弁護士大窪のコラム

2021.08.13更新

私が2005年4月~2008年4月の任期で赴任していた紋別ひまわり基金法律事務所(日弁連が設立した司法過疎対策を目的とした公設事務所)で、今月新所長として宮下尚也弁護士が赴任されました。

これまで紋別ひまわり基金法律事務所は7代にわたり所長が交代しており(日弁連の事務所紹介参照)、今回で8代目となります。一時期ではありますが事務所に携わったものとして、2001年から現在に至るまでの長期間にわたり事務所が続いていることについて感慨深いものがあります。

5代目までの弁護士はいずれも(私を含め)第二東京弁護士会所属の弁護士が赴任していましたが、6代目からは道弁連が設立した都市型公設事務所すずらん基金法律事務所出身の弁護士が赴任しております。紋別ひまわり基金法律事務所が所長を交代しながらも取り組みを継続しているのは、赴任している弁護士があってこそですが、その弁護士を養成した事務所の役割も極めて大きいものがあります。都市型公設事務所については各弁護士会内で存続の要否について議論がなされているところではありますが、司法過疎地へ人を送るという重要な役割を今もなお担っていることを踏まえて議論していただければと思います。

 

 

投稿者: 弁護士大窪和久

2021.05.18更新

2021年5月号の自由と正義(日弁連の会報)で、オホーツク枝幸ひまわり基金法律事務所の出村洋介弁護士によるエッセイが掲載されていました。

オホーツク枝幸ひまわり基金法律事務所については、以前も当ブログで簡単に紹介しましたが、2019年4月に開設された公設事務所(日弁連のひまわり基金の支援により設立された司法過疎対策を目的とした民間の事務所)です。この事務所がある枝幸町は中頓別簡易裁判所管内にありますが、この管内には弁護士が公設開設以前は一人もいませんでした。弁護士に相談しようとする場合、稚内か名寄(以前私が仕事をしていた場所です)まで行く必要がありましたが、いずれも100キロ程の距離があります。また鉄道も廃止されており、特に冬場はかなりアクセスが困難な場所です。このような事情から、地元からも弁護士の赴任が心待ちにされており、日弁連や弁護士会へ法律事務所の開設を求める声が上がっていました。

当初、日弁連は法テラス(日本司法支援センター)の7号事務所の設立を行なうのが適切であるとして、法テラスに対して7号事務所の設立を求めていました。法テラスの業務には、司法過疎地に弁護士事務所を設立して法律事務を行なうことが含まれております。そして長年に渡り民間による法律事務所がなく司法過疎の問題が解決されていない中頓別簡裁管内は、まさに同業務が行なわれる必要が高い場所でした。

しかしながら、法テラスは、同地域で弁護士会が行なっている法律相談の充足率が低いことから、弁護士の必要性がないとして事務所を設立することを拒絶しました。日弁連や弁護士会からは、地元にいない弁護士の法律相談だけでは地元のニーズを捉えることは困難であること、また距離的な事情を鑑みれば弁護士を地元におくことが重要であること等を主張しましたが、法テラスはこれを聞き入れる事は無かったのです。中頓別簡裁管内は、法律上司法過疎対策を行なうことが求められている法テラスからは文字通り「見捨てられた」といっても決して過言ではありません。

一方、日弁連や弁護士会としては、地元からの要望を無視することはできないと考え、日本弁護士連合会が資金を援助して公設事務所を設立し弁護士を赴任させました。国がインフラ整備することを放棄した場所について民間がかわりに整備したわけです。

このような経緯があることから、赴任した出村弁護士も、「開設先の枝幸町の人口が約8000人と、他の公設事務所と比較してやや小規模ということもあり、相談等の需要がどの程度あるかについて心配していただく声も聞いておりました。そのため、正直なところでは、私自身も不安を感じていた面がありました」とエッセイで書かれています。しかし、開設してから2年経過した現在は、「実際に様々な相談や依頼を受けていく中で、当初の私自身の心配は杞憂であり、周辺地域の相談需要は決して少なくないことが分かってきました」ということです。出村弁護士はこの理由について、事務所の広報や地域の方々との人間的なつながりができたことをあげていますが、このような活動は弁護士が常駐していなければできなかったでしょう。

「法テラスが見捨てた地」において、オホーツク枝幸ひまわり基金法律事務所が地元の法的ニーズに応えていることについては、元名寄で働いていた弁護士として嬉しく思います。それと同時に、こうしたニーズを無視して地域を見捨てた法テラスは厳しく批判されてしかるべきだと改めて思いました。

投稿者: 弁護士大窪和久

2020.11.26更新

以前こちらのブログで紹介しました、ひまわり基金20周年記念シンポジウム配信イベントの動画が下記リンク先で配信が開始されました。

https://video.ibm.com/recorded/128653485

 

