弁護士大窪のコラム

2021.04.22更新

以前も当ブログでとりあげていた、プロバイダ責任制限法の改正案が昨日21日の参議院本会議で可決されました。改正法は2022年末までに施行される予定です。

本法律改正では、こちらの記事でも取り上げられている新しい裁判手続(これまで二度の手続を要していた発信者情報開示が一回の手続で完結するようになる)が目玉となっていますが、それ以外にもログイン情報の開示を明文で認めたり、裁判外での開示促進に関する条文を入れるなど、従前の制度より改善されている点がいくつかあります。

もっとも、改正法でも開示の要件緩和しませんでしたので、法改正がなされたとしても権利侵害の明白性についてプロバイダ側が厳しく争ってくることには違いはありませんし、新しい裁判手続についてはプロバイダ側が異議を出して正式な裁判に持ち込むことも可能ですので、どこまで開示者にとって利便性が高まるかについては運用が始まってみないと分からない点が多いです。また、本改正案の付帯決議で定められた事業者向けガイドラインの作成で、どのような内容が定められるのかも注目していきたい所です。新しい情報が入ってきましたらまた当ブログで取り上げてみたいと思います。

 

 

投稿者: 弁護士大窪和久

2021.04.21更新

4月20日(日本時間21日)にApple新製品の発表会がありました。夜も遅いためリアルタイムでは見ることが出来ませんでしたが、後追いで内容の方を確認しました。

内容の中では、やはりM1チップ搭載の新しいiPad ProとiMacが発売されることが大きいでしょう。この点、私は先月にM1チップ搭載のmac miniを購入し使っておりますが、性能自体は全く問題が無いです。もっとも初物故の安定しない点があることは否めず、今回購入は見送ろうと考えています。ただ特にiMacのカラーバリエーションはアップルらしさがあり、大変魅力的ではあります。

発表の中で出てきた物で私が購入を検討しているのは、忘れ物を発見するタグ(AirTag)の方です。忘れ物タグは既に「tile」を長年利用してきていますが、「tile」がBluetooth接続で近づいたら音を出すことができるだけなのに対して、AirTagはU1チップを搭載しているiPhoneで正確な場所を見つける機能を使うことができるとのことです。その機能を使えば正確にAirTagまでの距離や方向が示されるということなので、かなり実用的な製品になっているのではないかと思います。

 

 

投稿者: 弁護士大窪和久

2021.04.20更新

グーグルマップの口コミの投稿において名誉毀損がなされることは良くありますが、その場合でも、投稿者の発信者情報開示についてグーグル社が任意で応じることはなく、裁判手続でも積極的に争ってくるのが通常です。

発信者情報開示の訴訟について、ハードルになっているのは「侵害情報の流通によって当該開示の請求をする者の権利が侵害されたことが明らかであるとき」(権利侵害の明白性)という要件です。この要件は、投稿によって請求者の名誉毀損がなされたことだけではなく、「違法性阻却事由の存在をうかがわせるような事情の存在しない」ことまで必要とされており、開示を求める側がそれを立証しなければなりません。この立証が出来ないことを理由として発信者情報開示を断念するというケースは多々あります。

ただ、この権利侵害の明白性について、開示請求側に不可能なことまで証明を求めるようなことになっては制度趣旨を没却することになるとして、一審の原判決内容を覆した東京高裁の判例が出ましたので、本ブログでも簡単に取り上げたいと思います。

事案としては、グーグルマップの口コミで、”営業の電話がしつこいです。特定商取引法の17条で勧誘を断った消費者への再勧誘は禁止されているのに何度も掛かってきます”などといった投稿をなされた会社が、グーグル社に対して発信者情報開示を求めたものです。投稿をなされた会社は、顧客と電話禁止対象者を一元管理しており、勧誘を断った人については電話禁止対象者に加える仕組みをとっているので、勧誘を断った消費者への再勧誘はありえないと主張しました。

この点について、東京地裁の原判決(令和元年(ワ)14308号)は、「原告が主張する仕組みがとられていたとしても,テレフォンアポインターから本社管理部門に正しく電話禁止対象者の報告がされていなかったり,記載漏れ等により契約者リストに電話禁止対象者が正しく記載されていなかったり,テレフォンアポインターが誤って自ら担当する電話帳から電話禁止対象者を正しく消していなかったりすることにより,本来電話勧誘を行うべきでない者に電話勧誘がおこなわれてしまうおそれがあることは否定し難い」として、人為ミスによる再勧誘の抽象的な可能性があることを理由として、権利侵害の明白性要件を否定し、開示を認めませんでした。ただ、人為ミスが全くないことまで立証することは困難を極めるものであり、この判決のロジックですと発信者情報の開示が認められることはほぼ無いと思われます。

