弁護士大窪のコラム

2022.08.06更新

個人情報保護委員会が、7月20日付で破産者の個人情報をインターネット上で掲載しているWEBサイト運営者に対して、情報開示を停止するよう勧告を行っています。

破産者の個人情報については、官報に掲載されています。この情報をインターネット上で掲載するWEBサイトは過去にもありました。それらは既に削除されていますが、再び破産者の個人情報を掲載するWEBサイトが現れたので、それに対する勧告ということになります。

個人情報保護委員会は、個人情報の掲載がなされていることによって違法行為を助長誘発する可能性がある(法19条違反)、利用目的の本人の通知がなされていない(法21条1項違反)、本人の同意なく不特定多数人にデータが閲覧可能な状態にある(法27条1項違反)を理由として、法145条1項に基づき勧告を行っています。

もっとも、WEBサイトは海外のサーバー上にデータが存在し、運営者に関する連絡手段も存在しないことから個人情報保護委員会は公示送達により勧告を行っているに留まっています。

しかしながら、今日(2022年8月6日現在)も、問題となっているWEBサイトでは引き続き破産者の個人情報(住所氏名)をインターネット上での公開を続けており、ビットコインの支払を行わなければ情報削除には応じないとしています。今のところ、個人情報保護委員会の勧告に従う様子はありません。

このようなサイトが現れる背景には、破産者の個人情報が官報に掲載されているという点があり、弁護士会の消費者保護委員会等でもこの点が問題にされています。もっとも債権者側からすれば破産者の個人情報を知る必要性も存在しており、破産者の個人情報の公開をどうするかについては議論の余地があるところです。

現時点では、破産者の個人情報をインターネット上で公開されてしまうリスクがあることを前提として、破産手続を行うか否かについて検討を行う必要があると言えそうです。

投稿者: 弁護士大窪和久

2022.06.24更新

インターネット上において、犯罪歴が投稿されてしまい、生活に支障が出るので削除できないかという相談をよく受けます。

しかし、インターネット上の犯罪歴の削除請求については容易ではありません。2017年1月31日に最高裁がグーグル上の検索結果(犯罪歴が示されている)の削除について「当該事実を公表されない法的利益と当該URL等情報を検索結果として提供する理由に関する諸事情を比較衡量して判断すべきもので,その結果,当該事実を公表されない法的利益が優越することが明らかな場合には,検索事業者に対し,当該URL等情報を検索結果から削除することを求めることができるものと解するのが相当である」との判断を行っています。その後の下級審では、インターネット上の犯罪歴の削除請求においては同最高裁判例の考え方に従い、犯罪歴は公共の利害に関する事項であって本件事実を公表されない法的利益が優越することが「明らか」であるとはいえないとして請求を認めない判断をすることが多くなりました。

ただ、上記最高裁の判断は検索事業者の事業の性格(インターネット上の情報流通の基盤)に着目したものであって、検索事業者以外について同様の判断をすべきか否かという点は別途考慮されるべきところです。

この点、2022年6月24日に最高裁はツイッター上での犯罪歴の削除請求について新たな判断を行いました。最高裁は、犯罪事実の削除の可否については、「上告人の本件事実を公表されない法的利益と本件各ツイートを一般の閲覧に供し続ける理由に関する諸事情を比較衡量して判断すべきものであって、その結果、本件事実を公表されない法的利益が本件各ツイートを一般の閲覧に供し続ける理由に優越する場合には、本件各ツイートの削除を求めることができるものと解するのが相当である」と判断しました。原審はツイートの削除については「犯罪事実を公表されない法的利益が優越することが明らかな場合」に限られるという前記2017年1月31日の規範をつかって判断していますが、最高裁は「ツイッターの利用者に提供しているサービスの内容やツイッターの利用の実態等を考慮しても、 そのように解することはできない」とこれを否定しています。

したがって、インターネット上での犯罪歴の削除請求(検索結果を除く)については、犯罪事実を公表されない法的利益が優越することが「明らか」な場合に限らず、優越すると認められる場合にも認められることが最高裁の判断により明確になりました。今後の裁判所の判断にも大きく影響するものですので、ここで紹介させて頂きました。

なお、2022年6月24日最高裁判決の補足意見(草野耕一裁判官)は、犯罪の実名報道について具体的な効用があるのかという点について検討を行っており、その内容が大変説得的であると考えました。該当部分は次の通りです。

