弁護士大窪のコラム

2020.11.21更新

民事裁判のIT化がようやく日本でも始まりつつありますが、民事裁判のIT化を進める上で出された意見として、本人訴訟の場合どうするのかというものがあります。

この点、2020年11月20日付河北新報の記事では、このように書かれています。

「日本の民事裁判では、弁護士を付けず訴えを起こす「本人訴訟」が認められている。原告がアプリを使う際に手間取った時、誰がどうサポートするのか。代理人は技術的に精通する必要があろう。訴訟当事者が習熟度により不利益を被ることがないよう、弁護士会によるバックアップが欠かせない。」

この記事ではあたかも本人訴訟でも当然に何某かの代理人がつくかのような書きぶりをしておりますが、実際には本人訴訟を行なう場合に裁判所や第三者が代理人を付けてくれることはありません(たまに民事事件で国選弁護人のような制度は無いのかと聞かれることはありますが、そのようなものはありません)。ですので訴訟でのアプリ利用等についても、当事者本人がなさねばならないことになります。

また、記事では弁護士会によるバックアップが期待されています。この点日弁連では、昨年9月12日付で、「民事裁判手続のIT化における本人サポートに関する基本方針」というものを出しています。その中で本人訴訟支援について「裁判を受ける権利を実質的に保障して必要な法律サービスを提供することを可能とするため,IT面についても必要なサポートを提供する」と打ちだしています。もっとも、そればかりではなく、「民事裁判手続のIT化は,新たな司法システムの構築を目指すものであり,それに伴い裁判を受ける権利に支障が生じる場合は,国がその責任において支障を除去することは当然である」として、国に十全なサポート体制の構築や支援を求めてもいるのです。

上記日弁連の基本方針にもあるように、本来的には、本人訴訟については国がバックアップすべき問題です。隣国の韓国では、代理人弁護士においては電子訴訟を推奨する一方、当事者本人の場合は従前通りの紙による裁判の機会を与えており、記録の電子化等については裁判所が行なっています。また他国でも、記録の電子化については国が行なうということをしています。他方、日本の裁判所は、今までの議論の中では本人訴訟の支援について全く行なう姿勢を見せておらず、当事者本人の「自助」任せにするということのようです。マスメディアにおかれては、民事裁判のIT化による当事者の負担について、国あるいは裁判所がサボタージュしてなんら対応しようとしていない点についても着目していただきたいものです。

投稿者: 弁護士大窪和久

2020.10.30更新

以前のブログで紹介しました公設事務所所長弁護士意見交換会を本日実施しました。

第二東京弁護士会(公設事務所運営支援等委員会)では、毎年秋に、二弁出身の公設事務所長・スタッフ弁護士を対象として、意見交換会を開催しています。本年は本来は糸魚川で行なわれる予定でしたが、コロナ渦のためZOOMを利用したオンラインでの実施となりました。来年以降コロナ渦の状況が変わればまた現地での意見交換会になるかも知れませんが、場所を越えてオンラインでの議論が出来るのは弁護士過疎地域の弁護士にとっては大きな利点ではあります。

司会として議事を進行させていただきましたが、事件関係の悩みの他にも、事務所運営関係についての質問も多くありました。コロナ渦の状況故、リモートワークやオンライン相談についてどのように進めて行けば良いかという点も議論になりました。事件関係については守秘義務もありますので当然ここではかけませんが、事務所運営関係について一般的なものについては議論の積み残しの点も含めてこちらのブログで何回かにわけて書いていこうかと考えております。

 

投稿者: 弁護士大窪和久

2020.10.26更新

民事裁判において、新型コロナウイルスでWEB会議の実施件数が東京地裁で9月は400件となり、導入当初の10倍に急増しているとの報道がありました。

同報道では、「東京地裁はウェブ会議が急増した背景に新型コロナウイルスの感染拡大による関係者の意識や行動の変化があるとみて、さらに活用を進めていく方針です。東京地方裁判所の後藤健民事部所長代行者は「新型コロナウイルスの影響で、結果として弁護士の意識が変わり使ってもらえるようになったのではないか。より迅速で適正な裁判ができるようになることを期待している」と話しています」と東京地裁の見解が掲載されています。