これに対して、東京高裁の控訴審判決(令和2年(ネ)1959号)は、人為ミスによる再勧誘の可能性があること自体は認めましたが、「被害者である控訴人におよそ再度の電話勧誘をすることはなかったという不可能に近い立証まで強いることは相当でない。その意味で、プロバイダ法4条1項で定める「権利侵害が明らか」という要件について、権利侵害された被害者が発信者に対して損害賠償請求をする訴訟における違法性阻却事由の判断と完全に重なるものではないと解され、再勧誘の可能性が全くないことまで請求原因として立証することを要しないというべきである」として、原判決の判断を覆して権利侵害の明白性要件を肯定しました。

本事案については上告されており、最終的な判断はまだなされていないようですが、グーグルマップの口コミに関して発信者情報開示を事実上封じかねない一審の判決はバランスを欠くと思われますので、本高裁控訴審判決の様な判断が定着することを期待致します。

投稿者: 弁護士大窪和久

2021.04.14更新

前回から半年ぶりに、Appleの新製品発表会が開催されます。

CNNによれば、「ニューヨーク(CNN Business) 米アップルは13日、カリフォルニア州クパティーノの本社で20日に開かれるオンラインイベント「Spring Loaded」の招待状を報道機関に送付した。今回はタブレット端末「iPad」シリーズの新製品が発表される見通し」とのこと。

今年に入ってから、M1のmac miniを購入しましたが、コストパフォーマンスには優れている一方、まだ新しいチップ故に対応していないアプリが多く、まだまだ使いづらいとの印象をもちました。iPadがどの程度更新されるのかはわかりませんが、リークによると大幅な変化はなさそうです。

できればこれまでとはカテゴリーの違う製品がサプライズで発表されることを期待しつつ4月20日を待つことにします。

投稿者: 弁護士大窪和久

2021.04.06更新

ITMEDIAで「プロジェクト管理ツール「Trello」で運転免許証など個人情報流出 閲覧範囲の設定ミスが原因か」との記事が掲載されています。記事によれば、「プロジェクト管理ツール「Trello」経由で個人情報が流出している――4月5日深夜から6日の朝にかけて、こうした投稿がネット上で注目を集めている。閲覧設定を「公開」としていたことが原因とみられる」とのことです。

Trelloについては私もタスク管理で利用することもあります。このツールは特に複数人でチームを組んで仕事をする場合に、チームで行なうことをタスク管理するのに向いているツールです。閲覧設定は非公開がデフォルトではありますが、チームメンバーにのみ公開したり、全ての人への公開をおこなう設定を行なうこともできます。知らずに閲覧設定を全公開にした場合、情報が流出してしまうことになってしまい、特に業務で使うような場合には重大な事態を引き起こしかねません。

Trelloの運営者からは、ブログで「Trelloの初期設定ではボードは非公開になっており、ユーザーの任意で公開範囲を選択することが可能です。詳細は、こちらの記事にて確認いただけます。また、Trelloにはユーザーの意図しない公開ボードの作成を回避するため、ユーザーがボードの公開設定をする際、ユーザーの意図を確認する仕組みが搭載されています。現在アトラシアンでは、問題が発生しているボードのプライバシー設定を確認するなど、ユーザーが意図しない情報の漏洩を止めるため、ユーザーのサポートに尽力しております」とのアナウンスがなされています。

非常に便利なツールですが、クラウド上で管理する多くのシステムと同様、情報管理に関する設定についてはしっかりと確認しておくことが非常に重要です。

投稿者: 弁護士大窪和久

2021.04.02更新

本年4月1日付で、「特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律」(取引透明化法)について、同法の規制対象となる事業者を指定されると共に、デジタルプラットフォームを利用する事業者の相談に応じ、解決に向けた支援を行うための相談窓口を設置されました(経産省ニュースリリース)。

