← ブログ一覧

「闇バイト」に応募してしまったら――抜け出す方法と、家族が逮捕されたときにすべきこと

SNSで見かけた「高額」「即日払い」「ホワイト案件」といった言葉につられて応募したところ、実際には特殊詐欺や強盗の実行役だった、というご相談や、ご家族が突然逮捕されて初めてそのことを知った、というお問い合わせをお受けすることがあります。いわゆる闇バイトの問題です。まず率直に申し上げておきたいのは、「バイト」という軽い言葉で募集されていても、その中身が詐欺や強盗、窃盗であれば、それは立派な犯罪であり、加わった方も重く処罰され得る、ということです。他方で、まだ実行に加わっていない段階で早く手を引き、警察や弁護士に相談することができれば、被害を生まずに済み、ご本人の立場を守れる場合もあります。できること、できないことを正直に申し上げながら、どう対処すればよいかを整理しておきたいと思います。

はじめに、なぜ「応募しただけ」「少し手伝っただけ」でも重い責任を問われ得るのかを確認しておきます。応募や問い合わせをしただけで直ちに犯罪が成立するわけではありませんが、その後の関わり方によっては、実行に至らない準備の段階であっても処罰の対象になり得ます。たとえば、強盗を計画してその準備をした場合には、実際に強盗を行なう前であっても、強盗予備罪(刑法二百三十七条)に問われることがあります。実際に、指示役から道具を受け取ったり、現場の下見をしたりした段階で、この強盗予備罪で逮捕されている例があります。また、特殊詐欺で現金やカードを受け取る「受け子」、口座からお金を引き出す「出し子」として関与した場合には、たとえ受け取った報酬がわずかであっても、詐欺罪(刑法二百四十六条)や窃盗罪(刑法二百三十五条)の共犯として、重く処罰されるのが実情です。とりわけ強盗罪(刑法二百三十六条)は、五年以上の有期拘禁刑という重い法定刑が定められており、原則として執行猶予を付けることができませんので(刑法二十五条)、初めての事件であっても実刑となる可能性が高い犯罪です。なお、令和七年六月一日から、それまでの懲役と禁錮は「拘禁刑」に一本化されています。

次に、闇バイトの特に恐ろしい点として、いったん関わると容易には抜けられない仕組みがある、ということを申し上げておきます。募集の過程で、運転免許証などの身分証や、自宅の住所、家族の写真といった個人情報を送るよう求められることが多く、これらを渡してしまうと、抜けたいと言った途端に「家族に危害を加える」などと脅され、やめるにやめられなくなってしまいます。ここで、やっていただきたくないことがあります。第一に、指示役に対して、身分証や家族の情報をこれ以上渡さないことです。第二に、脅されているからといって、指示に従って現場へ向かったり、現金やカードを受け取りに行ったりしてしまうことです。それによって、被害者を生み、ご自身の罪も重くなってしまいます。第三に、怖くなって、やり取りをしていた通信アプリの履歴やメッセージを消してしまうことです。これらは、ご自身がどのように引き込まれ、脅されていたのかを説明するための大切な記録になります。そして、相手に個人情報を握られているからと一人で抱え込み、自分だけで解決しようとすることも避けてください。

そのうえで、抜け出したいときに取り得る手段を申し上げます。すでに応募してしまった、あるいは指示を受けてしまったという段階であっても、実行に加わる前であれば、警察に相談して保護を求めることができます。警察庁も、令和六年十一月に、犯罪の実行者の募集に応募してしまった人に向けて、勇気を出して警察に相談するよう呼びかけ、相談者やその家族の安全を守るための対策を講じるとしています。相談は、お近くの警察署のほか、警察相談専用電話(#九一一〇)でも受け付けています。ご本人が直接連絡することがためらわれる場合には、弁護士が間に入って、警察への相談や、その後の手続をお手伝いすることもできます。大切なのは、実際に犯罪を実行してしまう前に止まることです。

ここで、近年の捜査の動きについても触れておきます。警察は、闇バイトへの対策として、令和七年一月に「仮装身分捜査」と呼ばれる新しい手法の実施要領を定めました。報道によりますと、これは、捜査員が架空の身分証などを用いて実行役の募集に応募し、犯人側に接触して摘発するというもので、令和七年中に一部の警察で運用が始まり、実際に逮捕に至った例も報じられています。募集する側からは、応募してきた相手が本当の応募者なのか、捜査員なのかが分からないということでもあります。「匿名でやり取りしているから捕まらない」という考えは、もはや通用しないと考えていただいた方がよいと思います。だからこそ、少しでも「おかしい」と感じた時点で関わりを断ち、相談していただくことが、ご自身を守ることにつながります。

最後に、すでにご家族が逮捕されてしまった場合について申し上げます。逮捕されると、原則として、まず警察の留置場に身柄が拘束され、家族であっても自由に会うことが難しくなります。この段階で最も大切なのは、できるだけ早く弁護士がご本人と面会(接見)し、取調べにどう対応すべきかを助言することです。闇バイトの事件では、ご本人自身も脅されていた被害者としての側面があることや、指示役との関係、関与の程度といった、その後の処分を左右する事情がありますので、早い段階で弁護士が事実関係を丁寧に聴き取り、必要な主張を整理していくことが重要になります。当番弁護士制度を利用すれば、逮捕された方は一度は無料で弁護士の接見を受けることができますし、そのまま弁護人を依頼することもできます。なお、ご本人が未成年(少年)である場合には、事件は最終的に家庭裁判所へ送られ、成人とは異なる手続で扱われますので、その点も踏まえた対応が必要になります。

費用や見通しについては、事件の内容や関与の程度、身柄が拘束されているかどうかによって大きく異なりますので、一律に申し上げることは難しいところです。ご相談の際に、想定される手続の流れとあわせてご説明いたします。闇バイトは、軽い気持ちで足を踏み入れてしまうと、取り返しのつかない結果を招きかねません。応募してしまってどうすればよいか分からないという方も、ご家族が逮捕されて不安を抱えておられる方も、一人で抱え込まず、まずはお早めにご相談いただければと思います。

まずは状況をお聞かせください。

相談内容と相手方を確認し、面談方法やご用意いただく資料をご案内します。