しかし、「弁護士の意識が変わり使えてもらえるようになったから」WEB会議の実施件数が増えたというのは、事実とは乖離している見解のように思われます。

そもそも、期日をWEB会議にするか否かについては裁判所の裁量によるものであり弁護士が決められるものでは本来ありません。また、東京地裁がWEB会議を導入し始めたのは今年の2月以降(しかも、全ての部で導入したわけではありません)であり、コロナウイルス感染拡大以前にWEB会議が実施されたことはありませんでした。感染拡大以前は、弁護士が希望しても一切WEB会議は実施されなかったのです。

また、東京地裁は緊急事態宣言中は一部の期日(身柄の刑事事件、民事保全等)を除いては全ての期日を行なわず、WEB会議で期日を進めるということも行ないませんでした。さらに、緊急事態宣言が開けてからも今日に至るまで法廷を隔週開廷にしており期日がなかなか入らない状態が継続していますが、法廷での期日が入らない週に代替としてWEB会議を実施するということも行なっていません。

むしろWEB会議については東京地裁ではなく大阪地裁など他の裁判所での実施の方が先行しており、東京地裁は他の裁判所に比べても後れを取っております。WEB会議による進行を訴訟当事者から求められても、機材が期日に準備できない等の理由で実施が出来ないということもあります。

9月の400件という数字自体、東京地裁で行なわれている期日のほんの一部に過ぎません。東京地裁の消極的な運用方針により、新型コロナウイルス感染拡大の影響があってもなお「これしかWEB会議が行なわれていない」というのが現状認識として正しいように思われます。

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、東京地裁の裁判が大幅に遅延しているのは事実です。東京地裁におかれては、是非とも「より迅速で適正な裁判ができるよう」に従前の姿勢を改め積極的にWEB会議を実施して頂きたいと思います。

投稿者: 弁護士大窪和久

2020.10.22更新

他の裁判所では既に運用が行なわれていますが、東京地裁でも他の裁判所に遅れて、teamsによる訴訟手続を進めるようになってきました。

裁判官によれば、もともと進める予定ではあったが、新型コロナウイルス感染拡大が今も続いている状況に鑑み、前倒しで積極的に取り扱いを行なうようになったということのようです。接続テストを行ない、問題が無いことを確認した上で期日を行なうという流れです(これは他の裁判所も同じ)。

もっとも、弁護士によってはまだteamsは未経験であり、従前の電話会議や弁論準備の方が良いという意見を出す方もおられました。

確かにteamsは他のテレビ会議システム(ZOOMなど)と比べても初見ですと取っつきにくい面があるのは事実ですが、せっかく裁判所がITを使うようになってきたということに加え、新型コロナウイルス感染拡大防止のためには少しでも接触の機会を減らすことが重要ですので、弁護士側でも積極的にteamsを利用していくことが望ましいと思います。またteamsは単に電話会議のかわりになるだけではなく、書面共有など紙に頼らない手続進行もやろうと思えばできるシステムですので、弁護士側も活用方法について裁判所に提案していくのが良いのではないかとも考えます。

 

投稿者: 弁護士大窪和久

2020.10.20更新

典型的な弁護過誤の例として、民事訴訟における控訴期限の徒過があります。

民事訴訟において、第一審判決に不服があるときには控訴をすることが出来ますが、法律上期限が定められています。民事訴訟法285条では、「控訴は、判決書又は第254条第2項の調書の送達を受けた日から二週間の不変期間内に提起しなければならない」とされています。具体的には、控訴状は、判決正本を受領した日をいれないで、2週間の最終日までに提出する必要があります。これを徒過した場合には、控訴を行なうことが出来なくなります。なお、最終日が土日祝日や年末年始であればその翌日が最終日となりますが、最終日については書記官にあらかじめ確認しておくのが確実でしょう。