イベント中、枝幸ひまわり基金法律事務所での活動も動画にされて取り上げられています。枝幸をはじめとする中頓別簡裁管内は、弁護士がいる地域へのアクセスが困難であり、地元からも弁護士の赴任が心待ちにされていました。この点、法テラスは地元の要請にも関わらず、相談数が見込めないとして事務所を設立することを拒絶しました。このため、日本弁護士連合会が資金を援助して公設事務所を設立し弁護士を赴任させています(日弁連の資金は弁護士が自腹を切っているものであり、公助より共助や自助を優先する「日本らしい」経緯を辿っていると思います)。そうして出来た事務所が地元に受け入れられ、弁護士が活躍しているのを見るのは大変感慨深いものがあります。

投稿者: 弁護士大窪和久

2020.10.30更新

以前のブログで紹介しました公設事務所所長弁護士意見交換会を本日実施しました。

第二東京弁護士会(公設事務所運営支援等委員会)では、毎年秋に、二弁出身の公設事務所長・スタッフ弁護士を対象として、意見交換会を開催しています。本年は本来は糸魚川で行なわれる予定でしたが、コロナ渦のためZOOMを利用したオンラインでの実施となりました。来年以降コロナ渦の状況が変わればまた現地での意見交換会になるかも知れませんが、場所を越えてオンラインでの議論が出来るのは弁護士過疎地域の弁護士にとっては大きな利点ではあります。

司会として議事を進行させていただきましたが、事件関係の悩みの他にも、事務所運営関係についての質問も多くありました。コロナ渦の状況故、リモートワークやオンライン相談についてどのように進めて行けば良いかという点も議論になりました。事件関係については守秘義務もありますので当然ここではかけませんが、事務所運営関係について一般的なものについては議論の積み残しの点も含めてこちらのブログで何回かにわけて書いていこうかと考えております。

 

投稿者: 弁護士大窪和久

2020.10.16更新

刑事裁判の場合、弁護人は検察が裁判所に提出予定の証拠について確認する必要があります。ただ、検察が弁護人に証拠のコピーを送ってくれるわけではありません(民事訴訟の場合、相手方に対し証拠の写しを送る必要がありますが、刑事裁判の場合そのようにルール設計がされているわけではありません)。弁護人が検察庁に直接いって証拠を謄写するのが原則となります。

もっとも、東京地検の場合、謄写センターで有料にてコピーをとってもらうことが可能です。また弁護士会の協同組合で謄写を受け付けてくれることもあります。ただ費用としては一枚数十円かかりますし、地方によってはそれ以上の負担が生じることもあります。

そのような費用的な問題で、私がかつて紋別の公設事務所にいた頃は、たまに実費を支払うので謄写をかわりにしてもらいたいという話を遠隔地の弁護士から求められたことはありました。断ると「弁護士会の金で事務所をおいているのにできないのはどういうことか」と憤られる方もいないわけではありませんでした。

記録謄写を公設事務所の弁護士に求めないようにという申し出等を弁護士会の方でしていただいたこともあり、次第にそのようなこともなくなりましたが、遠隔地の記録謄写が刑事弁護を行なう上でネックになっている現実そのものは今も変わっておりません。

この記録謄写に関しては、そもそも電子データによる謄写物の交付がなされれれば上記のような問題は一気に解決してしまうはずです。しかしながら、検察側はそのようなことは一切考えておりません。また東京地検謄写センターもまたそのようなことは行なわない旨明言しています(リンク先の高野先生のブログ参照)。民事裁判についてはIT化が進む中、刑事裁判だけが旧態依然とした紙中心の裁判から変化しようとしません。これは法改正により是正しなければいけない問題だと思います。

投稿者: 弁護士大窪和久

2020.10.15更新

今年は日弁連ひまわり基金20周年ということで各地でイベントが行なわれていますが、日弁連でオンラインシンポジウムが行なわれます。

本シンポジウムでは、私が紋別の公設事務所にいたときも市長であった宮川良一紋別市長、私と同じく56期で東京の事務所で養成を受けてその後活躍した林信行先生と葦名ゆき先生(56期で公設事務所にて仕事をした弁護士は私を含めていろいろな人がいましたが、この二人はその中でもエース級の働きをされたと思います)が参加されます。私が紋別にいた頃は若くがむしゃらに仕事をしていましたが、今はもうそれも歴史の一部になったと思うと感慨深いものがあります。

