弁護士大窪のコラム

2021.03.02更新

2021年2月26日に、プロバイダ責任制限法改正案が閣議決定され、国会に提出されました。法案の内容も総務省のホームページで公開されています。

プロバイダ責任制限法の改正については、以前も当ブログでとりあげた通り、発信者情報開示の在り方に関する研究会により検討が行われてきました。研究会の出した最終とりまとめ骨子では、発信者情報の開示対象の拡大(電話番号およびログイン時情報)、新たな裁判手続の創設と通信ログの保全、裁判外開示の促進が主な内容になっており、改正案でもそれに沿った内容の条文改正が予定されています。

また、改正案は、管轄について詳細な規定を定めており、新たな裁判手続(発信者情報開示命令事件)において、相手方が海外法人であったとしても、申立内容が法人の日本における業務に関するものである場合であれば日本の裁判所の管轄が認められることが明文で定められました。また、プロバイダが地方にある場合でも、東京地方裁判所あるいは大阪地方裁判所に管轄を認めており、今後東京地裁及び大阪地裁で本件事件を集中的に取り扱うことを想定していると思われます。

今国会で改正案が成立した場合、2022年までの間に施行されることになります。また、法改正にともない、総務省では相談対応の充実に向けた連携と体制整備の方もおこなうということです。詳細はこちらの「政策パッケージの進捗状況について」に紹介されています。

今回の改正案では、開示までの手続の簡略化を図った一方、権利開示の要件(権利侵害が明らかであるとき)の要件は緩和しませんでしたので、法改正がなされたとしても権利侵害の明白性についてプロバイダ側が厳しく争ってくることには違いはありません。被害者としては十分な主張立証を行う必要があり、開示手続に関して弁護士に依頼する必要性が減じるということもないだろうと思われます。

投稿者: 弁護士大窪和久

2021.02.17更新

INTERNET Watchで、「Clubhouseの一部データ、中国企業からアクセスできる可能性。スタンフォード大調査」という記事が掲載されています。

記事によれば、「Clubhouseのデータの一部に中国企業からアクセスできる可能性があることがスタンフォード大学の調査で判明し、物議を醸している。これは同大学のサイバーポリシーセンターが発表したもので、送信されているとみられるのはユーザー固有のClubhouseのIDとチャットルームのID。送信先はClubhouseにAPIを提供している上海のソフトウェアプロバイダーAgora社で、つまり誰がどのチャットルームにいたか、Agora社を経由すれば確認できてしまうことになる」ということです。

この点に関しスタンフォード大学のサイトでも詳細なリポートが掲載されているので、興味のある方はこちらも参照してみてください。ポイントとなるのは、Agora社が中国に拠点を置いているため、中国のサイバーセキュリティ法の対象になり、Agora社が保有しているデータが中国政府に開示されるリスクがあると言うことです。特に問題となるオーディオデータについてはClubhouseの方としては保存していないとアナウンスしていますが、仮にそれが事実であるとしても、誰がどのチャットルームで話をしていたか中国政府により特定可能というだけでも、懸念するには十分であると言えます。

今後このアプリがどうこの問題に対応するのか(しないのか)は問題ですが、少なくとも当面は使用するのを控えた方が良いかも知れません。

 

投稿者: 弁護士大窪和久

2021.01.14更新

本日、インターネット権利侵害者の調査における米国ディスカバリの方法について、第二東京弁護士会電子情報部会内において井上拓弁護士からお話を伺いました。米国ディスカバリとは、具体的には合衆国連邦法第28編1782条(外国及び国際法廷並びにその当事者のための援助)に基づき、連邦地方裁判所によって発せられる米国外の裁判所の手続で使用する目的のため、文書その他の物を提出する命令の事を指します。

インターネットの誹謗中傷で用いられているプラットフォームの中には、米国企業(google、cloudflare)が運営しているものもあります。その場合米国のディスカバリを用いて日本の裁判手続(誹謗中傷した相手への損害賠償請求等)の為に必要な発信者情報の開示を求めることも選択肢として存在します。日本のプロバイダ責任制限法による手続とは要件や範囲が異なる為、ケースバイケースではありますが米国のディスカバリを用いた方が良いこともあります。

米国ディスカバリによる誹謗中傷者特定について、井上拓弁護士の運営するyoutubeチャンネルで動画が公開されていますので、興味のある方はそちらを視聴してみて下さい(下にリンクを張っておきます)。

【誹謗1/2】誹謗中傷者特定、米国ディスカバリーの活用、発信者情報開示

【誹謗2/2】誹謗中傷者特定、米国ディスカバリーの活用、発信者情報開示

具体的な事案において、日本のプロバイダ責任制限法による手続が妥当か、米国ディスカバリによる手続が妥当かについては、弁護士による判断が必要になってきますので、弁護士による相談を受けることをお勧め致します。

 