控訴状提出のミスでありがちなものは、控訴状の提出先が「判決をした第一審の裁判所」であるにも関わらず、控訴状を高裁に送ってしまうようなケースです。期限ギリギリで速達で郵送して安心したと思いきや、提出すべき期間を徒過してしまい取り返しのつかないことになるということもあります。単純なミスですが事務局に郵送を頼んでいたところそようなことになってしまった、というケースもあります。

弁護士が控訴期限を徒過した場合、弁護士としての基本的な業務を怠ったとして、懲戒請求されその結果懲戒例は多数有ります。

また、弁護士が控訴していれば勝訴していたとして訴訟での請求額相当の損害賠償を求めるということもあります。ただ、この場合請求額がそのまま損害になるかというとそういうわけでもなく、控訴審において勝訴の見込みがどの程度あったかが問題となります(過去の裁判例では、控訴したとしても勝訴の見込みがなかったとして弁護士に対する損害賠償を認めなかったものもあります(昭和60年1月23日横浜地判 判例時報1181号119頁等))。一方、訴訟まで行かずとも弁護士が加入している弁護士損害賠償保険により一定額の賠償がなされるというケースもあります。

本来有ってはならないことではありますが、万が一自分が依頼した弁護士が控訴期間徒過のような弁護過誤を行なった場合には、どのような対応が妥当かについて他の弁護士にセカンドオピニオンをとって判断するのも良いと思います。

 

投稿者: 弁護士大窪和久

2020.10.19更新

日本語の文書作成のアプリケーションとしては様々なものがありますが、一番多く使われているのはWORDだと思います。ただ当業界では、文書作成に一太郎を使っている人が比較的多く、人気も根強いものがあります。

一太郎が使われている理由として、WINDOWSリリース前からずっと使われてきたものであること、裁判所を含む官公庁で使われていた経緯があること、および文書作成の際レイアウトが崩れにくい等機能的に優れている点があること等が上げられます。

私自身も、司法修習時代には使用していたのですが、弁護士になってから事務所の先輩より、一太郎の作成するjtdファイルをみることができないので、一太郎を使うのをやめてWORDを使うようにしてもらいたいと命令されました。素直にその命令に従い、以後一太郎を使うことはなくなりました。

一太郎は、WINDOWS環境で一人で文書作成をしている分には良いアプリケーションではあるのですが、前記エピソードの通り、作成するファイルがWORDのファイル(doc,docx)と異なり、ファイルを共有するのに不適です。また、MAC環境やスマートフォン・タブレットでは一太郎が使えず、jtdファイルも参照できないという難点もあります。特にスマートフォン・タブレットで編集はおろか参照も出来ないというのは今となっては大きなデメリットであり、今後あえて使用する必要は無いと個人的には考えています。

弁護団等でも、過去にはjtdファイルが流されて参照できないということもありましたが、今はそのようなことはほとんど無くなりました。先輩の言うことに従い早くからWORDに切り替えておいて良かったと思います。

投稿者: 弁護士大窪和久

2020.10.02更新

ちょっと前から「ルーチンタイマー」というアプリを利用しています(リンク先はiOS)。

毎日決まった時間に決まったことを行なうことはあると思います。私の場合も朝起きてから必ず行なうことを決めていますし、昼になったら必ず行なうこと、仕事終わりになったら必ず行なうことを決めています。しかし、人間の意思は弱いもので、決めていたことと別のことが気になったり、やるのがおっくうになってしまったりして、ルーチンが時間通りに終わらないということはあるのでは無いかと思います。

ルーチンタイマーでは、やるべきルーチンワークについて秒単位であらかじめ設定しておくことができ、時間が来ると次の作業に写るよう声で呼びかけてくれます。ルーチンワークについて次に何をしなければならないかを教えてくれるのは案外楽で、アプリの声に従い抜け落ちなくルーチンをこなしていくことができます。日常のルーチン以外にも、例えば起案をする時間を決めておいて、○○分経過したら次の仕事に促す等の使い方もできます(起案に使える時間をあらかじめ決めておいてその時間内で終わらせるようにするというのは効果的です)。

