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ネット中傷の削除・発信者情報開示にかかる費用と期間の目安――ご相談の前に知っておいていただきたいこと

インターネット上で中傷され、投稿を消したい、あるいは誰が書いたのかを明らかにしたい、とご相談にお越しになる方から、必ずといってよいほどお尋ねいただくのが、「結局、いくらかかり、どのくらいの時間がかかるのですか」という点です。発信者情報の開示は私が中心的に取り扱っている分野の一つですので、まず率直に結論を申し上げますと、費用も期間も、投稿の数や内容、どのサービスに書かれたか、相手方の通信会社がどこか、任意の求めに応じてもらえるかどうかといった事情によって大きく変わり、一律にお答えすることは難しいというのが正直なところです。もっとも、おおよその考え方や目安を知っておいていただくことは、進めるかどうかを判断するうえで役に立ちますので、ここでは一般的なところを整理してお伝えしたいと思います。なお、当事務所の具体的な費用については、ホームページの費用のご案内のとおりですので、そちらとあわせてご覧いただき、最終的にはご相談の際に、事案に即してご説明いたします。

はじめに、費用と期間を考える前提として、ネット中傷への対応には大きく分けて二つの方向があることを確認しておきます。一つは、投稿そのものを「削除」してもらうこと、もう一つは、その投稿を書いた「投稿者を特定」すること(発信者情報の開示)です。この二つは目的も手続も異なり、したがってかかる費用も期間も別に考える必要があります。両方を行なう場合もあれば、削除だけ、特定だけ、ということもあります。どちらを、あるいは両方を選ぶのかによって、全体の費用と期間は変わってきます。

まず削除についてです。多くのサービスには、権利侵害を受けた方が削除を申し出るための窓口が設けられており、令和七年四月に施行された情報流通プラットフォーム対処法によって、大規模な事業者についてはこの窓口の整備や対応結果の通知が求められるようになりました。まずはこの窓口を通じて任意に削除を求めることが考えられ、これに応じてもらえれば、比較的短い期間で、費用も抑えて解決できることがあります。応じてもらえない場合には、裁判所に対して投稿の削除を求める仮処分という手続を取ることになります。仮処分は、通常の裁判よりは早く進む手続ですが、それでも申立てから結論が出るまでに一か月から数か月程度をみておいていただくことが多く、弁護士にご依頼いただく場合には、手続に応じた弁護士費用が必要になります。もっとも、削除は、投稿であれば何でも認められるわけではなく、その投稿が社会的な評価を低下させ、かつ真実に反する事実を述べているなど違法といえることが必要ですので、見込みを立てたうえで進めることになります。

次に、投稿者の特定、すなわち発信者情報の開示についてです。これは私が中心的に取り扱っている分野でもあります。誰が書き込んだのかを明らかにするためには、まず投稿がされたサービスの提供者から投稿に用いられたIPアドレスなどの情報を開示させ、次に、そこから判明する通信会社(経由プロバイダ)に対して契約者の氏名・住所の開示を求める、という二つの段階を経ることになります。令和四年十月からは、これらをできるだけ切れ目なく進めることを念頭に置いた「発信者情報開示命令」という裁判手続が設けられ(情報流通プラットフォーム対処法、旧プロバイダ責任制限法に基づくものです)、次にどの通信会社へ進めればよいかを明らかにさせる「提供命令」や、通信記録が消されないよう命じる「消去禁止命令」とあわせて用いることで、サービスの提供者が応じてくれる場合には、以前より迅速に進められるようになりました。この新しい手続を使える場合には、おおむね数か月程度で特定に至ることも期待できますが、サービスによっては提供命令に応じない取扱いが続いているものもあり(例えばXがそうです)、その場合には、まず開示の仮処分でログイン情報などを開示させ、判明した経由プロバイダに対して改めて開示を求めるという二段階を順に進めることになりますので、特定までに半年から一年程度かかることも少なくありません。

費用の内訳についても触れておきます。弁護士にご依頼いただく場合の費用は、一般に、手続に着手する際にお支払いいただく着手金と、結果に応じてお支払いいただく報酬金、そして実費(裁判所に納める印紙代や郵券、通信会社への手数料など)に分かれます。ここで留意していただきたいのは、削除、サービス提供者に対する開示、経由プロバイダに対する開示、さらにその後の損害賠償請求といった手続の段階ごとに、それぞれ費用が発生するのが通常だということです。とりわけ投稿者の特定は、前述のとおり複数の段階を踏むため、その分だけ費用が積み重なりやすい類型といえます。なお、裁判所に納める印紙代などの実費自体は、一つひとつの手続についてみれば比較的少額にとどまります。弁護士費用の水準は事務所や事案によってさまざまで、一般には一つの手続あたり数万円から数十万円といった幅で説明されることが多いようですが、これはあくまで世の中で語られているおおよその相場観であり、実際の金額は事案の内容や手続の段階によって異なります。当事務所の費用については費用のご案内に沿ってご説明いたしますので、必ず着手の前に見通しをご確認いただきたいと思います。

そして、最も率直に申し上げておきたいのが、費用と、最終的に相手方から回収できる金額との関係です。投稿者を特定できた場合には、その方に対して名誉毀損などの不法行為(民法第七百九条)に基づく損害賠償を求めることになり、特定のために要した弁護士費用(調査費用)の一部または全部を損害として請求できる場合もあります。実際に、これらの費用を相手方の負担と認めた裁判例もあります。もっとも、それが常に全額認められるとは限らず、一部にとどまることもありますし、慰謝料そのものの額が数十万円程度と、必ずしも高額にはならないことも少なくありません。そうしますと、かけた費用に見合うだけの金額を相手方から回収できず、いわゆる費用倒れになってしまう可能性も、正直に申し上げてございます。加えて、苦労して特定できても、相手方に資力がなければ現実の回収が難しい、ということもあり得ます。ですから、何のために手続を行なうのか――金銭的な賠償を得ることを重視されるのか、それとも二度と書き込みをやめさせること自体に意味を見いだされるのか――を、費用の見通しとあわせてあらかじめ整理しておくことが大切だと考えています。

一方で、費用を抑えたいお気持ちから、やってはいけないこともあります。まず、「必ず消せます」「他より安い」とうたう削除の代行業者に安易に頼ることです。弁護士でない者が報酬を得て削除の交渉や開示請求の手続を代行することは、弁護士法(第七十二条)に触れるおそれがあり、かえって問題を大きくしてしまうことがあります。また、費用を惜しんで着手を先延ばしにすることにも注意が必要です。経由プロバイダが保有する通信の記録は、おおむね三か月から六か月程度で消去されてしまうことが多く、これが失われてしまうと、その後にいくら費用をかけても投稿者にたどり着けなくなってしまいます。費用の見積もりを取っているうちに手遅れになる、ということのないよう、まずは早めにご相談いただくことをお勧めします。

このように、ネット中傷の削除や発信者情報の開示にかかる費用と期間は、どの手続をどこまで行なうかによって大きく変わります。だからこそ、最初の段階で、取り得る手段と、それぞれにかかるおおよその費用・期間、そして相手方から回収できる見込みまでを含めて見通しを立て、費用に見合うかどうかをご一緒に検討することが大切だと考えています。ご相談の際には、投稿の内容やサービスを拝見したうえで、想定される手続の流れと費用の見込みを率直にご説明いたします。まずは投稿のURLや画面を保存していただいたうえで、通信の記録が消えてしまう前に、お早めにご相談いただければと思います。

まずは状況をお聞かせください。

相談内容と相手方を確認し、面談方法やご用意いただく資料をご案内します。