弁護士大窪のコラム

2020.03.18更新

 2020年4月1日より改正民法が施行されます。今回の改正は大規模改正であり多くの点が変わっておりますが、その中でも特に気をつけておく必要のある消滅時効の期間の変更について簡単に説明致します。

1 消滅時効期間の変更

 消滅時効とは、権利を行使しないまま一定期間が経過した場合に、その権利を消滅させる制度です。これまでは、原則として「権利を行使することができる時から10年」経過した場合に消滅時効が成立することになっていました。但し、例外が多数定められていました。例えば飲み屋のツケは1年で時効が成立したり、弁護士報酬については2年で時効が成立するということになっていたのです。

 改正後は、シンプルに統一化し、消滅時効期間は原則として「権利を行使することができることを知った時から5年、または権利を行使することができる時から10年」となりました。例えば貸金の場合、契約上返済期限は定まっているのが通常ですから、返済期限がきてから5年間経過してしまうと消滅時効が成立してしまい貸主が返済を求めることができなくなってしまいます。

2 生命・身体の損害による損害賠償請求権の時効期間の特則

 法改正により、生命・身体の損害が生じた場合の損害賠償請求については、通常より時効期間を延長させる(消滅時効期間を「権利を行使することができることを知った時から5年、または権利を行使することができる時から20年」とする)という特則が設けられました。詳しくは下記の通りです。

(1)契約責任に基づく損害賠償請求の場合

 例えば、会社で従業員が過労死し、会社は過大な労働をさせたとして契約上の安全配慮義務違反があったとして従業員の遺族に損害賠償しなければならないとします。前記の通り法改正後の消滅時効期間は原則「権利を行使するができることを知った時から5年、または権利を行使することができる時から10年」ですが、このケースのように契約上の義務違反により生命・身体の損害が生じた場合には、「権利を行使することができることを知った時から5年、または権利を行使することができる時から20年」の間は消滅時効が成立しないことになります。

(2)不法行為に基づく損害賠償請求の場合

 例えば、自動車事故により被害者が亡くなり、運転者側が被害者の遺族に対し損害賠償しなければならないとします。自動車事故のような不法行為の損害賠償請求の時効期間は原則「権利を行使することができることを知った時から3年、または権利を行使することができる時から20年」ですが、生命・身体の損害が生じた場合には、法改正により上記契約責任の場合同様「権利を行使することができることを知った時から5年、または権利を行使することができる時から20年」の間は消滅時効が成立しないことになります。

3 消滅時効については、2020年4月1日の法施行日の前に生じた債権、および施行日以後に生じた債権でもその原因である法律行為が施工日前になされていたものについては、改正前の民法の時効期間が適用されることになります。

 よって2020年4月1日以降、消滅時効期間がどうなるかについては契約時期等により異なることになりますので注意が必要です。

投稿者: 弁護士大窪和久

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