アプリに頼らなくても時間管理ができる意思の強い人には必要ないかも知れませんが、そうではない私のような方には強くお勧めできますのでここで紹介させていただきました。

投稿者: 弁護士大窪和久

2020.10.01更新

第二東京弁護士会(公設事務所運営支援等委員会)では、毎年秋に、二弁出身の公設事務所長・スタッフ弁護士を対象として、意見交換会を開催しています。この意見交換会では、毎回各地の弁護士が実務上抱える悩みについて公設事務所運営支援等委員会メンバー(公設事務所・スタッフOBも含む)も交えて意見を交換し、以後の業務に活かしています。

例年ですと、地方でこの意見交換会は開催されますが、今年はコロナウイルスの感染拡大のため、10月30日にZoomを利用したオンライン開催という形をとることとなりました。直接顔を合わせることができないのは大変残念ですが、やむを得ないことと思います。

昨年に引き続き私が司会ということになりましたので、参加予定されている方(今回はオンラインですので参加はし易いと思います)は二弁担当者あるいは私に直接質問事項を出して頂ければ、当日議論を広げていけるよう準備致しますのでよろしくお願い致します。また、参加されない方でも司法過疎地での弁護士業務に関する意見等いただければ、参加者の方にフィードバックしていきたいと思いますのでよろしくお願い致します。

投稿者: 弁護士大窪和久

2020.09.30更新

サービス開始当初から、LEGAL LIBRARYを利用しています。

一言で言うと法律専門書の電子書籍をサブスクリプションで利用できるというものですが、今となっては業務に欠かせない戦力になっています。私が感じる利点は次の3つです。

1 場所を取らない

法律事務所での悩みの一つは書籍が大きなスペースを取ってしまうという点です。特に東京では地価も高く、書籍を置くことへのコストが高いのがネックになっています。

しかしながら、本サービスでは電子書籍故スペースの問題は全くありません。PCだけがあれば膨大な書籍の情報にアクセスできます。個人的にはここに掲載されている書籍(注釈民法等)は手放してしまっても良いかと考えています。

2 検索機能が充実している

紙の書籍では検索は当然できませんが、電子書籍ならそれが可能です。例えば起案で必要になる事項が出てきた場合、それを横断的に検索することにより、スピーディーに調べることができます。

LEGAL LIBRARYでは、キーワードだけでなく、タイトル、著者出典等の詳細検索をすることができ、目的の情報にたどり着くのは楽です。

3 書式が使える

LEGAL LIBRARYでは最近電子書籍に掲載されている書式をデータでダウンロードすることができるようになりました。これにより書式の活用がしやすくなったのは大きな利点であり、紙の書籍よりも優位です。

このような法律専門書の電子書籍サブスクリプションサービスについては、他国では普通に使われているものではありますが、日本でも同種のサービスが使えるようになったのは本当に素晴らしいです。個人的には、スマートフォンでのアプリに対応するであるとか、より書籍の量を増やす(特に刑事実務については充実して欲しい)であるとかの要望がありますが、現状でも便利ですので引き続き使っていこうと思います。

投稿者: 弁護士大窪和久

2020.09.29更新

本日、第二東京弁護士会のオンライン研修「テレワーク時代の わかる!できる!楽しい!? 弁護士情報セキュリティガイドライン簡単解説」を受講しました。動画については暫くリンク先で公開されているとのことです。

内容中深く同意したのは、弁護団でメーリングリストを使うのをやめようという提言でした。

メーリングリストには、後から入ってきた人が状況を理解できない、メッセージの先後関係が分かりにくいという欠点があるばかりではなく、暗号化されておらずセキュリティの面でも不安がある等の欠点があるというのがその理由です。また、現在ではChatwork等のチャットツールの方が明らかに優位性があり、そうである以上メーリングリストを使い続ける理由もありません。

各弁護団で長年に渡りメーリングリストが使われてきましたが、かつてメーリングリストの内容が第三者にも公開される設定になっており問題になったケースもあります。ファイル管理の面でもメーリングリストは不適(クラウドストレージを使った方が遙かに便利)ですので、自分が関わる弁護団だけでもメーリングリストの使用は今後やめていきたいと思います。

 

投稿者: 弁護士大窪和久

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弁護士大窪のコラム 桜丘法律事務所

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