弁護士大窪のコラム

2021.05.25更新

時事ドットコムニュースで、ネットの誹謗中傷に関して、「自民党は25日、インターネット交流サイト(SNS)で相次ぐ誹謗(ひぼう)中傷への対応を議論するため、情報通信戦略調査会に設けた小委員会(小委員長・山下貴司元法相)の初会合を開いた。今後、刑法改正も視野に、侮辱行為の厳罰化など対策を議論する」との記事が掲載されていました。

確かに、侮辱罪は現行法で30日未満の拘留または1万円未満の科料と法定刑が定められており、名誉毀損罪の法定刑(3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金)に比べても著しく軽いという問題点があります。このため、警察が捜査に及び腰になってしまうという面があることは否定できません。

ただ、ネットの誹謗中傷に関して法定刑が軽いという問題点より重要なことは、匿名の投稿について捜査機関が投稿者を特定できないことを理由として捜査に消極的になるという点です。SNSの運営会社は裁判所の令状がなければ匿名の投稿者の情報について捜査機関に開示するとしていますが、捜査機関は令状をとってSNS運営に対して開示を求めることをなかなか行なおうとしません。民事上の発信者情報開示を行なって被害者側が匿名の投稿について初めて捜査に着手するのが一般的です。

このような捜査機関側の対応が改まらない限り、厳罰化がなされても結局立件に至ることはありませんので、ネット中傷は防げないことに変わりはありません。

投稿者: 弁護士大窪和久

2021.05.18更新

2021年5月号の自由と正義(日弁連の会報)で、オホーツク枝幸ひまわり基金法律事務所の出村洋介弁護士によるエッセイが掲載されていました。

オホーツク枝幸ひまわり基金法律事務所については、以前も当ブログで簡単に紹介しましたが、2019年4月に開設された公設事務所(日弁連のひまわり基金の支援により設立された司法過疎対策を目的とした民間の事務所)です。この事務所がある枝幸町は中頓別簡易裁判所管内にありますが、この管内には弁護士が公設開設以前は一人もいませんでした。弁護士に相談しようとする場合、稚内か名寄(以前私が仕事をしていた場所です)まで行く必要がありましたが、いずれも100キロ程の距離があります。また鉄道も廃止されており、特に冬場はかなりアクセスが困難な場所です。このような事情から、地元からも弁護士の赴任が心待ちにされており、日弁連や弁護士会へ法律事務所の開設を求める声が上がっていました。

当初、日弁連は法テラス(日本司法支援センター)の7号事務所の設立を行なうのが適切であるとして、法テラスに対して7号事務所の設立を求めていました。法テラスの業務には、司法過疎地に弁護士事務所を設立して法律事務を行なうことが含まれております。そして長年に渡り民間による法律事務所がなく司法過疎の問題が解決されていない中頓別簡裁管内は、まさに同業務が行なわれる必要が高い場所でした。

しかしながら、法テラスは、同地域で弁護士会が行なっている法律相談の充足率が低いことから、弁護士の必要性がないとして事務所を設立することを拒絶しました。日弁連や弁護士会からは、地元にいない弁護士の法律相談だけでは地元のニーズを捉えることは困難であること、また距離的な事情を鑑みれば弁護士を地元におくことが重要であること等を主張しましたが、法テラスはこれを聞き入れる事は無かったのです。中頓別簡裁管内は、法律上司法過疎対策を行なうことが求められている法テラスからは文字通り「見捨てられた」といっても決して過言ではありません。

一方、日弁連や弁護士会としては、地元からの要望を無視することはできないと考え、日本弁護士連合会が資金を援助して公設事務所を設立し弁護士を赴任させました。国がインフラ整備することを放棄した場所について民間がかわりに整備したわけです。

このような経緯があることから、赴任した出村弁護士も、「開設先の枝幸町の人口が約8000人と、他の公設事務所と比較してやや小規模ということもあり、相談等の需要がどの程度あるかについて心配していただく声も聞いておりました。そのため、正直なところでは、私自身も不安を感じていた面がありました」とエッセイで書かれています。しかし、開設してから2年経過した現在は、「実際に様々な相談や依頼を受けていく中で、当初の私自身の心配は杞憂であり、周辺地域の相談需要は決して少なくないことが分かってきました」ということです。出村弁護士はこの理由について、事務所の広報や地域の方々との人間的なつながりができたことをあげていますが、このような活動は弁護士が常駐していなければできなかったでしょう。

「法テラスが見捨てた地」において、オホーツク枝幸ひまわり基金法律事務所が地元の法的ニーズに応えていることについては、元名寄で働いていた弁護士として嬉しく思います。それと同時に、こうしたニーズを無視して地域を見捨てた法テラスは厳しく批判されてしかるべきだと改めて思いました。

投稿者: 弁護士大窪和久

2021.05.16更新

法制審議会・民事訴訟法(IT化関係)部会で、「民事訴訟法(IT化関係)等の改正に関する中間試案」がとりまとめられています(5月7日までパブコメが募集されていました)。これは日本が諸外国から遅れに遅れていた司法のIT化を目指すために作られたものですが、各方面から意見が出されています。

この中間試案では、訴状等についてオンラインでの申立を行なうようにできることを前提に、次の三つの案を呈示しています。①甲案:オンライン申立の義務化(例外を除いて書面による申立は認めない)②乙案:オンライン申立の訴訟代理人の義務化 ③丙案:オンライン申立は任意とし義務化しない

