弁護士大窪のコラム

2022.04.28更新

2022年度より運用が開始された民事裁判書類電子提出システム(mints)ですが、運用開始される裁判所について裁判所のサイトにて情報が公開されています。

2022年4月21日から、甲府地方裁判所(本庁)及び大津地方裁判所(本庁)にて運用が開始されています。

また、2022年夏から秋頃に、知的財産高等裁判所、東京地方裁判所民事第5部、民事第8部、民事第29部、民事第34部、民事第40部、民事第46部及び民事第47部並びに大阪地方裁判所第21民事部及び第26民事部にて運用が開始されるとのことです。

民事裁判書類電子提出システムについては、現在行なわれているteamsによるWEB会議同様、当事者双方に訴訟代理人がありかつ両代理人が希望する場合のみの運用となりますが、代理人にとって利用しない理由も特段ありませんので、広く使われることになると思います。はやく全ての裁判所にて運用が開始されることを願います。

投稿者: 弁護士大窪和久

2022.02.22更新

民事裁判手続のIT化の一環として、民事裁判書類電子提出システム(mints/ミンツ)の運用が始まりました。

mintsは、従来ファクシミリで提出することが可能であった訴訟書面に関して、ファクシミリにかわりPDF等の電子ファイルでアップロードすることで提出することを可能とするものです。またシステムを通してアップロードされたファイルの閲覧・ダウンロード・印刷も可能です。

mintsの運用例については、裁判所のyoutubeチャンネルでも動画として公開されています。

mintsはまず甲府、大津地裁で試行期間に入り、4月以降には全国の裁判所で運用を拡大するとのことです。

このシステムについて先日弁護士会で説明会が行われましたが、システムとしてはWEBブラウザを経由したシンプルなもので、使い勝手は悪くないと思いました。また提出にあたり押印がいらない、土日も使えるなど利便性についてもある程度考慮されているようです。

今後は訴訟書類については弁護士側も紙ではなく電子管理が求められることになります。私も裁判所の運用の変化にあわせて書類は電子管理していく予定です。

 

投稿者: 弁護士大窪和久

2021.10.07更新

ヤフーニュースで「法廷で弁護人のPC用電源は使用禁止?!裁判所の仰天判断をどう見るべきか」との記事が掲載されていました。

記事によれば、横浜地裁で行なわれていた公判前整理手続が始まる直前、景山太郎裁判長が公判前整理手続で弁護人がPCを使うのに法廷内での電源を使用しない様に命じたとのことです。これに対して弁護人が異議を申し立てたものの、景山太郎裁判長が異議を棄却した為、弁護人が東京高裁に異議申立をおこなったというものです。

本事件の弁護人である高野隆弁護士のブログではこの裁判長の判断に関する経過が報告されております。同ブログの中では景山太郎裁判長の意見書も掲載されていました。意見書によれば、景山太郎裁判長としては「弁護人らが自前の電源(パソコンの内蔵電池等)を使ってパソコンを使用することは何ら妨げられておらず自由にできるのであって(公判前整理手続期日程度の時間であれば、法廷電源の使用は不要であろう。)、弁護人らの上記主張に論理の飛躍があることは明らかである(もとより検察官も法廷でパソコンを使用することがあるが、当然のことながら、後述のような場合以外に法廷電源を使ってそのパソコンに充電するなどということは一切していないであろう。弁護人らの理屈によれば、訴訟手続において防御活動のために必要なものは全て国費で賄う、あるいは裁判所が法廷に用意する必要があることになりかねない」とのご見解のようです。

しかしながら、本事件は否認事件であり証拠も膨大であるものと思われ、既に4回目の公判前整理手続に入っていた事件です。そのような事件において、公判前整理手続で証拠をPCで検索した上で意見を述べたり、双方の書面の内容を確認することは重要なプロセスであると思われます。また弁護人が他の期日でもPCを利用している場合等、内蔵充電だけでPCが起動できないような場面も十分考えられますので、公判前整理手続においてあえて法廷内での電源を使用させないというのは大変不合理な判断であると私は考えます。「弁護人らの理屈によれば、訴訟手続において防御活動のために必要なものは全て国費で賄う、あるいは裁判所が法廷に用意する必要があることになりかねない」として電源利用を排した景山太郎裁判長の議論は極論に走ったものであり、国民の理解は得られないのではないのでしょうか。