投稿者: 弁護士大窪和久

2020.11.21更新

民事裁判のIT化がようやく日本でも始まりつつありますが、民事裁判のIT化を進める上で出された意見として、本人訴訟の場合どうするのかというものがあります。

この点、2020年11月20日付河北新報の記事では、このように書かれています。

「日本の民事裁判では、弁護士を付けず訴えを起こす「本人訴訟」が認められている。原告がアプリを使う際に手間取った時、誰がどうサポートするのか。代理人は技術的に精通する必要があろう。訴訟当事者が習熟度により不利益を被ることがないよう、弁護士会によるバックアップが欠かせない。」

この記事ではあたかも本人訴訟でも当然に何某かの代理人がつくかのような書きぶりをしておりますが、実際には本人訴訟を行なう場合に裁判所や第三者が代理人を付けてくれることはありません(たまに民事事件で国選弁護人のような制度は無いのかと聞かれることはありますが、そのようなものはありません)。ですので訴訟でのアプリ利用等についても、当事者本人がなさねばならないことになります。

また、記事では弁護士会によるバックアップが期待されています。この点日弁連では、昨年9月12日付で、「民事裁判手続のIT化における本人サポートに関する基本方針」というものを出しています。その中で本人訴訟支援について「裁判を受ける権利を実質的に保障して必要な法律サービスを提供することを可能とするため,IT面についても必要なサポートを提供する」と打ちだしています。もっとも、そればかりではなく、「民事裁判手続のIT化は,新たな司法システムの構築を目指すものであり,それに伴い裁判を受ける権利に支障が生じる場合は,国がその責任において支障を除去することは当然である」として、国に十全なサポート体制の構築や支援を求めてもいるのです。

上記日弁連の基本方針にもあるように、本来的には、本人訴訟については国がバックアップすべき問題です。隣国の韓国では、代理人弁護士においては電子訴訟を推奨する一方、当事者本人の場合は従前通りの紙による裁判の機会を与えており、記録の電子化等については裁判所が行なっています。また他国でも、記録の電子化については国が行なうということをしています。他方、日本の裁判所は、今までの議論の中では本人訴訟の支援について全く行なう姿勢を見せておらず、当事者本人の「自助」任せにするということのようです。マスメディアにおかれては、民事裁判のIT化による当事者の負担について、国あるいは裁判所がサボタージュしてなんら対応しようとしていない点についても着目していただきたいものです。

投稿者: 弁護士大窪和久

2020.11.17更新

グーグルがCOVID-19 予測モデル(日本版)を公開しました。

これがどういうものかというと、グーグルによる説明によれば、

「COVID-19 感染予測 (日本版) は、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の日本全国での感染の広がりに関する予測データを提供しています。このデータは都道府県別に、対象期間である将来 28 日間のあいだに予測される死亡者数、陽性者数、入院・療養等患者数1を表しています。これらの項目に関する重要な指標として累計や日別のデータ、95 %予測区間等も掲載しています。また、全国の予測値は都道府県の予測値を足し合わせることで表示しています。」

というもので、日本全国及び都道府県毎に機械学習で28日間の感染の広がり等を予測させた結果が出てきています。

本日11月17日の時点では、12月12日までの予測数が出ておりますが、全国では12月12日の時点で陽性者数が3000人に迫ることや、北海道で陽性者が全国で一番多くなることなどの予測が出てきております。

グーグルの機械学習の確度がどの程度のものなのかは今後の実際の推移を見ていかないと分からないことではありますが、今後の政策や感染対策がどうなるかの予測に繋がるものとして大変興味深いものであることは間違いありません。

 

投稿者: 弁護士大窪和久

2020.11.10更新

総務省は、現在の発信者情報開示制度の改善に向けて、発信者情報開示の在り方に関する研究会を設置してこれまで9回の会合を行なってきました。11月12日に10回目の会合が行なわれています。

そして、同研究会により最終とりまとめ骨子が出されており、制度変更の方向性が明らかになったと言えます。

最終とりまとめ骨子では、発信者情報の開示対象の拡大(電話番号およびログイン時情報)、新たな裁判手続の創設と通信ログの保全、裁判外開示の促進というものが柱となっています。この中でもっとも影響が大きいのは、新たな裁判手続の創設でしょう。

現状では、発信者を特定するためには、SNS等の運営主体のプロバイダにまず仮処分を行ない、接続元のIPアドレスの開示を受けた後で改めて接続に使われたプロバイダの運営会社に裁判を行なう必要がありますが、二回の手続を要するのが負担が大きいとして、問題になっていました。最終とりまとめ骨子では、従前の手続に「加えて」新しく手続を設けて、この難点を解消しようとしています。また、発信者情報開示の難点として、プロバイダがログを短時間で消してしまうという点がありますが、この点をクリアするためにログを迅速に保全する手続も上記開示の手続とまとめて行なうことができるようにもするようです。