「実名報道がもたらす第一の効用は、実名報道の制裁としての働きの中に求めることができる。実名報道に、一般予防、特別予防及び応報感情の充足という制裁に固有の効用があることは否定し難い事実であろう(この効用をもたらす実名報道の機能を、以下、「実名報道の制裁的機能」という。)。しかしながら、犯罪に対する制裁は国家が独占的に行うというのが我が国憲法秩序の下での基本原則であるから、実名報道の制裁的機能が生み出す効用を是認するとしても、その行使はあくまで司法権の発動によってなされる法律上の制裁に対して付加的な限度においてのみ許容されるべきものであろう。したがって、本事件のように、刑の執行が完了し、刑の言渡しの効力もなくなっている状況下において、実名報道の制裁的機能が もたらす効用をプライバシー侵害の可否をはかるうえでの比較衡量の対象となる社 会的利益として評価する余地は全くないか、あるとしても僅少である。」

「実名報道がもたらす第二の効用は、犯罪者の実名を公表することによって、 当該犯罪者が他者に対して更なる害悪を及ぼす可能性を減少させ得る点に求めることができる(この効用をもたらす実名報道の機能を、以下、「実名報道の社会防衛機能」という。)。しかしながら、この効用は個人のプライバシーに属する事実を みだりに公表されない利益が法的保護の対象となるとする価値判断と原則的に相容れない側面を有している。なぜならば、人が社会の中で有効に自己実現を図っていくためには自己に関する情報の対外的流出をコントロールし得ることが不可欠であり、この点こそがプライバシーが保護されるべき利益であることの中核的理由の一つと考えられるからである。したがって、実名報道の社会防衛機能がもたらす効用をプライバシー侵害の可否をはかるうえでの比較衡量の対象となる社会的利益として評価し得ることがあるとしても、それは、再犯可能性を危惧すべき具体的理由がある場合や凶悪事件によって被害を受けた者(又はその遺族)のトラウマが未だ癒されていない場合、あるいは、犯罪者が公職に就く現実的可能性がある場合など、 しかるべき事情が認められる場合に限られると解するのが相当であるところ、本事件にはそのような事情は見出し難い。」

「第三に、実名報道がなされることにより犯罪者やその家族が受けるであろう 精神的ないしは経済的苦しみを想像することに快楽を見出す人の存在を指摘せねば ならない。人間には他人の不幸に嗜虐的快楽を覚える心性があることは不幸な事実 であり(わが国には、古来「隣りの不幸は蜜の味」と嘯くことを許容するサブカルチャーが存在していると説く社会科学者もいる。)、実名報道がインターネット上で拡散しやすいとすれば、その背景にはこのような人間の心性が少なからぬ役割を果たしているように思われる(この心性ないしはそれがもたらす快楽のことを社会科学の用語を使って、以下、「負の外的選好」といい、負の外的選好をもたらす実名報道の機能を、以下、「実名報道の外的選好機能」という。)。しかしながら、 負の外的選好が、豊かで公正で寛容な社会の形成を妨げるものであることは明白であり、そうである以上、実名報道がもたらす負の外的選好をもってプライバシー侵 害の可否をはかるうえでの比較衡量の対象となる社会的利益と考えることはできない(なお、実名報道の外的選好機能は国民の応報感情を充足させる限度において一定の社会的意義を有しているといえなくもないが、この点については、実名報道の制裁機能の項において既に斟酌されている。)。」

現在のインターネットでは、草野裁判官のいうところの「実名報道の外的選好機能」により、実名報道の内容が広く拡散してしまい、拡散した報道内容を削除することも難しい状態になっています。今回の最高裁判決をうけて、このような状態が少しでも改善されることを期待します。

投稿者: 弁護士大窪和久

2022.06.14更新

本年6月13日に、刑法等の一部を改正する法律が参議院で可決成立しました。

今回の刑法改正の内容の一つとして、侮辱罪の厳罰化があります。現行法では刑法231条において、「事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する」と定められておりますが、改正法ではこれに加え、1年以下の拘禁刑(現行法上の懲役・禁固)、30万円以下の罰金についても課することができるようになりました。この改正の理由としては、「近年における公然と人を侮辱する犯罪の実情等に鑑み、侮辱罪の法定刑を引き上げる必要がある」とのことです。

確かに、私が受ける法律相談の中でも、近年はインターネット上の誹謗中傷が非常に多くなっており、立法事実はあると考えます。また、侮辱罪の場合、法定刑が低いこともあってか、立件できるだけの証拠を被害者側が全て揃えた場合であっても、検察官が不起訴処分にしてしまうなどのケースも見受けられました。

