弁護士大窪のコラム

2023.06.19更新

詐欺被害の際、加害者との連絡手段にLINEを使っていたため、LINEしか連絡手段がわからないと言うことは良くあります。例えば電話で連絡していた場合には、電話番号について電話会社に弁護士会照会を行なって加害者を特定させることは可能です。ただ、LINEについては、弁護士会照会に基本的に応じないため、加害者を特定できないままになるという問題がありました。このため、各弁護士会や日弁連等が運用を改善するよう意見書を出していたことは本ブログでも取り上げました。

この点、先月(2023年5月)からLINE が、弁護士会照会に対して開示に応じるべく、内部基準を緩和したとのことであるから、今後の対応においては、弁護士会照会の活用も検討するようにする旨弁護士会からアナウンスがありました。

今後については、詐欺被害等の際、LINEしか連絡手段がない場合でも、弁護士会照会によって相手方を特定することができるようになるかもしれません。実際の運用がわかりましたら、おってこちらでも取り上げたいと思います。

投稿者: 弁護士大窪和久

2023.04.16更新

NHKの記事(ChatGPT 就活も法律相談も 広がる活用 どう向き合う?)で、法律相談サイトがChatGPTを活用して24時間相談対応を目指すという取り組みが紹介されていますが、問題点として弁護士法における「非弁行為」が懸念されています。非弁行為とは、資格を持たない者が弁護士業務を行うことであり、これが禁止されています。

ChatGPTを活用して法律相談に対応する場合、AIが法律的な助言を提供することになりますが、AIは弁護士の資格を持っていないため、非弁行為に該当する可能性があります。運営会社はこの問題を認識しており、法律に抵触しないか確認した上で取り組みを始めたいとしています。

ただ、法律相談の場合、具体的な争訟に対する判断が不可欠であることから、非弁行為として禁止されている「鑑定」に該当するものと思われ、現行法のもとではAIによる法律相談は非弁行為に該当するのではないかというのが私見です。また、この問題点は弁護士がAIを使って法律相談を行う場合にも該当するのではないかと思われます。

今のChatGPTは、専門領域に関する相談については専門家に判断して貰うよう答えるようになっていますし、専門領域の回答のレベルも高くはありません。ただいずれ技術や学習の向上により、ChatGPT自体の回答のレベルは上がるだろうと思います。その際に弁護士法との抵触が問題になるかも知れません。

 

投稿者: 弁護士大窪和久

2023.03.23更新

ITmediaの記事によれば、大規模言語モデル「GPT−4」において、米国の司法試験の模擬問題を解かせたところ、受験者上位10%の順位で合格するようになったということです。

この点、フリーで使えるchatgptで私もいろいろ試してみましたが、現時点でも一応の内容が記載されている程度の訴状の起案は行うことはできるようです。AIの進化が今年に入ってから著しく、年内に専門家レベルの主張書面作成のできるAIが出現してもおかしくは無いと思っています。そこまでいかなくとも、法務で用いる各種サービスにおいて、AIがより活用されることは間違いありません。

対人業務である弁護士業がAIにより駆逐されることはないと考えてはおりますが、技術について行けない弁護士が駆逐されてしまうことはあり得ますので、新しい技術には引き続きキャッチアップしていこうと思います。

投稿者: 弁護士大窪和久

2022.04.28更新

2022年度より運用が開始された民事裁判書類電子提出システム(mints)ですが、運用開始される裁判所について裁判所のサイトにて情報が公開されています。

2022年4月21日から、甲府地方裁判所(本庁)及び大津地方裁判所(本庁)にて運用が開始されています。

また、2022年夏から秋頃に、知的財産高等裁判所、東京地方裁判所民事第5部、民事第8部、民事第29部、民事第34部、民事第40部、民事第46部及び民事第47部並びに大阪地方裁判所第21民事部及び第26民事部にて運用が開始されるとのことです。

民事裁判書類電子提出システムについては、現在行なわれているteamsによるWEB会議同様、当事者双方に訴訟代理人がありかつ両代理人が希望する場合のみの運用となりますが、代理人にとって利用しない理由も特段ありませんので、広く使われることになると思います。はやく全ての裁判所にて運用が開始されることを願います。

投稿者: 弁護士大窪和久

2022.02.01更新

弁護革命について、サービスがはじまってから程なくして使い始めたことは過去に本ブログでも書かせて頂きましたが、この度弁護革命の活用例にて紹介頂きました。

かねてより弁護士業務から紙をいかにして排するかというのを業務の課題にしておりましたが、弁護革命とクラウドサービスを組み合わせることにより、上記課題はかなり解決に近づいたと考えております。特にこのコロナ渦においてはその重要性が増しております。

