弁護士大窪のコラム

2020.11.18更新

先日、櫻井光政弁護士(私の所属する桜丘法律事務所所長)が原告として、東京地検特捜部が業務上横領容疑で捜査対象とした男性を任意で取り調べた際、検事から接見を妨害されたことについて国賠を求めた事件の判決がありました。判決では弁護権の違法な侵害を認め、10万円の慰謝料の支払を命じています。

事実関係については、現在進行中の事件に関することでもありますので、こちらの記事で書いてあるような原告本人が記者会見で述べた内容以上のことを現時点でここで開示する予定はありません(なお、櫻井、私を含む当事務所の弁護士が弁護団をつくっています)。

ただ、本件は、任意取調中の検察の接見妨害について接見妨害を認めた先例として価値がある判決だと考えています。曲がりなりにも特捜たる存在がこのような違法な接見妨害を行なってまで被疑者の調書を取っていることが、まさにこの国の人質司法の病理を体現しているものと言わざるを得ません。

(2020.11.19 追記)

事務所のブログで櫻井弁護士が記事を書いておりますのでご参照ください。

投稿者: 弁護士大窪和久

2020.10.20更新

典型的な弁護過誤の例として、民事訴訟における控訴期限の徒過があります。

民事訴訟において、第一審判決に不服があるときには控訴をすることが出来ますが、法律上期限が定められています。民事訴訟法285条では、「控訴は、判決書又は第254条第2項の調書の送達を受けた日から二週間の不変期間内に提起しなければならない」とされています。具体的には、控訴状は、判決正本を受領した日をいれないで、2週間の最終日までに提出する必要があります。これを徒過した場合には、控訴を行なうことが出来なくなります。なお、最終日が土日祝日や年末年始であればその翌日が最終日となりますが、最終日については書記官にあらかじめ確認しておくのが確実でしょう。

控訴状提出のミスでありがちなものは、控訴状の提出先が「判決をした第一審の裁判所」であるにも関わらず、控訴状を高裁に送ってしまうようなケースです。期限ギリギリで速達で郵送して安心したと思いきや、提出すべき期間を徒過してしまい取り返しのつかないことになるということもあります。単純なミスですが事務局に郵送を頼んでいたところそようなことになってしまった、というケースもあります。

弁護士が控訴期限を徒過した場合、弁護士としての基本的な業務を怠ったとして、懲戒請求されその結果懲戒例は多数有ります。

また、弁護士が控訴していれば勝訴していたとして訴訟での請求額相当の損害賠償を求めるということもあります。ただ、この場合請求額がそのまま損害になるかというとそういうわけでもなく、控訴審において勝訴の見込みがどの程度あったかが問題となります(過去の裁判例では、控訴したとしても勝訴の見込みがなかったとして弁護士に対する損害賠償を認めなかったものもあります(昭和60年1月23日横浜地判 判例時報1181号119頁等))。一方、訴訟まで行かずとも弁護士が加入している弁護士損害賠償保険により一定額の賠償がなされるというケースもあります。

本来有ってはならないことではありますが、万が一自分が依頼した弁護士が控訴期間徒過のような弁護過誤を行なった場合には、どのような対応が妥当かについて他の弁護士にセカンドオピニオンをとって判断するのも良いと思います。

 

投稿者: 弁護士大窪和久

2020.10.13更新

今日はメトロコマース事件大阪医科大学事件の上告審判決が出ています。どちらも最高裁HPに既に判決文が掲載されています。

いずれも短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律8条(改正前の労働契約法20条)が禁じる不合理な条件の禁止にあたるかが問題となった事件で、メトロコマース事件では退職金、大阪医科大学事件では賞与について正社員と契約社員との間の格差が問題となりました。

いずれも高裁判決では格差が不合理であるという判断を行なっていますが、最高裁はこれを覆し、格差の不合理性を否定し使用者側に有利な判断を下しています。

もっとも、メトロコマース事件の方は反対意見があります。反対意見によれば、正社員と契約社員の職務の内容等に大きな相違がないことからすると、退職金についての使用者の裁量判断を尊重するとしても、不合理な条件の禁止にあたるといえ、高裁判決を破棄するには及ばないとしています。最高裁の判断はいずれも事例判断であり、実際の事件にそのままあてはまるものではないので反対意見の考え方も踏まえて考慮していく必要はあるでしょう。

