弁護士大窪のコラム

2020.10.29更新

cnet Japanで、「マイクロソフト「Teams」のデイリーアクティブユーザーが1億1500万人に」という記事が掲載されました。

同記事によれば、「Microsoft Teams」に関する最新の統計を発表した。最高経営責任者(CEO)のSatya Nadella氏によれば、Teamsの現在のデイリーアクティブユーザーは1億1500万人を超えているという」とのことです。今年3月の時点では4400万人ということだったので、この短期間で3倍近くにまでユーザーが増えたことになります。

コロナ渦で通常の会議からWEB会議に移行したのは日本だけではなく世界的な傾向ですが、このような増え方をみると、改めてコロナ渦が世界に及ぼした影響の大きさという物を感じずにはいられません。

先のブログにもあるとおり日本でも裁判所を含めTeamsがWEB会議用のツールとして広くビジネスで使われるようになりました。ZOOMのような手軽さはありませんが、その分セキュリティ面では優れているツールであり、今後も広く使われていくのではないかと思います。マイクロソフトはTeamsだけではなくOffice365といったサブスクリプションサービスでも売り上げを伸ばしており、コロナ渦は強い追い風になっています。

 

投稿者: 弁護士大窪和久

2020.10.26更新

民事裁判において、新型コロナウイルスでWEB会議の実施件数が東京地裁で9月は400件となり、導入当初の10倍に急増しているとの報道がありました。

同報道では、「東京地裁はウェブ会議が急増した背景に新型コロナウイルスの感染拡大による関係者の意識や行動の変化があるとみて、さらに活用を進めていく方針です。東京地方裁判所の後藤健民事部所長代行者は「新型コロナウイルスの影響で、結果として弁護士の意識が変わり使ってもらえるようになったのではないか。より迅速で適正な裁判ができるようになることを期待している」と話しています」と東京地裁の見解が掲載されています。

しかし、「弁護士の意識が変わり使えてもらえるようになったから」WEB会議の実施件数が増えたというのは、事実とは乖離している見解のように思われます。

そもそも、期日をWEB会議にするか否かについては裁判所の裁量によるものであり弁護士が決められるものでは本来ありません。また、東京地裁がWEB会議を導入し始めたのは今年の2月以降(しかも、全ての部で導入したわけではありません)であり、コロナウイルス感染拡大以前にWEB会議が実施されたことはありませんでした。感染拡大以前は、弁護士が希望しても一切WEB会議は実施されなかったのです。

また、東京地裁は緊急事態宣言中は一部の期日(身柄の刑事事件、民事保全等)を除いては全ての期日を行なわず、WEB会議で期日を進めるということも行ないませんでした。さらに、緊急事態宣言が開けてからも今日に至るまで法廷を隔週開廷にしており期日がなかなか入らない状態が継続していますが、法廷での期日が入らない週に代替としてWEB会議を実施するということも行なっていません。

むしろWEB会議については東京地裁ではなく大阪地裁など他の裁判所での実施の方が先行しており、東京地裁は他の裁判所に比べても後れを取っております。WEB会議による進行を訴訟当事者から求められても、機材が期日に準備できない等の理由で実施が出来ないということもあります。

9月の400件という数字自体、東京地裁で行なわれている期日のほんの一部に過ぎません。東京地裁の消極的な運用方針により、新型コロナウイルス感染拡大の影響があってもなお「これしかWEB会議が行なわれていない」というのが現状認識として正しいように思われます。

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、東京地裁の裁判が大幅に遅延しているのは事実です。東京地裁におかれては、是非とも「より迅速で適正な裁判ができるよう」に従前の姿勢を改め積極的にWEB会議を実施して頂きたいと思います。

投稿者: 弁護士大窪和久

2020.10.22更新

他の裁判所では既に運用が行なわれていますが、東京地裁でも他の裁判所に遅れて、teamsによる訴訟手続を進めるようになってきました。

裁判官によれば、もともと進める予定ではあったが、新型コロナウイルス感染拡大が今も続いている状況に鑑み、前倒しで積極的に取り扱いを行なうようになったということのようです。接続テストを行ない、問題が無いことを確認した上で期日を行なうという流れです(これは他の裁判所も同じ)。

もっとも、弁護士によってはまだteamsは未経験であり、従前の電話会議や弁論準備の方が良いという意見を出す方もおられました。

確かにteamsは他のテレビ会議システム(ZOOMなど)と比べても初見ですと取っつきにくい面があるのは事実ですが、せっかく裁判所がITを使うようになってきたということに加え、新型コロナウイルス感染拡大防止のためには少しでも接触の機会を減らすことが重要ですので、弁護士側でも積極的にteamsを利用していくことが望ましいと思います。またteamsは単に電話会議のかわりになるだけではなく、書面共有など紙に頼らない手続進行もやろうと思えばできるシステムですので、弁護士側も活用方法について裁判所に提案していくのが良いのではないかとも考えます。

