弁護士大窪のコラム

2024.02.10更新

今後、刑事弁護を受ける場合の刑事弁護費用について、より分かりやすい形にするという目的のため、費用を改訂しましたのでご報告致します。

http://keiji.sakuragaoka.gr.jp/fee/

〇弁護士費用について
桜丘法律事務所では、刑事事件を、①事案簡明な事件、②困難事件、③通常事件の3種類に分類し、さらにそれを、起訴前と起訴後の弁護に分けて、着手金と報酬を定めています。

①事案簡明な事件とは、 争いのない在宅事件で過去5年内の前科のない事件をいいます。但し報道等で世間の耳目を集めた事件、人が亡くなった事件、被害金額が300万円を超える事件、その他特別な事情がある場合を除きます。
②困難事件とは、被害者が亡くなった事件、裁判員裁判の対象となる罪名の事件、被害者が4人以上の事件、その他困難と認められる事情がある事件をいいます。
③通常事件とは、上記①②に該当しない事件をいいます。

※表示されている金額は全て消費税込となります。

〇相談料
現に身体拘束されている被疑者のご親族あるいはこれに準ずる方からの相談の場合、初回1時間まで無料です。
それ以外の方の場合、初回相談料は30分5,500円です。
継続相談の料金については担当弁護士にお尋ねください。

〇接見費用(受任前)
33,000円(交通費別)
受任した場合,着手金に充当します。

〇着手金・報酬金
1 事案簡明な事件
(1)起訴前の場合
 着手金 33万円
報酬金 略式罰金の場合33万円、不起訴の場合55万円
(2)起訴後の場合
 着手金 33万円(ただし起訴前から継続の場合は16万5000円)
 報酬金 執行猶予の場合33万円、刑の減軽の場合22万円

2 通常事件
(1)起訴前の場合
 着手金 44万円
 報酬金 略式罰金の場合33万円、不起訴の場合55万円
(2)起訴後の場合
 着手金 44万円(但し起訴前から継続の場合は22万円)
 報酬金 刑の減軽の場合33万円、執行猶予の場合44万円、無罪の場合165万円~
※無罪の場合の報酬金の具体的金額は、事案の性質により協議にて定めます。

3 困難事件
(1)起訴前の場合
 着手金 110万円~
 報酬金 略式罰金の場合77万円、不起訴の場合110万円~
※着手金および不起訴の場合の報酬金の具体的金額は、事案の性質により協議にて定めます。
(2)起訴後の場合
 着手金 110万円~(ただし起訴前から係属の場合は55万円~とします)
 報酬金 刑の減軽の場合110万円、執行猶予の場合110万円~、無罪の場合330万円~
※着手金および執行猶予の場合の報酬金、無罪の場合の報酬金の具体的金額は、事案の性質により協議にて定めます。

〇再逮捕がなされた場合
1逮捕ごとに11万円の手数料を加算します。

〇受任後の接見日当
 初回逮捕に続く勾留(20日まで)あたり5回までは請求しません。5回を超える場合は頻回接見として1回あたり都区内2~4万円、都下近県3~5万円、遠隔地応談の接見日当を請求いたします。
再逮捕以降の接見については全ての接見につき上記接見日当を請求いたします。

〇身柄解放活動(勾留に対する準抗告、保釈請求等)
 身体拘束解放活動は、原則として追加の手数料を請求しませんが、起訴前起訴後を通じて5回を超える場合は、6回目から、1回につき11万円の手数料を請求いたします。

〇示談交渉活動
 示談交渉活動により示談成立した場合、1件ごとに11万円の手数料を請求いたします。

〇出張日当 
 東京地裁本庁以外の警察署、裁判所等に出頭する場合、その時間距離に応じて下記の通り出張日当を請求いたします(下記の時間には事務所からの移動時間を含みます)。
3時間以内 3万3000円
6時間以内 5万5000円
6時間を超える場合 5万5000円に1時間毎に1万1000円を加算します。

〇実費
交通費、コピー代・その他弁護活動に必要な費用)は実額を頂きます。

 

投稿者: 弁護士大窪和久

2023.08.17更新

2023年5月10日に、保釈制度に関連し、刑事訴訟法等の一部を改正する法律が成立しました。本法律では、保釈により釈放された被告人が公判廷へ出頭させることを確保することが目的となっており、以下のような内容が定められています。これら改正により、今後の保釈に関しては監督者の定めが必要となることは多くなると思われます。出頭確保の法整備がなされたからといって保釈が認められやすくなるかどうかについては今後の裁判所の運用を見なければわかりませんが、弁護人の活動としては出頭確保がなされていることから保釈が認められるべきであるとして積極的に保釈請求等を行なうことになっていくでしょう。