ようやく裁判所もIT化に向けて法整備がなされる段階まで達してきましたので、弁護士側の業務も更にIT化させてサービスの向上を目指していきたいものです。

 

投稿者: 弁護士大窪和久

2021.10.27更新

AI-CONPRoで記事「定型契約のレビュー時間が1/2になり、弁護士がやるべき顧問先への付加価値業務にフォーカスするためのサポートツール」を掲載して頂きました。

記事にある通り、導入後は契約書の確認についてはかなりのスピードアップが図れました。主に顧問先の関係で利用させて頂いております。

 

 

投稿者: 弁護士大窪和久

2021.05.16更新

法制審議会・民事訴訟法(IT化関係)部会で、「民事訴訟法(IT化関係)等の改正に関する中間試案」がとりまとめられています(5月7日までパブコメが募集されていました)。これは日本が諸外国から遅れに遅れていた司法のIT化を目指すために作られたものですが、各方面から意見が出されています。

この中間試案では、訴状等についてオンラインでの申立を行なうようにできることを前提に、次の三つの案を呈示しています。①甲案:オンライン申立の義務化(例外を除いて書面による申立は認めない)②乙案:オンライン申立の訴訟代理人の義務化 ③丙案:オンライン申立は任意とし義務化しない

甲・乙・丙案のいずれが良いかという点について、私見では日弁連案(まずオンライン申立を認め、オンライン申立の体制整備を進めた上で訴訟代理人の義務化を行ない、その後訴訟代理人以外も義務化すべきか検討する)が妥当と考えています。紙の形で事件記録を作成・保存することについては、当事者にとっても裁判所にとってもコストとして大きいものがありますし、書面の持参や郵送をすることなくどこからでも申立をすることができるのは大きな利便性があります。その一方、ITリテラシーを皆が持っている訳ではないため、裁判を受ける権利の保障の関係上オンライン申立の体制整備は不可欠の前提ですので、当面はオンライン申立の体制整備を進めた上で訴訟代理人の義務化まで進めるのが妥当と考えます。

この点、先日公刊された消費者法ニュース127号で、裁判のIT化と審理の空洞化という特集が組まれていました。特集中小林孝志弁護士が「オンライン申立て等には断固として反対すべきである」という文章で丙案(オンライン申立は任意とし義務化しない)をとるべきとの論考が書かれていましたので拝読しました。

論考中で示されている、一般人がIT化というハードルにより裁判を受ける権利の保障が実質的に受けられなくなるという懸念はもっともであると考えますし、消費者保護の立場からも重要な視点だと思います。ただ、オンライン申立等の「訴訟代理人」の義務化も反対すべきという点は賛同できませんでした。論考中乙案にも反対する理由としてあげられているのは、①弁護士や司法書士にもIT弱者はいる②ITに不慣れなら事務員を雇えというのは細々とやっている弁護士も少なくない中賛成できない③弁護士が敢えて紙で訴訟書面を出すのなら何か理由があるはずだから尊重すべきということです。

しかしながら、登記手続については、既にオンライン申請制度が導入されており、司法書士はIT化に対応していますので、訴訟に携わる士業のうち弁護士だけIT化に対応できないという論は社会的に支持されないように思われます。また、弁護士にとっても紙の記録を作成・保存することから免れることで、従前より安いコストで事務所を運営することが可能になり、「細々とやっている弁護士」にとってIT化はむしろ利益になります。さらに、紙で訴訟書面を作るコストは依頼者が負担するものであり(特に消費者事件においては、契約書等多数の書面を証拠として提出する場面があり、依頼者のコストとして無視できないものがあります)、弁護士が依頼者のコストを無視して敢えて紙で訴訟書面を出す理由というのも想定しがたいものがあります。

裁判のIT化を進める中、消費者の裁判を受ける権利を損なわない様にする事自体は重要です。今後も(弁護士目線では無く)消費者目線での議論を続けていくことが必要だと思います。

 

 

 

 

投稿者: 弁護士大窪和久

2021.05.16更新

読売新聞オンラインで、「【独自】家族間問題に「ウェブ調停」導入へ…東京など4家裁で試行」との記事が掲載されていました。

記事によれば、「最高裁は、家族間の問題を扱う家事調停に、インターネット上で手続きを進める「ウェブ会議」を導入する方針を固めた。裁判のIT化の一環で、今年度内に東京、大阪、名古屋、福岡の4家裁で試行を開始し、その後、他地域への拡大も検討する」とのことです。