投稿者: 弁護士大窪和久

2021.05.16更新

法制審議会・民事訴訟法(IT化関係)部会で、「民事訴訟法(IT化関係)等の改正に関する中間試案」がとりまとめられています(5月7日までパブコメが募集されていました)。これは日本が諸外国から遅れに遅れていた司法のIT化を目指すために作られたものですが、各方面から意見が出されています。

この中間試案では、訴状等についてオンラインでの申立を行なうようにできることを前提に、次の三つの案を呈示しています。①甲案:オンライン申立の義務化(例外を除いて書面による申立は認めない)②乙案:オンライン申立の訴訟代理人の義務化 ③丙案:オンライン申立は任意とし義務化しない

甲・乙・丙案のいずれが良いかという点について、私見では日弁連案(まずオンライン申立を認め、オンライン申立の体制整備を進めた上で訴訟代理人の義務化を行ない、その後訴訟代理人以外も義務化すべきか検討する)が妥当と考えています。紙の形で事件記録を作成・保存することについては、当事者にとっても裁判所にとってもコストとして大きいものがありますし、書面の持参や郵送をすることなくどこからでも申立をすることができるのは大きな利便性があります。その一方、ITリテラシーを皆が持っている訳ではないため、裁判を受ける権利の保障の関係上オンライン申立の体制整備は不可欠の前提ですので、当面はオンライン申立の体制整備を進めた上で訴訟代理人の義務化まで進めるのが妥当と考えます。

この点、先日公刊された消費者法ニュース127号で、裁判のIT化と審理の空洞化という特集が組まれていました。特集中小林孝志弁護士が「オンライン申立て等には断固として反対すべきである」という文章で丙案(オンライン申立は任意とし義務化しない)をとるべきとの論考が書かれていましたので拝読しました。

論考中で示されている、一般人がIT化というハードルにより裁判を受ける権利の保障が実質的に受けられなくなるという懸念はもっともであると考えますし、消費者保護の立場からも重要な視点だと思います。ただ、オンライン申立等の「訴訟代理人」の義務化も反対すべきという点は賛同できませんでした。論考中乙案にも反対する理由としてあげられているのは、①弁護士や司法書士にもIT弱者はいる②ITに不慣れなら事務員を雇えというのは細々とやっている弁護士も少なくない中賛成できない③弁護士が敢えて紙で訴訟書面を出すのなら何か理由があるはずだから尊重すべきということです。

しかしながら、登記手続については、既にオンライン申請制度が導入されており、司法書士はIT化に対応していますので、訴訟に携わる士業のうち弁護士だけIT化に対応できないという論は社会的に支持されないように思われます。また、弁護士にとっても紙の記録を作成・保存することから免れることで、従前より安いコストで事務所を運営することが可能になり、「細々とやっている弁護士」にとってIT化はむしろ利益になります。さらに、紙で訴訟書面を作るコストは依頼者が負担するものであり(特に消費者事件においては、契約書等多数の書面を証拠として提出する場面があり、依頼者のコストとして無視できないものがあります)、弁護士が依頼者のコストを無視して敢えて紙で訴訟書面を出す理由というのも想定しがたいものがあります。

裁判のIT化を進める中、消費者の裁判を受ける権利を損なわない様にする事自体は重要です。今後も(弁護士目線では無く)消費者目線での議論を続けていくことが必要だと思います。

 

 

 

 

投稿者: 弁護士大窪和久

2021.05.16更新

読売新聞オンラインで、「【独自】家族間問題に「ウェブ調停」導入へ…東京など4家裁で試行」との記事が掲載されていました。

記事によれば、「最高裁は、家族間の問題を扱う家事調停に、インターネット上で手続きを進める「ウェブ会議」を導入する方針を固めた。裁判のIT化の一環で、今年度内に東京、大阪、名古屋、福岡の4家裁で試行を開始し、その後、他地域への拡大も検討する」とのことです。

これまで、離婚や相続の家事調停については、原則として当事者が裁判所に出頭して行なうこととされています。調停の場合訴訟と異なり、当事者間の協議を行なうという性格上、代理人がついている場合でも当事者本人も裁判所に来る必要がありました。当事者が遠隔地に居住する場合等については、電話会議を用いる運用も例外的に行なわれてはいますが、原則としては裁判所への出頭が必要です。