1 保釈をされた被告人の公判期日への出頭等を確保するための罰則の新設

保釈等をされた被告人の公判期日への不出頭罪(刑訴法第二百七十八条の二)、保釈等をされた被告人の制限住居離脱罪(刑訴法第九十五条の三)、保釈等の取消し・失効後の被告人の出頭命令違反の罪(刑訴法第九十八条の二、第九十八条の三、第三百四十三条の二、第三百四十三条の三)が新設されました。法定刑はいずれも2年以下の拘禁刑とされています。

2 保釈をされている被告人に対する報告命令制度の創設

裁判所は、被告人の逃亡を防止し、又は公判期日への出頭を確保するため必要があると認めるときは、保釈を許す決定を受けた被告人に対し、「その住居、労働又は通学の状況、身分関係その他のその変更が被告人が逃亡すると疑うに足りる相当な理由の有無の判断に影響を及ぼす生活上又は身分上の事項として裁判所の定めるものについて報告をすることを命ずることができるもの」とされました。そして、報告を命ぜられた被告人が、正当な理由がなく報告をせず、又は虚偽の報告をした場合には、保釈の取消し及び保証金の没取が可能となります(刑訴法第九十五条の四、第九十六条第一項等)。

3 保釈をされている被告人の監督者制度の創設

裁判所は、保釈を許可する場合に、必要と認めるときは、適当と認める者を、その同意を得て監督者として選任することができることとなりました。そして、裁判所は監督者に対して被告人と共に出頭することや、被告人に関する報告を命じることができます。また、監督者が選任される場合に定める監督保証金について、監督者が裁判所の命令に違反した場合監督保証金の没取及び保釈等の取消し等がなされることになります(刑訴法第九十八条の四、第九十八条の八、第九十八条の九等)。

4 拘禁刑以上の刑に処する判決の宣告後における裁量保釈の要件の明確化

拘禁刑以上の刑に処する判決の宣告があった後は、裁量保釈の為には、刑訴法90条に規定する不利益その他の不利益の程度が著しく高い場合でなければならないものと明文化されました。ただし、保釈された場合に被告人が逃亡するおそれの程度が高くないと認めるに足りる相当な理由があるときは、この限りでないものとされています(刑訴法第三百四十四条第二項)。

5 控訴審における判決宣告期日への被告人の出頭の義務付け等

控訴裁判所は、拘禁刑以上の刑に当たる罪で起訴されている被告人であって、保釈等をされているものについては、判決を宣告する公判期日への出頭を命じなければならないものとしました。ただし、重い疾病又は傷害その他やむを得ない事由により被告人が当該公判期日に出頭することが困難であると認めるときは、この限りでないものとされています。(刑訴法第三百九十条の二)なお、控訴裁判所は、上記被告人が判決を宣告する公判期日に出頭しないとき等においては、無罪等の言渡しをした原判決に対する控訴を棄却する判決等以外の判決を宣告することができないものとされました。ただし、 ただし書に規定する場合であって刑の執行のためその者を収容するのに困難を生ずるおそれがないと認めるとき等においては、この限りでないものとされています(刑訴法第四百二条の二)。

6 位置測定端末により保釈されている被告人の位置情報を取得する制度の創設

裁判所は、保釈を許可する場合、被告人が国外に逃亡することを防止するため、位置測定端末(GPS)をその身体に装着することを命ずる(位置測定端末装着命令)ことができることができるようになりました(刑訴法第九十八条の十二第一項)。位置測定端末装着命令が発令される場合、飛行場又は港湾施設の周辺の区域その他の位置測定端末装着命令を受けた者が本邦から出国する際に立ち入ることとなる区域であって、当該者が所在してはならない区域(所在禁止区域)を定めるものとされています(刑訴法第九十八条の十二第二項)。

 

投稿者: 弁護士大窪和久

2022.06.14更新

本年6月13日に、刑法等の一部を改正する法律が参議院で可決成立しました。

今回の刑法改正の内容の一つとして、侮辱罪の厳罰化があります。現行法では刑法231条において、「事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する」と定められておりますが、改正法ではこれに加え、1年以下の拘禁刑(現行法上の懲役・禁固)、30万円以下の罰金についても課することができるようになりました。この改正の理由としては、「近年における公然と人を侮辱する犯罪の実情等に鑑み、侮辱罪の法定刑を引き上げる必要がある」とのことです。

