弁護士大窪のコラム

2021.05.18更新

2021年5月号の自由と正義(日弁連の会報)で、オホーツク枝幸ひまわり基金法律事務所の出村洋介弁護士によるエッセイが掲載されていました。

オホーツク枝幸ひまわり基金法律事務所については、以前も当ブログで簡単に紹介しましたが、2019年4月に開設された公設事務所(日弁連のひまわり基金の支援により設立された司法過疎対策を目的とした民間の事務所)です。この事務所がある枝幸町は中頓別簡易裁判所管内にありますが、この管内には弁護士が公設開設以前は一人もいませんでした。弁護士に相談しようとする場合、稚内か名寄(以前私が仕事をしていた場所です)まで行く必要がありましたが、いずれも100キロ程の距離があります。また鉄道も廃止されており、特に冬場はかなりアクセスが困難な場所です。このような事情から、地元からも弁護士の赴任が心待ちにされており、日弁連や弁護士会へ法律事務所の開設を求める声が上がっていました。

当初、日弁連は法テラス(日本司法支援センター)の7号事務所の設立を行なうのが適切であるとして、法テラスに対して7号事務所の設立を求めていました。法テラスの業務には、司法過疎地に弁護士事務所を設立して法律事務を行なうことが含まれております。そして長年に渡り民間による法律事務所がなく司法過疎の問題が解決されていない中頓別簡裁管内は、まさに同業務が行なわれる必要が高い場所でした。

しかしながら、法テラスは、同地域で弁護士会が行なっている法律相談の充足率が低いことから、弁護士の必要性がないとして事務所を設立することを拒絶しました。日弁連や弁護士会からは、地元にいない弁護士の法律相談だけでは地元のニーズを捉えることは困難であること、また距離的な事情を鑑みれば弁護士を地元におくことが重要であること等を主張しましたが、法テラスはこれを聞き入れる事は無かったのです。中頓別簡裁管内は、法律上司法過疎対策を行なうことが求められている法テラスからは文字通り「見捨てられた」といっても決して過言ではありません。

一方、日弁連や弁護士会としては、地元からの要望を無視することはできないと考え、日本弁護士連合会が資金を援助して公設事務所を設立し弁護士を赴任させました。国がインフラ整備することを放棄した場所について民間がかわりに整備したわけです。

このような経緯があることから、赴任した出村弁護士も、「開設先の枝幸町の人口が約8000人と、他の公設事務所と比較してやや小規模ということもあり、相談等の需要がどの程度あるかについて心配していただく声も聞いておりました。そのため、正直なところでは、私自身も不安を感じていた面がありました」とエッセイで書かれています。しかし、開設してから2年経過した現在は、「実際に様々な相談や依頼を受けていく中で、当初の私自身の心配は杞憂であり、周辺地域の相談需要は決して少なくないことが分かってきました」ということです。出村弁護士はこの理由について、事務所の広報や地域の方々との人間的なつながりができたことをあげていますが、このような活動は弁護士が常駐していなければできなかったでしょう。

「法テラスが見捨てた地」において、オホーツク枝幸ひまわり基金法律事務所が地元の法的ニーズに応えていることについては、元名寄で働いていた弁護士として嬉しく思います。それと同時に、こうしたニーズを無視して地域を見捨てた法テラスは厳しく批判されてしかるべきだと改めて思いました。

投稿者: 弁護士大窪和久

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