民事訴訟についてはWEB会議が実施されるようになっていますが、家事事件についてはこれまで実施されておらず、これからの課題とされていたところです。

この点、特に東京家裁においては、当事者が裁判所に多数出頭することで裁判所が混み合う状況がかねてより存在し、昨年からのコロナ渦においては三密を避ける目的から調停期日を多く入れられないということも生じています。新型コロナウイルス感染防止の観点から裁判所に人が来ることを防ぐ必要は確かにありますので、WEB会議については積極的に実施して頂きたいものです。

投稿者: 弁護士大窪和久

2021.04.23更新

報道によれば、政府は、大阪、兵庫、京都、東京の4都府県を対象に、今月25日から来月11日までの期間、特別措置法に基づく緊急事態宣言を出すとのことです。1月に発令された緊急事態宣言の記憶も新しいところですが、早くも3回目の緊急事態宣言が出されることになります。

昨年の緊急事態宣言が行なわれた際、裁判所は業務を(一部を除いて)停止しました。東京地裁の場合、原則として5月7日から5月末日までの裁判期日指定を取消し、6月以降に順次再開するという扱いを行ないました。他方、2回目の緊急事態宣言では、裁判所は業務を継続しており、特段裁判が遅延するような事態は生じていません。

今回の緊急事態宣言がどのような内容になるかは現時点では発表されていませんが、協議されている内容では公共機関の業務が停止するようなことは予定されておらず、2回目の緊急事態宣言と同様裁判には影響は無いと思われます。

もっとも、来月11日までの短期間で緊急事態宣言で感染状況が大きく変わるとは思われず緊急事態宣言期間の延長はあり得るところです。また、都市間移動の自粛を求めるという話は出てきており、緊急事態宣言が長期化した場合、遠隔地の裁判所での期日については出頭を行わない様求められる程度のことはあり得るかも知れません。もっとも、昨年来teamsを使ったWEB会議が使われるようになり、遠隔地での裁判所の期日がWEB会議で行なわれることも通常ですので、その場合でも裁判に与える影響は限定的と思われます。

 

投稿者: 弁護士大窪和久

2021.03.19更新

 本月17日に、札幌地裁が同性婚の不受理を行なったことについては憲法に違反するという判断を示しました。本判決はBBCニュースでも報じられ、白石早樹子さんの解説において「今回の札幌地裁の判決ははっきりとした分岐点だ。賠償請求は退けられたが、違憲判決という大きな成果を勝ち取った実質勝訴だという声が次々に上がっている」と紹介されています。

 本裁判については、弁護団がCALL4(社会課題の解決を目指す訴訟“の支援に特化したウェブプラットフォーム)上で判決文、判決要旨だけではなく、主張書面や証拠なども公開しているため(公開箇所はこちら)、原告被告がどのような主張を行なっているのか明確になっています。原告準備書面では同性婚に関して緻密な書面が提出されており、弁護団が本判決を勝ち取るのにいかに汗を流してきたかが良くわかるものとなっています。

 判決では、 同性間の婚姻を認める規定を設けていない民法及び戸籍法の婚姻に関する諸規定について、法の下の平等を定める憲法14条1項に反するとの判断をしています。

 具体的には、「同性愛は精神疾患ではなく,自らの意思に基づいて選択、変更できないことは,現在は確立した知見になっている。圧倒的多数派である異性愛者の理解又は許容がなければ,同性愛者のカップルは,重要な法的利益である婚姻によって生じる法的効果を享受する利益の一部であってもこれを受け得ないとするのは,同性愛者の保護が,異性愛者と比してあまりにも欠けるといわざるを得ない」「我が国及び諸外国において,同性愛者と異性愛者との間の区別を解消すべきとする要請が高まっていることは考慮すべき事情である一方,同性婚に対する否定的意見や価値観を有する国民が少なからずいることは,同性愛者に対して,婚姻によって生じる法的効果の一部ですらもこれを享受する法的手段を提供しないことを合理的とみるか否かの検討の場面においては,限定的に斟酌すべきものである」とした上で、同性愛者に対しては,婚姻によって生じる法的効果の一部ですらもこれを享受する法的手段を提供しないとしていることは,立法府の裁量権の範囲を超えたものであるといわざるを得ず,本件区別取扱いは,その限度で合理的根拠を欠く差別取扱いに当たると解さざるを得ない」と判断しているのです。これまで日本の裁判所が同性婚を認めない民法等の規定を違憲であるとした判断はなく、まさに画期的な判断といえるでしょう。