甲・乙・丙案のいずれが良いかという点について、私見では日弁連案(まずオンライン申立を認め、オンライン申立の体制整備を進めた上で訴訟代理人の義務化を行ない、その後訴訟代理人以外も義務化すべきか検討する)が妥当と考えています。紙の形で事件記録を作成・保存することについては、当事者にとっても裁判所にとってもコストとして大きいものがありますし、書面の持参や郵送をすることなくどこからでも申立をすることができるのは大きな利便性があります。その一方、ITリテラシーを皆が持っている訳ではないため、裁判を受ける権利の保障の関係上オンライン申立の体制整備は不可欠の前提ですので、当面はオンライン申立の体制整備を進めた上で訴訟代理人の義務化まで進めるのが妥当と考えます。

この点、先日公刊された消費者法ニュース127号で、裁判のIT化と審理の空洞化という特集が組まれていました。特集中小林孝志弁護士が「オンライン申立て等には断固として反対すべきである」という文章で丙案(オンライン申立は任意とし義務化しない)をとるべきとの論考が書かれていましたので拝読しました。

論考中で示されている、一般人がIT化というハードルにより裁判を受ける権利の保障が実質的に受けられなくなるという懸念はもっともであると考えますし、消費者保護の立場からも重要な視点だと思います。ただ、オンライン申立等の「訴訟代理人」の義務化も反対すべきという点は賛同できませんでした。論考中乙案にも反対する理由としてあげられているのは、①弁護士や司法書士にもIT弱者はいる②ITに不慣れなら事務員を雇えというのは細々とやっている弁護士も少なくない中賛成できない③弁護士が敢えて紙で訴訟書面を出すのなら何か理由があるはずだから尊重すべきということです。

しかしながら、登記手続については、既にオンライン申請制度が導入されており、司法書士はIT化に対応していますので、訴訟に携わる士業のうち弁護士だけIT化に対応できないという論は社会的に支持されないように思われます。また、弁護士にとっても紙の記録を作成・保存することから免れることで、従前より安いコストで事務所を運営することが可能になり、「細々とやっている弁護士」にとってIT化はむしろ利益になります。さらに、紙で訴訟書面を作るコストは依頼者が負担するものであり(特に消費者事件においては、契約書等多数の書面を証拠として提出する場面があり、依頼者のコストとして無視できないものがあります)、弁護士が依頼者のコストを無視して敢えて紙で訴訟書面を出す理由というのも想定しがたいものがあります。

裁判のIT化を進める中、消費者の裁判を受ける権利を損なわない様にする事自体は重要です。今後も(弁護士目線では無く)消費者目線での議論を続けていくことが必要だと思います。

 

 

 

 

投稿者: 弁護士大窪和久

2021.05.16更新

読売新聞オンラインで、「【独自】家族間問題に「ウェブ調停」導入へ…東京など4家裁で試行」との記事が掲載されていました。

記事によれば、「最高裁は、家族間の問題を扱う家事調停に、インターネット上で手続きを進める「ウェブ会議」を導入する方針を固めた。裁判のIT化の一環で、今年度内に東京、大阪、名古屋、福岡の4家裁で試行を開始し、その後、他地域への拡大も検討する」とのことです。

これまで、離婚や相続の家事調停については、原則として当事者が裁判所に出頭して行なうこととされています。調停の場合訴訟と異なり、当事者間の協議を行なうという性格上、代理人がついている場合でも当事者本人も裁判所に来る必要がありました。当事者が遠隔地に居住する場合等については、電話会議を用いる運用も例外的に行なわれてはいますが、原則としては裁判所への出頭が必要です。

民事訴訟についてはWEB会議が実施されるようになっていますが、家事事件についてはこれまで実施されておらず、これからの課題とされていたところです。

この点、特に東京家裁においては、当事者が裁判所に多数出頭することで裁判所が混み合う状況がかねてより存在し、昨年からのコロナ渦においては三密を避ける目的から調停期日を多く入れられないということも生じています。新型コロナウイルス感染防止の観点から裁判所に人が来ることを防ぐ必要は確かにありますので、WEB会議については積極的に実施して頂きたいものです。

投稿者: 弁護士大窪和久

2021.05.10更新

appleから、AirTagが到着しましたので一週間ほど使ってみました。

忘れ物タグとしての機能面でいうと、これまで使ってきた競合製品であるTileとは大きな機能の違いはありませんでしたが、近くまで近づいたときに位置が正確に把握できる機能(iPhone11以降のみで利用可能)が便利ではあると思いました。Tileでは近くまで来ても音でしか特定する手段がありませんが、AirTagは0.1メートル単位で位置をビジュアルで把握することができ、部屋の中での捜し物には向いていると思います。また、本格的になくしてしまった場合でも、他のiPhoneユーザー等の接続を利用して物を探すことができるのも心強いところです。

プライバシー保護についても考えられており、他人にAirtagを仕込まれたとしても、それをiPhoneからを「知らないAirTag」として関知することも可能であり、ストーカ等に悪用されることも防ぐ仕様になっています。

私は当面は今まで使っていたTileと併用して使おうと思いますが、両サービスともにより使いやすい機能を備えて利便性を高めて欲しいところです。

投稿者: 弁護士大窪和久

弁護士大窪のコラム 桜丘法律事務所

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