 

投稿者: 弁護士大窪和久

2020.10.16更新

刑事裁判の場合、弁護人は検察が裁判所に提出予定の証拠について確認する必要があります。ただ、検察が弁護人に証拠のコピーを送ってくれるわけではありません(民事訴訟の場合、相手方に対し証拠の写しを送る必要がありますが、刑事裁判の場合そのようにルール設計がされているわけではありません)。弁護人が検察庁に直接いって証拠を謄写するのが原則となります。

もっとも、東京地検の場合、謄写センターで有料にてコピーをとってもらうことが可能です。また弁護士会の協同組合で謄写を受け付けてくれることもあります。ただ費用としては一枚数十円かかりますし、地方によってはそれ以上の負担が生じることもあります。

そのような費用的な問題で、私がかつて紋別の公設事務所にいた頃は、たまに実費を支払うので謄写をかわりにしてもらいたいという話を遠隔地の弁護士から求められたことはありました。断ると「弁護士会の金で事務所をおいているのにできないのはどういうことか」と憤られる方もいないわけではありませんでした。

記録謄写を公設事務所の弁護士に求めないようにという申し出等を弁護士会の方でしていただいたこともあり、次第にそのようなこともなくなりましたが、遠隔地の記録謄写が刑事弁護を行なう上でネックになっている現実そのものは今も変わっておりません。

この記録謄写に関しては、そもそも電子データによる謄写物の交付がなされれれば上記のような問題は一気に解決してしまうはずです。しかしながら、検察側はそのようなことは一切考えておりません。また東京地検謄写センターもまたそのようなことは行なわない旨明言しています(リンク先の高野先生のブログ参照)。民事裁判についてはIT化が進む中、刑事裁判だけが旧態依然とした紙中心の裁判から変化しようとしません。これは法改正により是正しなければいけない問題だと思います。

投稿者: 弁護士大窪和久

2020.10.03更新

裁判官が民事事件に関する文書やUSBメモリーを紛失するという事件が報道されていました。

NHKの報道によれば、「高松地方裁判所によりますと刑事部に所属する男性の裁判官が先月26日午前2時ごろに飲酒を伴う会食をしたあと、帰宅途中にリュックサックを紛失した」「リュックサックにはこの裁判官が担当する予定の民事裁判の原告側や被告側が作った書面の写しや、この裁判を含む複数の裁判についての情報が記録されたUSBメモリが入っている」とのことです。

裁判所は、裁判官が裁判に関する文書やデータを自宅に持ち帰る際は飲酒はせず、娯楽施設などに立ち寄らないよう指導していたにも関わらず、この指導を守らなかった裁判官に落ち度があるとしているようです。ただ、そもそも機密情報であるデータをUSBという紛失しやすい媒体で持ち帰ったり、裁判に関する文書を自宅に持ち帰ったりするという運用そのものがあり得ないことではないでしょうか。

しかも、裁判官が裁判に関する文書やUSBを紛失することはこれまでにもあったことです。裁判所の外部に持ち出す以上常に紛失する可能性は付いて回るものなので、再発を防ぐためには持ち出し自体を禁止すべきでした。民間企業では通常のルールとして運用されているものですが、裁判所は事件情報という当事者にとって非常にセンシティブなものについて杜撰な取り扱いを行ない続けていることになり、大変な問題といって良いでしょう。

コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言より後も、裁判所は隔週開廷となったり、裁判官も含めた職員が交代で休みを取るなどしてソーシャルディスタンスを図っています。このことにより事件滞留も指摘されているところです。裁判官も事件滞留を防ぐためには自宅での起案をせざるを得ないという事情もあったのかも知れません。しかし裁判官の自宅起案を認めるのであれば、そもそも事件情報を持ち出さなくても参照できるシステム(VPNの導入、クラウドストレージの利用等)を進めておくべきでした。もちろんVPNやクラウドストレージからの情報流出の危険は皆無ではありませんが、USBを持ち歩くことよりは危険度は遙かに低いものです。かりにこうしたシステムをどうしても導入できないのであれば、ソーシャルディスタンスを保って業務や起案のできる事務所等を臨時に借り上げるべきでしょう。

裁判所が今回紛失した裁判官を非難することに終始し、運用の問題点を抜本的に改善するのでなければ、今回のような事態が再発することは必須です。

投稿者: 弁護士大窪和久

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