取引透明化法は、デジタルプラットフォームにおいて規約の変更や取引拒絶の理由が明らかにされないなど、不透明な実態があることから定められた法律です。今回規制対象とされた事業者は、オンラインモールの関係ではアマゾンジャパン合同会社、楽天グループ株式会社、ヤフー株式会社で、アプリストアの関係では、Apple Inc.及びiTunes株式会社、Google LLCとなっております。

経済産業省は、相談窓口で得られた事業者の声を元に課題を抽出し、取引環境の改善を目指すと言うことですので、積極的に利用されることをお勧め致します(窓口はこちら)。

デジタルプラットフォームを運営する会社に関する相談は、事業者からも消費者からも少なからず受けておりますが、対応がかなり硬直的であり、情報も公開しないという傾向はやはり見られます。本法の運用を通じて少しでも対応が改善されれば良いと思います。

 

投稿者: 弁護士大窪和久

2021.03.31更新

FNNプライムオンラインで「「一太郎」禁止令? 農水省「ワード原則化」通知」との記事が出されています。記事によれば、中央官庁のワープロソフトは原則として「ワード」が使われているものの、一部「一太郎」が使われている状態にあり、「ソフトの互換性の問題から相次ぐ法案の条文ミスの理由とされたり、民間企業とのやり取りで不便が生じ、政府内で「一太郎」の使用を問題視する声が上がっている」とのことです。そしてそうした意見を受けて、農水省が省内で「ワード使用を原則化」する通知を出したということです。

「一太郎」は日本語ワープロソフトとしては定評があり、それを使うこと自体には問題は無いと思います。ただ組織内で異なるソフトが使われていればファイル形式や編集方法等で違いが出てくることはあり得ることであり、一つのソフトに統一した方が確かに望ましいといえるでしょう。なお、弁護士の間では「一太郎」は根強い人気がありますが、既に裁判所は「ワード」に統一しています。

投稿者: 弁護士大窪和久

2021.03.19更新

 本月17日に、札幌地裁が同性婚の不受理を行なったことについては憲法に違反するという判断を示しました。本判決はBBCニュースでも報じられ、白石早樹子さんの解説において「今回の札幌地裁の判決ははっきりとした分岐点だ。賠償請求は退けられたが、違憲判決という大きな成果を勝ち取った実質勝訴だという声が次々に上がっている」と紹介されています。

 本裁判については、弁護団がCALL4(社会課題の解決を目指す訴訟“の支援に特化したウェブプラットフォーム)上で判決文、判決要旨だけではなく、主張書面や証拠なども公開しているため(公開箇所はこちら)、原告被告がどのような主張を行なっているのか明確になっています。原告準備書面では同性婚に関して緻密な書面が提出されており、弁護団が本判決を勝ち取るのにいかに汗を流してきたかが良くわかるものとなっています。

 判決では、 同性間の婚姻を認める規定を設けていない民法及び戸籍法の婚姻に関する諸規定について、法の下の平等を定める憲法14条1項に反するとの判断をしています。

 具体的には、「同性愛は精神疾患ではなく,自らの意思に基づいて選択、変更できないことは,現在は確立した知見になっている。圧倒的多数派である異性愛者の理解又は許容がなければ,同性愛者のカップルは,重要な法的利益である婚姻によって生じる法的効果を享受する利益の一部であってもこれを受け得ないとするのは,同性愛者の保護が,異性愛者と比してあまりにも欠けるといわざるを得ない」「我が国及び諸外国において,同性愛者と異性愛者との間の区別を解消すべきとする要請が高まっていることは考慮すべき事情である一方,同性婚に対する否定的意見や価値観を有する国民が少なからずいることは,同性愛者に対して,婚姻によって生じる法的効果の一部ですらもこれを享受する法的手段を提供しないことを合理的とみるか否かの検討の場面においては,限定的に斟酌すべきものである」とした上で、同性愛者に対しては,婚姻によって生じる法的効果の一部ですらもこれを享受する法的手段を提供しないとしていることは,立法府の裁量権の範囲を超えたものであるといわざるを得ず,本件区別取扱いは,その限度で合理的根拠を欠く差別取扱いに当たると解さざるを得ない」と判断しているのです。これまで日本の裁判所が同性婚を認めない民法等の規定を違憲であるとした判断はなく、まさに画期的な判断といえるでしょう。