現状の開示手続は被害者側の負担が大きく、負担のために使われないということも多いのですが、上記のような方向性での改善があれば現在より多少は開示手続も使われるのでは無いかと思います。もっとも、研究会での議論では、表現の自由が関わる以上開示の是非については訴訟手続でしっかりと審理する必要があるともされており、その点では弁護士が関与しなければ手続を進めていくのは難しいのは従前と変わりないのではないかと思われます。

 

投稿者: 弁護士大窪和久

2020.10.29更新

cnet Japanで、「マイクロソフト「Teams」のデイリーアクティブユーザーが1億1500万人に」という記事が掲載されました。

同記事によれば、「Microsoft Teams」に関する最新の統計を発表した。最高経営責任者(CEO)のSatya Nadella氏によれば、Teamsの現在のデイリーアクティブユーザーは1億1500万人を超えているという」とのことです。今年3月の時点では4400万人ということだったので、この短期間で3倍近くにまでユーザーが増えたことになります。

コロナ渦で通常の会議からWEB会議に移行したのは日本だけではなく世界的な傾向ですが、このような増え方をみると、改めてコロナ渦が世界に及ぼした影響の大きさという物を感じずにはいられません。

先のブログにもあるとおり日本でも裁判所を含めTeamsがWEB会議用のツールとして広くビジネスで使われるようになりました。ZOOMのような手軽さはありませんが、その分セキュリティ面では優れているツールであり、今後も広く使われていくのではないかと思います。マイクロソフトはTeamsだけではなくOffice365といったサブスクリプションサービスでも売り上げを伸ばしており、コロナ渦は強い追い風になっています。

 

投稿者: 弁護士大窪和久

2020.10.27更新

総理大臣がかわってから後、携帯電話会社が料金の値下げを行なうというニュースが良く出されています。本日も「KDDIが新料金プラン導入へ 20GB月4千円以下に」という内容が報道されています。

ただこの報道をよく読むと、サブブランドUQモバイルでこれまで出していない20Gのプランを出すという内容であり、通信量あたりの料金を下げるという話ではないようです。

これまでも総務省が携帯電話の値下げ圧力を携帯電話会社にかけていますが、そのたび携帯電話会社はプランや割引制度を変更するものの、通信量あたりの料金を下げるということはしてこなかったように思われます。キャリアは三社独占で競争の働くところではないので、今後もこうした状況は変わることはなく、携帯電話料金の値下げは期待できないと考えます。

携帯電話料金は高止まりしているだけではなく、複雑なプランや割引制度が乱立して、割引前の値段がわかりにくく、結果消費者が不意打ち的な損害を受けると言うこともあります。この問題も長年に渡り指摘されていますが全く改善していません。こうした状況も、キャリアが三社独占で似たようなサービスを提供し続ける中では変わらないのではないかと思います。

投稿者: 弁護士大窪和久

2020.09.29更新

本日、第二東京弁護士会のオンライン研修「テレワーク時代の わかる!できる!楽しい!? 弁護士情報セキュリティガイドライン簡単解説」を受講しました。動画については暫くリンク先で公開されているとのことです。

内容中深く同意したのは、弁護団でメーリングリストを使うのをやめようという提言でした。

メーリングリストには、後から入ってきた人が状況を理解できない、メッセージの先後関係が分かりにくいという欠点があるばかりではなく、暗号化されておらずセキュリティの面でも不安がある等の欠点があるというのがその理由です。また、現在ではChatwork等のチャットツールの方が明らかに優位性があり、そうである以上メーリングリストを使い続ける理由もありません。

各弁護団で長年に渡りメーリングリストが使われてきましたが、かつてメーリングリストの内容が第三者にも公開される設定になっており問題になったケースもあります。ファイル管理の面でもメーリングリストは不適(クラウドストレージを使った方が遙かに便利)ですので、自分が関わる弁護団だけでもメーリングリストの使用は今後やめていきたいと思います。

 

投稿者: 弁護士大窪和久

2020.09.13更新

弁護士ドットコムにて、「「業務用スープを使用している」などと指摘する投稿をフェイスブックなどで繰り返され、社会的評価を低下させられたとして、2019年7月24日、110万円の損害賠償を求める裁判」の内容に関する記事が掲載されていました。

名誉毀損訴訟における争点、立証のポイント等がよくわかる記事で、訴訟がどのように進みどのような結末を迎えるかイメージするにはとても良いと思います。

ただこの原告となった経営者の方は、判決内容について相手方が投稿をやめなかったことから、「裁判の請求に、投稿の削除と、謝罪と訂正の掲載を盛り込んでおくべきでした」とおっしゃっています。確かに再度の投稿をいかに防止させるかということはこの手の事件ではよく問題になりますので、損害賠償だけで請求として足りるかどうかは名誉毀損訴訟では気をつけておくべき点といえるでしょう。

 

投稿者: 弁護士大窪和久

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弁護士大窪のコラム 桜丘法律事務所

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