確かに、私が受ける法律相談の中でも、近年はインターネット上の誹謗中傷が非常に多くなっており、立法事実はあると考えます。また、侮辱罪の場合、法定刑が低いこともあってか、立件できるだけの証拠を被害者側が全て揃えた場合であっても、検察官が不起訴処分にしてしまうなどのケースも見受けられました。

今回の法定刑の引き上げにより、従来より捜査機関が侮辱行為について積極的に捜査立件することになるのではないかと思われます。もっとも、特にSNSの匿名の投稿の場合、捜査機関が捜査に乗り出す前にプロバイダの有する発信ログが消去されてしまい、投稿者の特定に至らず立件もできないといったケースも珍しくはありませんので、まずは弁護士に相談されることをお勧め致します。

 

投稿者: 弁護士大窪和久

2021.10.07更新

ヤフーニュースで「法廷で弁護人のPC用電源は使用禁止?!裁判所の仰天判断をどう見るべきか」との記事が掲載されていました。

記事によれば、横浜地裁で行なわれていた公判前整理手続が始まる直前、景山太郎裁判長が公判前整理手続で弁護人がPCを使うのに法廷内での電源を使用しない様に命じたとのことです。これに対して弁護人が異議を申し立てたものの、景山太郎裁判長が異議を棄却した為、弁護人が東京高裁に異議申立をおこなったというものです。

本事件の弁護人である高野隆弁護士のブログではこの裁判長の判断に関する経過が報告されております。同ブログの中では景山太郎裁判長の意見書も掲載されていました。意見書によれば、景山太郎裁判長としては「弁護人らが自前の電源(パソコンの内蔵電池等)を使ってパソコンを使用することは何ら妨げられておらず自由にできるのであって(公判前整理手続期日程度の時間であれば、法廷電源の使用は不要であろう。)、弁護人らの上記主張に論理の飛躍があることは明らかである(もとより検察官も法廷でパソコンを使用することがあるが、当然のことながら、後述のような場合以外に法廷電源を使ってそのパソコンに充電するなどということは一切していないであろう。弁護人らの理屈によれば、訴訟手続において防御活動のために必要なものは全て国費で賄う、あるいは裁判所が法廷に用意する必要があることになりかねない」とのご見解のようです。

しかしながら、本事件は否認事件であり証拠も膨大であるものと思われ、既に4回目の公判前整理手続に入っていた事件です。そのような事件において、公判前整理手続で証拠をPCで検索した上で意見を述べたり、双方の書面の内容を確認することは重要なプロセスであると思われます。また弁護人が他の期日でもPCを利用している場合等、内蔵充電だけでPCが起動できないような場面も十分考えられますので、公判前整理手続においてあえて法廷内での電源を使用させないというのは大変不合理な判断であると私は考えます。「弁護人らの理屈によれば、訴訟手続において防御活動のために必要なものは全て国費で賄う、あるいは裁判所が法廷に用意する必要があることになりかねない」として電源利用を排した景山太郎裁判長の議論は極論に走ったものであり、国民の理解は得られないのではないのでしょうか。

投稿者: 弁護士大窪和久

2021.09.15更新

毎日新聞で、「ネット上の中傷対策、侮辱罪に懲役刑導入 法制審総会で諮問へ」との記事が掲載されています。

同記事によれば、「インターネット上の誹謗(ひぼう)中傷対策として、上川陽子法相は14日、刑法の侮辱罪を厳罰化する法改正を16日の法制審議会(法相の諮問機関)総会に諮問すると発表した。侮辱罪の罰則は刑法で最も軽い「拘留(30日未満)または科料(1万円未満)」と規定されているが、新たに懲役や禁錮刑を導入する」とのことです。

侮辱罪の厳罰化があっても、匿名者の投稿について捜査機関が特定に及び腰であることから厳罰化自体にはあまり意味が無いのは既にブログに書かせて頂いたとおりです。ただ、この記事にも指摘がある公訴時効の長期化(1年から3年)という点については、侮辱罪の立件に繋がりやすくなる可能性はあります。

現在、匿名者の投稿について捜査機関が自ら特定を行なうことは消極的ですので、被害者側が自ら民事上の手続(プロ責法による発信者情報開示)を行なわなければならないことが通例です。ただこの手続にも半年~1年程度の時間がかかってしまい、現行法の侮辱罪ですと発信者情報開示の手続の間に公訴時効期間が経過してしまうという難点があります。この点のみを見てみれば改正の意味はあるかも知れません。

投稿者: 弁護士大窪和久

2021.08.11更新

8月10日にABEMA Prime「なりすましのせいで実害も?被害当事者に聞く 顔も売る時代に...被害は防げない? 」に出演しました。 https://gxyt4.app.goo.gl/jNBZw