投稿者: 弁護士大窪和久

2020.09.18更新

NHKのニュースで、「入れ墨のタトゥーの彫り師をしている男性が医師の免許がないのに客にタトゥーを入れたとして医師法違反の罪に問われた裁判で、最高裁判所は検察の上告を退ける決定をし、無罪が確定することになりました」との報道がありました。

ツイッターでも「あの最高裁がここまで踏み込んだ意見を出すのが驚き。これは弁護団の並々ならぬ尽力による成果なのだと思います」と書かせていただいたとおり、画期的な判断であると考えます。裁判長の補足意見で、「タトゥーの施術による保健衛生上の危険を防ぐため法律の規制を加えるのであれば、新たな立法によって行うべきだ」との立法提言がなされていますが、刑事訴訟の最高裁判決がここまで踏み込んだ立法提言を行うことはなかなかありません。

いずれ最高裁のホームページ等で判決文が公開される事件だと思いますので、公開後当ブログに改めて紹介させていただこうと思います。

投稿者: 弁護士大窪和久

2020.09.15更新

2014年にベネッセコーポレーションが個人情報流出させた事件を覚えていらっしゃいますでしょうか。

この事件については、個人情報流出について損害賠償を求める民事訴訟が複数提起されています。そのうちの一件(男性が慰謝料を求めた訴訟の差し戻し控訴審)で、2019年11月20日に大阪高裁は、プライバシー侵害を認め1000円の支払を命じた判決を下しています。この裁判は、一審と二審はともに損害を認めていませんでしたが、2017年に最高裁が精神的損害の有無や程度を十分に検討されていないとして、審理を高裁に差し戻したという経緯を辿っていました。

この事件の判決文については最高裁のホームページで掲載されていますし、判例時報2448号28頁でも紹介されていますので、興味を持たれた方は判決文にあたってみてください。本件訴訟の争点であるそもそも精神的損害が発生したと言えるか否かという点についてはかなり丁寧な認定を行なっていると思いました。

裁判所は、氏名・住所・電話番号等に関して「今日のように,情報ネットワークが多様化,高度化し,容易に入手可能なさまざまな情報を組み合わせることによって趣味嗜好や思想等まで把握されかねない危険性のあることが危惧されていることにも鑑みると,本件個人情報は,個人特定の基本となるベース情報として機能し,それを基に情報集積がされかねないものとしては重要な価値を持つものと評価すべき」とし、また本件で流出した子の氏名・性別・生年月日及び親との続柄については、「日常的に開示されることが多いものであるとはいえ,家族関係が一定程度明らかになる情報や
教育に関心が高いという属性が含まれており,前者に比してより私的領域性の高い情報ということができる」と認定しました。

また、上記各情報が流出したことにより、情報流出元が「教育関係の会社であったことや控訴人の年齢等から今後の学業生活等に関する支出が見込まれる顧客情報として,それらに関係する業者からは価値のある情報として有望視されることは避けられないもの」であり業者等からの広告,販売活動を受け,それに煩わしさや不快を感じる機会が増大することが予想されること、「流出した情報の全てを回収して抹消させることは不可能な状況となっているといわざるを得ない」ことなどから、「故意かつ営利目的を持って本件個人情報が流出したこと自体が精神的苦痛を生じさせるものである上,その流出した先の外縁が不明であることは控訴人の不安感を増幅させるものであって,このような事態は,一般人の感受性を基準にしても,その私生活上の平穏を害する態様の侵害行為」であるとしました。

そして、損害に関して、「本件個人情報を利用する他人の範囲を控訴人が自らコントロールできない事態が生じていること自体が具体的な損害であり,控訴人において予め本件個人情報が名簿業者に転々流通することを許容もしていないのであるから,上記のような現状にあること自体をもって損害と認められるべき」として肯定しています。

本件での損害額(1000円)自体は率直に言って低額に過ぎるのではないかと思われますが、損害認定に至る論理については他の事案でも参考になると考えますので、本ブログでも紹介させて頂きました。

投稿者: 弁護士大窪和久

弁護士大窪のコラム 桜丘法律事務所

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