これまで、離婚や相続の家事調停については、原則として当事者が裁判所に出頭して行なうこととされています。調停の場合訴訟と異なり、当事者間の協議を行なうという性格上、代理人がついている場合でも当事者本人も裁判所に来る必要がありました。当事者が遠隔地に居住する場合等については、電話会議を用いる運用も例外的に行なわれてはいますが、原則としては裁判所への出頭が必要です。

民事訴訟についてはWEB会議が実施されるようになっていますが、家事事件についてはこれまで実施されておらず、これからの課題とされていたところです。

この点、特に東京家裁においては、当事者が裁判所に多数出頭することで裁判所が混み合う状況がかねてより存在し、昨年からのコロナ渦においては三密を避ける目的から調停期日を多く入れられないということも生じています。新型コロナウイルス感染防止の観点から裁判所に人が来ることを防ぐ必要は確かにありますので、WEB会議については積極的に実施して頂きたいものです。

投稿者: 弁護士大窪和久

2021.02.24更新

以前こちらのブログで紹介した弁護革命で大幅なバージョンアップが行なわれましたので簡単に紹介します。

バージョンアップ後、「PDF書き込み機能」が加わりました(こちらの動画で機能紹介がなされています)。

注釈モードにすると、PDFにマーカーで強調したり、付箋を入れて書き込みを入れたりすることが可能です。注釈モードで書き込み等を入れた場合でも、書き込みを入れていないオリジナルのPDFは保存されており、書き込みを入れたPDFもオリジナルのPDFも両方ダウンロードすることが可能です。PDFに書き込みをすること自体は個別のアプリケーションでも行なうことはできるのですが、ブラウザ上でこのような作業が簡単にできてしまうのはとても便利ですし、データについては複数人で共有することも可能なので弁護団で検討することも可能です。

また、今回のバージョンアップで「証拠番号埋め込み機能」が加わり、これも便利です(こちらの動画で機能紹介がなされています)。

裁判所に書証を紙で提出する場合、印刷した書証に「弁○号証」などの証拠番号を入れる必要がありましたが、印刷したものにいちいち書き込んでいくのは手間です。PDFにアプリケーションで証拠番号を手作業で個別に入れた上印刷するというやり方もありますが、これも手間であることには変わりません。弁護革命ではオリジナルのPDFに証拠番号を埋め込んだものを一括で準備することができてしまうので、証拠番号を入れる手間が一気に無くなりました。

弁護革命は、多数の資料を検討する必要がある弁護団事件で特に威力を発揮しますが、今回のバージョンアップで更に有用性が上がりました。今後弁護団で事件をする際には是非導入していこうと思います。

 

 

投稿者: 弁護士大窪和久

2021.01.05更新

報道によれば、東京、埼玉、千葉、神奈川の1都3県を対象とした、特別措置法に基づく緊急事態宣言がだされるとのことです。今回の緊急事態宣言では、飲食店に対して閉店時間を午後8時に前倒しすることが主な内容であり、昨年行なわれた緊急事態宣言のように学校の休校を行なったり、映画館劇場の営業自粛を求めたりすることはなく、限定的な内容のようです。

緊急事態宣言の再発令で気になるのは、緊急事態宣言再発令により裁判所はどうするかという点です。

昨年の緊急事態宣言が行なわれた際、裁判所は業務を(一部を除いて)停止しました。東京地裁の場合、原則として5月7日から5月末日までの裁判期日指定を取消し、6月以降に順次再開するという扱いを行ないました。6月以降も法廷を隔週開廷としたため、裁判が大幅に(数ヶ月~半年程度)遅延してしまい、現在もその状況が続いています。

今回の緊急事態宣言でも同様の対応を行なった場合、予定されていた裁判は緊急事態宣言期間中は原則として止まってしまい、更に大幅な裁判遅延がもたらされることは必須です。裁判所が再度の緊急事態宣言に備えてIT設備の拡充等なんらかの準備を行なってきたということもありませんので、見通しとしては悲観的にせざるを得ません。

もっとも、前回の緊急事態宣言でも、緊急性のある事件(民事保全、DV事件、人身保護事件等)は期日が開かれましたので、そのような事案については今回も期日が開かれるのではないかと思います。

新形コロナウイルスの感染拡大は国内外でも封じ込めに成功した台湾のような国を除いて終わる見通しを見せません。日本でも今後また感染拡大により緊急事態宣言に追い込まれることもあると思いますので、司法に限らずどうやって感染拡大している中でも業務を続ける道を作るか検討していく必要はあるでしょう。

投稿者: 弁護士大窪和久

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弁護士大窪のコラム 桜丘法律事務所

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