今回の法定刑の引き上げにより、従来より捜査機関が侮辱行為について積極的に捜査立件することになるのではないかと思われます。もっとも、特にSNSの匿名の投稿の場合、捜査機関が捜査に乗り出す前にプロバイダの有する発信ログが消去されてしまい、投稿者の特定に至らず立件もできないといったケースも珍しくはありませんので、まずは弁護士に相談されることをお勧め致します。

 

投稿者: 弁護士大窪和久

2022.05.26更新

日本経済新聞の記事によれば、総務省が今年の夏に改正予定の郵便事業の個人情報保護の指針解説において、弁護士会照会(弁護士会が弁護士会を通じて照会を行ない情報開示を求める制度)による転居者情報の開示を認めるようにするとのことです。

日本郵便は、これまで郵便局に提出された転居届の情報について、弁護士会照会による開示に一切応じてきませんでした。この点、弁護士会照会による報告義務があることについては裁判において認められてきたものの、義務を怠ったことによるペナルティがない(弁護士会が損害賠償を求めた裁判において、最高裁が損害賠償義務を否定する判断をしたため)こともあり、転居先情報が開示されない状態が今も続いています。日弁連も日本郵便に弁護士会照会に対する回答を行なうよう会長談話をだしていますが全く聞き入れられませんでした。

これまで、転居先が分からないことにより裁判等を断念せざるを得ないケースが数多くありましたが、運用が変われば救われる人も出てくることになるでしょう。

 

投稿者: 弁護士大窪和久

2022.04.28更新

2022年度より運用が開始された民事裁判書類電子提出システム(mints)ですが、運用開始される裁判所について裁判所のサイトにて情報が公開されています。

2022年4月21日から、甲府地方裁判所(本庁)及び大津地方裁判所(本庁)にて運用が開始されています。

また、2022年夏から秋頃に、知的財産高等裁判所、東京地方裁判所民事第5部、民事第8部、民事第29部、民事第34部、民事第40部、民事第46部及び民事第47部並びに大阪地方裁判所第21民事部及び第26民事部にて運用が開始されるとのことです。

民事裁判書類電子提出システムについては、現在行なわれているteamsによるWEB会議同様、当事者双方に訴訟代理人がありかつ両代理人が希望する場合のみの運用となりますが、代理人にとって利用しない理由も特段ありませんので、広く使われることになると思います。はやく全ての裁判所にて運用が開始されることを願います。

投稿者: 弁護士大窪和久

2022.04.07更新

2022年度が始まり一週間経過しました。

新年度の目標として、整理整頓をきちんと行なうことを心がけています。

訴訟事件の関係でも、今年度からmints(訴訟書類の電子提出システム)の運用が開始され、印刷した紙が業務に必要なくなることが現実化しつつあります。業務に限らず日常生活からもなるべく紙を一掃して、すっきりとした環境で過ごしていけるようにしたいと考えております。

投稿者: 弁護士大窪和久

2022.03.29更新

民法改正により、2022年4月1日より成年年齢が20歳から18歳に引き下げられます。
この改正により、2022年4月1日の時点で18歳、19歳の人は同日の時点で成人年齢に達するということになります。
民法上の成年年齢の引き下げに伴い、18歳で親の同意がなくとも様々な契約をすることができるようになります。未成年者の場合、契約は親の同意が必須であり、同意なき契約については未成年者取消権により契約の取消しが可能です。これまで20歳まで認められていた未成年者取消権の範囲が縮小しますので、消費者被害が拡大するのではないかとの懸念もあげられています。
また、女性が結婚できる最低年齢は16歳から18歳に引き上げられ、結婚できるのは男女ともに18歳以上となります。
子どもに対する親権が及ぶのが未成年の間である関係上、養育費に関する判断にも影響が及ぶことが想定されます。もっとも、これまでも養育費の審判に関しては成人年齢以後も認めるケースがある(大学進学を想定していたと認められる場合等)ので、今後も18歳に達した後も養育費の支払を認める判断がなされることはあるでしょう。