 なお本判決は、同性婚を認めない民法等の規定は憲法24条には違反しないとしています。その理由については、現行民法への改正や憲法が制定された戦後初期の頃においても、同性愛は精神疾患であるとされており、同性婚は許されないものと解されていたこと、憲法 24条が「両性」など男女を想起させる文言を用いていることにも照らせば、同条は異性婚について定めたものであり、同性婚について定めるものではないというものです。ただここで本判決は、民法等で同性婚を認める規定をおくことについて「憲法24条に反する」という判断を行なっているわけではありません。ネット等では本判決が同性婚を憲法24条に違反するものと判示したというような言説がありますが、判決文にあたればそのような読み方は出来ないことは明白です。

 判決中にも言及されているとおり、日本では特に高齢者で同性婚について否定的な意見を持つ人が多く、(私も地方時代、そのような意見を聞くことが少なからずありました)、そのせいもあってか法制度の整備も遅々としているのが現状です。本判決を機に法制度整備をきちんと進める方向へ議論がなされることを期待します。

 

投稿者: 弁護士大窪和久

2021.01.12更新

東京地裁の方で、本年1月7日に発令された緊急事態宣言を受け、裁判業務をどうするかについてアナウンスがなされましたのでご紹介します。

緊急事態宣言の発出を受けた裁判業務について

内容としては次の通りです。

・原則通常どおり裁判業務を継続

・裁判員裁判も行なう

・ウェブ会議や電話会議の期日への切り替えを求めることはある

・出頭して行う手続で 出頭する人の数を極力減らすよう求めることもある

今回の緊急事態宣言は、実質的には飲食店の20時閉店を求めたり、イベントの人数制限を行なう等限定的な内容に留まり、社会的活動を大きく制約するものではないことから、裁判業務も原則通常通り行なうということにした模様です。ただ、東京地裁も「事件関係者の皆さまにおいては,期日のために,都外からお越しになる場合や来庁に不安がある場合には,柔軟に対応いたしますので,担当書記官まで御連絡ください」とアナウンスしておりますので、事件進行については書記官と協議した方が良いでしょう。

もっとも、緊急事態宣言の範囲も一都三県以外にも拡大される見通しであり、今後感染者の数や医療機関の状況によっては裁判業務も制限される可能性は十分にあります。

投稿者: 弁護士大窪和久

2021.01.05更新

報道によれば、東京、埼玉、千葉、神奈川の1都3県を対象とした、特別措置法に基づく緊急事態宣言がだされるとのことです。今回の緊急事態宣言では、飲食店に対して閉店時間を午後8時に前倒しすることが主な内容であり、昨年行なわれた緊急事態宣言のように学校の休校を行なったり、映画館劇場の営業自粛を求めたりすることはなく、限定的な内容のようです。

緊急事態宣言の再発令で気になるのは、緊急事態宣言再発令により裁判所はどうするかという点です。

昨年の緊急事態宣言が行なわれた際、裁判所は業務を(一部を除いて)停止しました。東京地裁の場合、原則として5月7日から5月末日までの裁判期日指定を取消し、6月以降に順次再開するという扱いを行ないました。6月以降も法廷を隔週開廷としたため、裁判が大幅に(数ヶ月~半年程度)遅延してしまい、現在もその状況が続いています。

今回の緊急事態宣言でも同様の対応を行なった場合、予定されていた裁判は緊急事態宣言期間中は原則として止まってしまい、更に大幅な裁判遅延がもたらされることは必須です。裁判所が再度の緊急事態宣言に備えてIT設備の拡充等なんらかの準備を行なってきたということもありませんので、見通しとしては悲観的にせざるを得ません。

もっとも、前回の緊急事態宣言でも、緊急性のある事件(民事保全、DV事件、人身保護事件等)は期日が開かれましたので、そのような事案については今回も期日が開かれるのではないかと思います。

新形コロナウイルスの感染拡大は国内外でも封じ込めに成功した台湾のような国を除いて終わる見通しを見せません。日本でも今後また感染拡大により緊急事態宣言に追い込まれることもあると思いますので、司法に限らずどうやって感染拡大している中でも業務を続ける道を作るか検討していく必要はあるでしょう。

投稿者: 弁護士大窪和久

弁護士大窪のコラム 桜丘法律事務所

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