このような事態は,一般人の感受性を基準にしても,その私生活上の平穏を害する態様の侵害行為」であるとしました。

そして、損害に関して、「本件個人情報を利用する他人の範囲を控訴人が自らコントロールできない事態が生じていること自体が具体的な損害であり,控訴人において予め本件個人情報が名簿業者に転々流通することを許容もしていないのであるから,上記のような現状にあること自体をもって損害と認められるべき」として肯定しています。

本件での損害額(1000円)自体は率直に言って低額に過ぎるのではないかと思われますが、損害認定に至る論理については他の事案でも参考になると考えますので、本ブログでも紹介させて頂きました。

投稿者: 弁護士大窪和久

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