 なお本判決は、同性婚を認めない民法等の規定は憲法24条には違反しないとしています。その理由については、現行民法への改正や憲法が制定された戦後初期の頃においても、同性愛は精神疾患であるとされており、同性婚は許されないものと解されていたこと、憲法 24条が「両性」など男女を想起させる文言を用いていることにも照らせば、同条は異性婚について定めたものであり、同性婚について定めるものではないというものです。ただここで本判決は、民法等で同性婚を認める規定をおくことについて「憲法24条に反する」という判断を行なっているわけではありません。ネット等では本判決が同性婚を憲法24条に違反するものと判示したというような言説がありますが、判決文にあたればそのような読み方は出来ないことは明白です。

 判決中にも言及されているとおり、日本では特に高齢者で同性婚について否定的な意見を持つ人が多く、(私も地方時代、そのような意見を聞くことが少なからずありました)、そのせいもあってか法制度の整備も遅々としているのが現状です。本判決を機に法制度整備をきちんと進める方向へ議論がなされることを期待します。

 

投稿者: 弁護士大窪和久

2021.03.02更新

2021年2月26日に、プロバイダ責任制限法改正案が閣議決定され、国会に提出されました。法案の内容も総務省のホームページで公開されています。

プロバイダ責任制限法の改正については、以前も当ブログでとりあげた通り、発信者情報開示の在り方に関する研究会により検討が行われてきました。研究会の出した最終とりまとめ骨子では、発信者情報の開示対象の拡大(電話番号およびログイン時情報)、新たな裁判手続の創設と通信ログの保全、裁判外開示の促進が主な内容になっており、改正案でもそれに沿った内容の条文改正が予定されています。

また、改正案は、管轄について詳細な規定を定めており、新たな裁判手続(発信者情報開示命令事件)において、相手方が海外法人であったとしても、申立内容が法人の日本における業務に関するものである場合であれば日本の裁判所の管轄が認められることが明文で定められました。また、プロバイダが地方にある場合でも、東京地方裁判所あるいは大阪地方裁判所に管轄を認めており、今後東京地裁及び大阪地裁で本件事件を集中的に取り扱うことを想定していると思われます。

今国会で改正案が成立した場合、2022年までの間に施行されることになります。また、法改正にともない、総務省では相談対応の充実に向けた連携と体制整備の方もおこなうということです。詳細はこちらの「政策パッケージの進捗状況について」に紹介されています。

今回の改正案では、開示までの手続の簡略化を図った一方、権利開示の要件(権利侵害が明らかであるとき)の要件は緩和しませんでしたので、法改正がなされたとしても権利侵害の明白性についてプロバイダ側が厳しく争ってくることには違いはありません。被害者としては十分な主張立証を行う必要があり、開示手続に関して弁護士に依頼する必要性が減じるということもないだろうと思われます。

投稿者: 弁護士大窪和久

2021.02.24更新

以前こちらのブログで紹介した弁護革命で大幅なバージョンアップが行なわれましたので簡単に紹介します。

バージョンアップ後、「PDF書き込み機能」が加わりました(こちらの動画で機能紹介がなされています)。

注釈モードにすると、PDFにマーカーで強調したり、付箋を入れて書き込みを入れたりすることが可能です。注釈モードで書き込み等を入れた場合でも、書き込みを入れていないオリジナルのPDFは保存されており、書き込みを入れたPDFもオリジナルのPDFも両方ダウンロードすることが可能です。PDFに書き込みをすること自体は個別のアプリケーションでも行なうことはできるのですが、ブラウザ上でこのような作業が簡単にできてしまうのはとても便利ですし、データについては複数人で共有することも可能なので弁護団で検討することも可能です。

また、今回のバージョンアップで「証拠番号埋め込み機能」が加わり、これも便利です(こちらの動画で機能紹介がなされています)。

裁判所に書証を紙で提出する場合、印刷した書証に「弁○号証」などの証拠番号を入れる必要がありましたが、印刷したものにいちいち書き込んでいくのは手間です。PDFにアプリケーションで証拠番号を手作業で個別に入れた上印刷するというやり方もありますが、これも手間であることには変わりません。弁護革命ではオリジナルのPDFに証拠番号を埋め込んだものを一括で準備することができてしまうので、証拠番号を入れる手間が一気に無くなりました。

弁護革命は、多数の資料を検討する必要がある弁護団事件で特に威力を発揮しますが、今回のバージョンアップで更に有用性が上がりました。今後弁護団で事件をする際には是非導入していこうと思います。

 

 

投稿者: 弁護士大窪和久

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