時間の関係上番組中話せなかったこともありますので、おってブログの方にも書こうかと思います。

 

投稿者: 弁護士大窪和久

2021.05.18更新

2021年5月号の自由と正義(日弁連の会報)で、オホーツク枝幸ひまわり基金法律事務所の出村洋介弁護士によるエッセイが掲載されていました。

オホーツク枝幸ひまわり基金法律事務所については、以前も当ブログで簡単に紹介しましたが、2019年4月に開設された公設事務所(日弁連のひまわり基金の支援により設立された司法過疎対策を目的とした民間の事務所)です。この事務所がある枝幸町は中頓別簡易裁判所管内にありますが、この管内には弁護士が公設開設以前は一人もいませんでした。弁護士に相談しようとする場合、稚内か名寄(以前私が仕事をしていた場所です)まで行く必要がありましたが、いずれも100キロ程の距離があります。また鉄道も廃止されており、特に冬場はかなりアクセスが困難な場所です。このような事情から、地元からも弁護士の赴任が心待ちにされており、日弁連や弁護士会へ法律事務所の開設を求める声が上がっていました。

当初、日弁連は法テラス(日本司法支援センター)の7号事務所の設立を行なうのが適切であるとして、法テラスに対して7号事務所の設立を求めていました。法テラスの業務には、司法過疎地に弁護士事務所を設立して法律事務を行なうことが含まれております。そして長年に渡り民間による法律事務所がなく司法過疎の問題が解決されていない中頓別簡裁管内は、まさに同業務が行なわれる必要が高い場所でした。

しかしながら、法テラスは、同地域で弁護士会が行なっている法律相談の充足率が低いことから、弁護士の必要性がないとして事務所を設立することを拒絶しました。日弁連や弁護士会からは、地元にいない弁護士の法律相談だけでは地元のニーズを捉えることは困難であること、また距離的な事情を鑑みれば弁護士を地元におくことが重要であること等を主張しましたが、法テラスはこれを聞き入れる事は無かったのです。中頓別簡裁管内は、法律上司法過疎対策を行なうことが求められている法テラスからは文字通り「見捨てられた」といっても決して過言ではありません。

一方、日弁連や弁護士会としては、地元からの要望を無視することはできないと考え、日本弁護士連合会が資金を援助して公設事務所を設立し弁護士を赴任させました。国がインフラ整備することを放棄した場所について民間がかわりに整備したわけです。

このような経緯があることから、赴任した出村弁護士も、「開設先の枝幸町の人口が約8000人と、他の公設事務所と比較してやや小規模ということもあり、相談等の需要がどの程度あるかについて心配していただく声も聞いておりました。そのため、正直なところでは、私自身も不安を感じていた面がありました」とエッセイで書かれています。しかし、開設してから2年経過した現在は、「実際に様々な相談や依頼を受けていく中で、当初の私自身の心配は杞憂であり、周辺地域の相談需要は決して少なくないことが分かってきました」ということです。出村弁護士はこの理由について、事務所の広報や地域の方々との人間的なつながりができたことをあげていますが、このような活動は弁護士が常駐していなければできなかったでしょう。

「法テラスが見捨てた地」において、オホーツク枝幸ひまわり基金法律事務所が地元の法的ニーズに応えていることについては、元名寄で働いていた弁護士として嬉しく思います。それと同時に、こうしたニーズを無視して地域を見捨てた法テラスは厳しく批判されてしかるべきだと改めて思いました。

投稿者: 弁護士大窪和久

2021.02.24更新

以前こちらのブログで紹介した弁護革命で大幅なバージョンアップが行なわれましたので簡単に紹介します。

バージョンアップ後、「PDF書き込み機能」が加わりました(こちらの動画で機能紹介がなされています)。

注釈モードにすると、PDFにマーカーで強調したり、付箋を入れて書き込みを入れたりすることが可能です。注釈モードで書き込み等を入れた場合でも、書き込みを入れていないオリジナルのPDFは保存されており、書き込みを入れたPDFもオリジナルのPDFも両方ダウンロードすることが可能です。PDFに書き込みをすること自体は個別のアプリケーションでも行なうことはできるのですが、ブラウザ上でこのような作業が簡単にできてしまうのはとても便利ですし、データについては複数人で共有することも可能なので弁護団で検討することも可能です。

また、今回のバージョンアップで「証拠番号埋め込み機能」が加わり、これも便利です(こちらの動画で機能紹介がなされています)。

裁判所に書証を紙で提出する場合、印刷した書証に「弁○号証」などの証拠番号を入れる必要がありましたが、印刷したものにいちいち書き込んでいくのは手間です。PDFにアプリケーションで証拠番号を手作業で個別に入れた上印刷するというやり方もありますが、これも手間であることには変わりません。弁護革命ではオリジナルのPDFに証拠番号を埋め込んだものを一括で準備することができてしまうので、証拠番号を入れる手間が一気に無くなりました。

