以前のコラムでも触れましたが、令和七年四月一日に、いわゆるプロバイダ責任制限法が改正され、「情報流通プラットフォーム対処法」(正式には「特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律」といいます)として施行されました。施行から一年余りが経ちましたので、あらためて、この法律によってインターネット上の投稿の削除依頼がどう変わったのかを整理しておきたいと思います。
この法律の大きな特徴は、利用者の多い大規模なプラットフォーム事業者に対して、削除への対応を分かりやすく、かつ透明にすることを義務づけた点にあります。総務省は、令和七年四月三十日に、Google、LINEヤフー、Meta、TikTok、Xの五社を「大規模特定電気通信役務提供者」として指定しました。日常的に使われている主要なSNSや検索サービスの多くが、この規律の対象に含まれたことになります。
指定を受けた事業者は、おおむね次のような対応を求められます。まず、権利侵害を受けた人が削除を申し出るための窓口と方法を整備し、公表することです。次に、削除の申出を受けた場合には、その対応の結果を一定の期間内に申出をした人へ通知することです。さらに、どのような場合に削除を行なうのかという基準をあらかじめ定めて公表し、削除の運用状況を定期的に公表することも求められます。これらによって、これまで「申し出ても返事が来ない」「なぜ削除されないのか分からない」といった不透明さが、一定程度改善されることが期待されています。
もっとも、実務に携わる立場から申し上げますと、この改正で全てが解決するわけではない点にも注意が必要です。第一に、こうした義務が課されるのは指定された大規模な事業者に限られ、小規模な掲示板やサイトはこれまでと同じ枠組みで対応することになります。第二に、削除の申出に対して「通知が来る」ことと、実際に「削除される」こととは別の問題です。削除するかどうかは、最終的には事業者が権利侵害の有無を判断することになりますので、申し出れば必ず消えるというものではありません。そして第三に、この法律はあくまで投稿の削除に関する仕組みであり、誰が投稿したのかを特定する発信者情報開示の手続とは別のものです。投稿の削除と投稿者の特定とは、目的も手続も異なりますので、混同しないことが大切です。
したがって、窓口が整備され、以前よりは削除の申出がしやすくなったとはいえ、どの投稿がどの権利の侵害にあたるのかを的確に主張し、その裏づけとなる資料を揃えることの重要性は、これまでと変わりません。ご自身で削除の申出をしてみて対応が得られない場合や、投稿者の特定まで含めて検討したい場合には、お早めに弁護士にご相談いただければと思います。