一方、民法改正後も、飲酒や喫煙、競馬などの公営競技に関する年齢制限は、パターナリズムの観点よりこれまでと変わらず20歳とされています。

また、民法改正にあわせ、少年法改正により、18歳、19歳の者に対する少年法の適用も変更される点があります。
18歳、19歳の者についても、「特定少年」として引き続き少年法が適用される点には違いはありません。
ただし、原則として逆送決定(検察官の判断で成人と同様の刑事裁判にかけられる)される対象事件が拡大されました。これまでは16歳以上の少年の時犯した故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件について原則逆送の対象となっていましたが、これに加えて、18歳以上の少年のとき犯した死刑、無期又は短期(法定刑の下限)1年以上の懲役・禁固に当たる罪の事件(現住建造物等放火罪、強制性交等罪、強盗罪、組織的詐欺罪など)が追加されました。
さらに、特定少年が逆送後起訴された場合は、原則として20歳以上と同様に取り扱いがなされることになります。
また、少年法で原則禁止されている実名報道についても、特定少年が逆送されて起訴された場合(略式手続の場合を除く)は、その段階から解禁されることとなりました。

成年年齢の引き下げは民法制定以来のドラスティックな改正であり、今後様々な分野で影響が及ぶことになります。内容については確認しておくことをお勧め致します。

投稿者: 弁護士大窪和久

2022.03.26更新

本年3月23日に、個人情報保護委員会が破産者等の情報を公開するサイトに対して停止命令を行っています。
サイト上にプレスリリースが公開されています(こちら)。

プレスリリースによれば、サイト上で破産者等の情報をデータベース化した上、本人の同意なく第三者に個人情報を提供していることが個人情報保護法23条1項違反にあたるとして、今年2月18日付でサイトを停止するよう事業者に勧告したが、これに事業者が従わなかったということです。

そこで、法42条2項(個人情報保護委員会は、前項の規定による勧告を受けた個人情報取扱事業者等が正当な理由がなくてその勧告に係る措置をとらなかった場合において個人の重大な権利利益の侵害が切迫していると認めるときは、当該個人情報取扱事業者等に対し、その勧告に係る措置をとるべきことを命ずることができる)に基づきサイトの停止等を命令するに至りました。

サイト運営事業者がこの命令に従わなかった場合、法83条(第42条第2項又は第3項の規定による命令に違反した場合には、当該違反行為をした者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する)の罰則の適用も求めて刑事告発することを検討してもいるそうです。

従前破産者マップで破産者情報が公開され問題になったことがありますが、今回個人情報保護委員会が問題にしているサイトのように、破産者情報がインターネット上で公開される問題は継続しています。サイトの事業者が匿名で行って身元を隠しているようなこともあり、解決については容易ではありません。

サイト運営者は官報で公開されている情報であり問題ないとの認識のようですが、官報とインターネット上で誰でも見られる状態で情報拡散することは影響力に格段の差があり、それを理由として破産をすることを躊躇するという方も出てくると思います。停止命令には速やかに従っていただくことを願います。

 

投稿者: 弁護士大窪和久

2022.02.22更新

民事裁判手続のIT化の一環として、民事裁判書類電子提出システム(mints/ミンツ)の運用が始まりました。

mintsは、従来ファクシミリで提出することが可能であった訴訟書面に関して、ファクシミリにかわりPDF等の電子ファイルでアップロードすることで提出することを可能とするものです。またシステムを通してアップロードされたファイルの閲覧・ダウンロード・印刷も可能です。

mintsの運用例については、裁判所のyoutubeチャンネルでも動画として公開されています。

mintsはまず甲府、大津地裁で試行期間に入り、4月以降には全国の裁判所で運用を拡大するとのことです。

このシステムについて先日弁護士会で説明会が行われましたが、システムとしてはWEBブラウザを経由したシンプルなもので、使い勝手は悪くないと思いました。また提出にあたり押印がいらない、土日も使えるなど利便性についてもある程度考慮されているようです。

今後は訴訟書類については弁護士側も紙ではなく電子管理が求められることになります。私も裁判所の運用の変化にあわせて書類は電子管理していく予定です。

 

投稿者: 弁護士大窪和久

2022.02.01更新

弁護革命について、サービスがはじまってから程なくして使い始めたことは過去に本ブログでも書かせて頂きましたが、この度弁護革命の活用例にて紹介頂きました。

かねてより弁護士業務から紙をいかにして排するかというのを業務の課題にしておりましたが、弁護革命とクラウドサービスを組み合わせることにより、上記課題はかなり解決に近づいたと考えております。特にこのコロナ渦においてはその重要性が増しております。

ようやく裁判所もIT化に向けて法整備がなされる段階まで達してきましたので、弁護士側の業務も更にIT化させてサービスの向上を目指していきたいものです。

 

投稿者: 弁護士大窪和久

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