2021年2月26日に、プロバイダ責任制限法改正案が閣議決定され、国会に提出されました。法案の内容も総務省のホームページで公開されています。
プロバイダ責任制限法の改正については、以前も当ブログでとりあげた通り、発信者情報開示の在り方に関する研究会により検討が行われてきました。研究会の出した最終とりまとめ骨子では、発信者情報の開示対象の拡大(電話番号およびログイン時情報)、新たな裁判手続の創設と通信ログの保全、裁判外開示の促進が主な内容になっており、改正案でもそれに沿った内容の条文改正が予定されています。
また、改正案は、管轄について詳細な規定を定めており、新たな裁判手続(発信者情報開示命令事件)において、相手方が海外法人であったとしても、申立内容が法人の日本における業務に関するものである場合であれば日本の裁判所の管轄が認められることが明文で定められました。また、プロバイダが地方にある場合でも、東京地方裁判所あるいは大阪地方裁判所に管轄を認めており、今後東京地裁及び大阪地裁で本件事件を集中的に取り扱うことを想定していると思われます。
今国会で改正案が成立した場合、2022年までの間に施行されることになります。また、法改正にともない、総務省では相談対応の充実に向けた連携と体制整備の方もおこなうということです。詳細はこちらの「政策パッケージの進捗状況について」に紹介されています。
今回の改正案では、開示までの手続の簡略化を図った一方、権利開示の要件(権利侵害が明らかであるとき)の要件は緩和しませんでしたので、法改正がなされたとしても権利侵害の明白性についてプロバイダ側が厳しく争ってくることには違いはありません。被害者としては十分な主張立証を行う必要があり、開示手続に関して弁護士に依頼する必要性が減じるということもないだろうと思われます。