・日時 

2020年11月24日(火) 13時00分~16時15分

・タイトル

日弁連ひまわり基金20周年記念シンポジウム『ここに弁護士がいてよかった』

・視聴方法

こちらのリンクから(開催後も視聴可能) https://video.ibm.com/channel/nichibenren 

・イベント情報

日弁連のサイト https://www.nichibenren.or.jp/event/year/2020/201124.html

投稿者: 弁護士大窪和久

2020.10.05更新

今年は日弁連のひまわり基金設立から20周年となり、各地でイベントが予定されています。

今週の土曜日には、下記の通り京都弁護士会主催で日弁連ひまわり基金20周年記念シンポジウムがあります。新型コロナウイルスの感染状況を踏まえオンラインのみの開催となりますが、弁護士が少ない地域での弁護士活動について知ることができる良い機会だと思いますのでお時間とご興味のある方は配信をご視聴下さい。私も参加(視聴)予定です。

●開催日時

2020年10月10日(土)午後1時30分~午後5時

●タイトル
「地方で弁護士をしませんか~日弁連ひまわり基金20周年記念シンポジウム~」

●イベント情報(京都弁護士会ホームページ)
https://www.kyotoben.or.jp/event.cfm#10000115

●インターネット配信のURL
https://video.ibm.com/channel/eZCTyQBwhz8

投稿者: 弁護士大窪和久

2020.10.01更新

第二東京弁護士会(公設事務所運営支援等委員会)では、毎年秋に、二弁出身の公設事務所長・スタッフ弁護士を対象として、意見交換会を開催しています。この意見交換会では、毎回各地の弁護士が実務上抱える悩みについて公設事務所運営支援等委員会メンバー(公設事務所・スタッフOBも含む)も交えて意見を交換し、以後の業務に活かしています。

例年ですと、地方でこの意見交換会は開催されますが、今年はコロナウイルスの感染拡大のため、10月30日にZoomを利用したオンライン開催という形をとることとなりました。直接顔を合わせることができないのは大変残念ですが、やむを得ないことと思います。

昨年に引き続き私が司会ということになりましたので、参加予定されている方(今回はオンラインですので参加はし易いと思います)は二弁担当者あるいは私に直接質問事項を出して頂ければ、当日議論を広げていけるよう準備致しますのでよろしくお願い致します。また、参加されない方でも司法過疎地での弁護士業務に関する意見等いただければ、参加者の方にフィードバックしていきたいと思いますのでよろしくお願い致します。

投稿者: 弁護士大窪和久

2020.09.25更新

河北新報にて、特殊詐欺で現金500万円をだまし取られたものの、8年越しで全額の回収に成功したことが記事に掲載されています。

記事によれば、500万円を会社代表者Aに騙された被害者が、お金を騙し取った民法上の不法行為等や会社法違反による損害賠償を求め提訴し、裁判自体はAが出頭せず早期に勝訴が確定しています。

ただし、回収に関しては、会社への動産執行等が功を奏さず一旦断念したとのことです。

このような詐欺案件については、会社等あってもそもそも営業実態がなく、会社に財産がないことは通常です。また詐欺を行なうために作った会社の代表者も、黒幕が便宜的に準備した末端の人間であることが多く(事実関係すらろくに把握していないことがよくあります)、代表者個人から強制執行することもままならないまま、回収を断念するに至ることも珍しいことではありません。

ただ、本件については、被害者の代理人である東弁護士が諦めることなく財産調査を行ない、Aの財産隠し(Aの親名義だった自宅を、Aへの相続を経ずに別の男性B名義に移転させる)を見逃すことなく法的手続を行ないました。その結果Aの親名義だった自宅を競売にかけることにより全額回収に至っています。

本件は被害者及び被害者代理人が、回収を諦めることなく、回収の可能性を探り、粘り強く数年かけて手続をかけた上での回収であり、なかなかできることではありません。ただこのように回収に繋がることもありますので、詐欺に遭われた方は泣き寝入りをせずにまずは弁護士への相談を行なって欲しいと思います。

なお、東弁護士は2007年に気仙沼ひまわり基金法律事務所に赴任したあと、5年の任期を経て定着され以後引き続き気仙沼の地で仕事を続けておられます。弁護士過疎地域において弁護士が長年活動を続けていなければ、このような被害者を救うことはできなかったでしょう。あらためて弁護士が真摯に弁護士過疎地域で活動し続けることの重要性を実感させられました。

 

投稿者: 弁護士大窪和久

2019.02.07更新

2019年2月7日付朝日新聞朝刊「ニッポンの宿題 弁護士、半分が東京に」にて、私が弁護士偏在問題についてインタビューを受けた記事が掲載されております。

このインタビュー記事がネットの方にも掲載されています(有料記事)

これまでの経験を踏まえて話をさせていただきましたので、ご一読頂ければ幸いです。また、飯先生のインタビューもこれまでの司法過疎対策の歴史を踏まえたものですので、あわせて読んでいただければと思います。

 

投稿者: 弁護士大窪和久

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