弁護革命は、多数の資料を検討する必要がある弁護団事件で特に威力を発揮しますが、今回のバージョンアップで更に有用性が上がりました。今後弁護団で事件をする際には是非導入していこうと思います。

 

 

投稿者: 弁護士大窪和久

2021.01.18更新

NHKの報道によれば、「横浜市港南区の横浜刑務所では、先月15日に30代の男性刑務官の感染がわかって以降、受刑者や職員に感染が相次ぎ、これまでに38人のクラスターが発生しています。横浜刑務所によりますと、受刑者や職員への検査を進めた結果、18日までに、新たに、20代から60代までの刑務官を含む職員4人と、20代から70代までの受刑者46人の、合わせて50人の感染が新たに確認されたということです」とのことで、横浜刑務所で職員や受刑者あわせて合計88人の感染者が確認されたということです。刑務所内においてコロナウイルスのクラスターが発生しているということになります。

法務省の発表するデータによると、昨年の3月以降、拘置所や刑務所内の被収容者にコロナウイルスの感染者は確認されていましたが、クラスターと呼べるほどの感染拡大はなされていませんでした。ところが今年に入って1月4日から10日の間に27人の被収容者の感染が確認され、検査を進めて行くにつれて感染拡大がわかってきたということになります。

もともと、拘置所や刑務所は雑居房もありソーシャルディスタンスが保たれる様な場所ではなく、クラスターが発生されるという潜在的な危険があったことは否めません。この点、法務省や検察庁のこれまでの見解としては、感染防止対策がなされておりクラスターが発生するような可能性はないというものでした(弁護人の主張に対しても、クラスター発生の余地はないと堂々と主張していました)が、現実にはこのようにクラスターが発生するに至っています。

本年1月15日の報道によれば、昨年12月に新宿警察署で留置された被疑者が相次いで感染をしていたことを踏まえて、警視庁が「今後は」逮捕された容疑者については全てPCR検査を行なうということです。が、そもそもこれだけ市中感染が広がっている中、これまで被疑者全員のPCR検査を行なわなかったというのが誤りだったのではないでしょうか。陽性者が素通りになってしまえば、警察の留置所や拘置所がクラスターになってしまうのは当然のことでしょう。

収容されている人にとってはコロナウイルスの感染から免れる手段がありません。クラスター発生を防ぐことはまさに人権問題だと思います。これ以上のクラスター発生を防ぐためには、被収容者全員の定期的な検査および感染者の隔離、施設内でのソーシャルディスタンスの確保は必ずなされるべきでしょう。

 

 

 

投稿者: 弁護士大窪和久

2020.12.28更新

2020年も終わりにさしかかりました。

今年一年を振り返ってみると、新形コロナウイルスの感染拡大によりどの立場にある人も大変な影響を被ったということがとても大きいと思います。

司法に関しても、緊急事態宣言に伴い長期間裁判所の期日が原則として行なわれなくなり、手続の遅延が著しいことになりました。日本では司法のIT化がようやくスタートラインに立ったところであり、裁判所に行かなければ裁判を受けられないという旧態依然としたシステムの弊害が明らかになりました。新形コロナウイルスの感染拡大については、年末にかけても広がっているところであり、再度裁判手続が中止せざるを得ないという事態に追い込まれることもあるかも知れません。

新形コロナウイルスの感染拡大以外の司法のトピックとしては、カルロス・ゴーンさんの事件をきっかけとして、日本の人質司法がクローズアップされたことが大きかったです。我々刑事弁護人にとっては、被疑者を身柄拘束して、弁護士の立ち会いも取調には認めず、長時間の自白を事実上強要し、その調書をもととして有罪判決が作り上げられているという実態は常識ですが、こうした実態が国外に知れ渡ったことになります。もっとも法務省は国外からの批判に一切耳を傾けていません。年末年始の時期も変わらず身柄を拘束され、自白を強要されている人が多数いることは今年も変わりませんでした。

日本の司法システムが、諸外国に比べても色々な面で後れを取っていることはもはや明らかだと思いますが、変化のスピードはとても緩慢です。司法に携わっている一人としては強い無力感を覚えますが、現在の古い司法システムの中において、一弁護士としてできる限り依頼者の役に立つように来年度以降も精進していきたいと思います。

 

投稿者: 弁護士大窪和久

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