性的な画像や動画を、元交際相手などに無断でインターネット上に公開された、あるいは「別れるならばらまく」「言うことを聞かなければ拡散する」と脅されている、というご相談をお受けすることがあります。いわゆるリベンジポルノの問題です。まず結論から申し上げますと、こうした画像については、削除を求めることも、公開した相手や投稿者を特定して責任を追及することも、法律上の手立てがございます。また、こうした行為は、それ自体が犯罪にあたり得るものです。もっとも、いったん広く拡散してしまった画像を完全に消し去ることは容易ではなく、また相手の資力によっては損害の賠償を現実に回収できないこともあるというのが正直なところです。だからこそ、まだ被害が広がっていない早い段階で動くことが何よりも大切です。人には言いづらい、恥ずかしい、と一人で抱え込んでしまわれる方が少なくありませんが、どうか一人で悩まず、できるだけ早くご相談いただきたいと思います。
はじめに、この問題に関わる法律を整理しておきます。一つは、平成二十六年に施行された「私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律」、いわゆるリベンジポルノ防止法です。これは、撮影の時には本人が同意していたとしても、その性的な画像を、本人の同意なく、第三者が本人を特定できる方法で不特定または多数の人に公開する行為などを処罰するもので、公開した者には三年以下の拘禁刑または五十万円以下の罰金が定められています(同法第三条)。さらに、他人にそうした公開をさせる目的で画像を提供する行為も、別に処罰の対象とされています。もう一つは、令和五年七月に施行された、いわゆる撮影罪(正式には「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律」といいます)です。こちらは、そもそも本人の同意なく性的な姿態を撮影する行為や、そうして撮影された画像を提供・公開する行為を処罰するもので、盗撮などの同意のない撮影がなされた画像が問題になる場面で関わってきます。このほか、性的な画像を無断で公開する行為は、名誉やプライバシー、肖像といった人格的な利益を侵害する不法行為(民法第七百九条)にもあたり得ます。
被害に遭われた際、あるいは脅されている段階で、避けていただきたいことがあります。第一に、脅しに屈して、要求されるままにお金を渡したり、相手の言いなりになってしまうことです。いったん要求に応じてしまうと、それを足がかりに次の要求が繰り返されることが少なくありません。第二に、感情的になって相手を問い詰めたり、挑発するようなやり取りをしてしまうことです。かえって相手を刺激し、公開に踏み切らせてしまうことがあります。第三に、証拠を残さないまま、問題のやり取りや投稿を消してしまうことです。脅しの文面や、実際に公開された画像のURL・画面は、後に削除や損害賠償、刑事の手続を進めるうえで欠かせない証拠になりますので、日時が分かる形で保存しておいていただくことが大切です。そして、「必ず消せます」とうたう削除の代行業者にも注意が必要です。弁護士でない者が報酬を得て削除の交渉や手続を代行することは、弁護士法(第七十二条)に触れるおそれがあります。
取り得る手段の一つ目は、公開された画像の削除です。まず、その画像が掲載されているサイトやSNSの運営者に対して、削除を申し出ることになります。リベンジポルノ防止法には、この削除を円滑に進めるための特例が設けられており、被害を受けた方から削除の申出を受けた事業者が、投稿をした人に対して削除してよいかを照会したうえで、二日以内にその人から反対の返答がなければ削除することができる、とされています。通常の権利侵害を理由とする削除の申出では、この照会の期間が七日とされていますので、リベンジポルノについては、より早く削除できる仕組みが用意されているということです。また、令和七年に施行された情報流通プラットフォーム対処法により、大規模な事業者には削除の申出窓口の整備や対応結果の通知が義務づけられています。運営者に申し出ても応じてもらえない場合には、裁判所に対して投稿の削除を求める仮処分という手続を取ることになります。もっとも、同じ画像が別のサイトへ次々と転載されてしまうと、一つ一つ削除していくことになり、完全に消し去ることが難しくなります。この意味でも、拡散が広がる前の早い段階での対応が重要です。
二つ目は、誰が公開したのかを明らかにする、投稿者の特定です。発信者情報の開示は、私が中心的に取り扱っている分野の一つです。匿名で投稿されている場合には、令和四年から始まった発信者情報開示命令という裁判手続を用いて、まず画像が投稿されたサイトの運営者に対して、投稿に用いられたIPアドレス等の開示を求め、次に、そこから判明する通信会社(経由プロバイダ)に対して契約者の氏名・住所の開示を求める、という流れで進めていきます。もっとも、通信会社が保有するアクセスの記録は一定の期間で消去されてしまいますので、記録が残っているうちに手続へ着手できるかどうかが、特定できるかどうかを大きく左右します。相手が元交際相手など、すでに誰であるか分かっている場合には、この特定の手続を経ずに、直接その相手に対して責任を追及していくことになります。
投稿者や公開した相手が判明した場合には、その者に対して、名誉やプライバシーの侵害を理由とする損害賠償(民法第七百九条)を求め、また、二度と同様の行為をしないよう求めていくことになります。あわせて、刑事の面では、警察への相談や告訴を検討することになります。先ほど述べたリベンジポルノ防止法の罪は、告訴がなければ起訴することができない、いわゆる親告罪とされており、告訴には、犯人を知った時から六か月という期間の制限がありますので、この点にも注意が必要です。他方で、同意なく撮影された画像が問題となる撮影罪については、告訴がなくても処罰の対象とすることができるとされています。どの法律に基づき、どのような手続を取るのがよいかは、撮影や公開の経緯、相手が特定できているかどうかによって変わってきますので、事情をお伺いしたうえで、見通しを立てて進めていくことになります。
費用や期間の見通しについては、削除を求める先がどこか、投稿者の特定が必要かどうか、刑事の手続まで行なうかどうかによって大きく異なりますので、一律に申し上げることは難しいのですが、ご相談の際に、想定される手続の流れとあわせてご説明いたします。繰り返しになりますが、性的な画像の被害は、時間が経つほど拡散が広がり、対応が難しくなってしまいます。恥ずかしい、誰にも知られたくない、というお気持ちはよく分かりますが、ご相談の内容やお名前を外に漏らすことはございませんので、どうか一人で抱え込まず、まずはお早めにご相談いただければと思います。