弁護士大窪のコラム

2020.11.18更新

先日、櫻井光政弁護士(私の所属する桜丘法律事務所所長)が原告として、東京地検特捜部が業務上横領容疑で捜査対象とした男性を任意で取り調べた際、検事から接見を妨害されたことについて国賠を求めた事件の判決がありました。判決では弁護権の違法な侵害を認め、10万円の慰謝料の支払を命じています。

事実関係については、現在進行中の事件に関することでもありますので、こちらの記事で書いてあるような原告本人が記者会見で述べた内容以上のことを現時点でここで開示する予定はありません(なお、櫻井、私を含む当事務所の弁護士が弁護団をつくっています)。

ただ、本件は、任意取調中の検察の接見妨害について接見妨害を認めた先例として価値がある判決だと考えています。曲がりなりにも特捜たる存在がこのような違法な接見妨害を行なってまで被疑者の調書を取っていることが、まさにこの国の人質司法の病理を体現しているものと言わざるを得ません。

(2020.11.19 追記)

事務所のブログで櫻井弁護士が記事を書いておりますのでご参照ください。

投稿者: 弁護士大窪和久

2020.11.11更新

刑事事件で逮捕勾留されてしまい、長期間身柄が拘束されることのつらさは体験した人しか分からないだろうと思います。勾留をはじめてなされた人は例外なく、一秒でも早く外に出たいという希望を持ちます。

勾留に対してなしうる手続はいくつかありますが、今回は勾留理由開示について説明します。

憲法及び刑事訴訟法は、被告人について、裁判所に勾留理由の開示を請求することを認めています(憲法34条後段、刑事訴訟法82条1項)し、被疑者については勾留状を発布した裁判官に対して勾留理由の開示の請求をすることが認められています(刑事訴訟法207条による82条の準用)。また被疑者・被告人本人だけではなく、弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族、兄弟姉妹その他利害関係人も請求することが出来ます(刑事訴訟法82条2項)。

勾留理由開示があった場合には、裁判所は5日以内に開示期日を指定した上(刑事訴訟規則82条1項、同84条)、公開法廷で勾留の理由を答える必要があります(憲法34条後段、刑事訴訟法83条1項)。

勾留理由開示については、裁判官が抽象的なことを話すに留まり、形骸化されているとも言われています。ただ、私の経験上は事前の求釈明を具体的に行なえばそれに応じてある程度の回答が裁判官より得られることもあり、勾留について問題がある場合には積極的に行なうべき手続と思います。また、副次的な効果として、公開法廷で行なわれる関係上接見禁止がついている被疑者被告人であっても、傍聴席の家族に顔を見せることができるという面もあります。

他方、公開法廷になるべく出たくは無いという意向を被疑者被告人が持つ場合には手続を取りにくいという面もありますので、被疑者被告人の意向を尊重した上手続をなすか否か判断することは当然必要となります。

 

投稿者: 弁護士大窪和久

2020.10.28更新

逮捕されると身柄が拘束されて、その後取調が行なわれます。身柄が拘束される中で取調を受けた結果、法律的な知識が不十分なままで供述を行い、事実と異なる供述調書が作られてしまうことはあります。逮捕された場合にできる限り早期に弁護士に相談して法的なアドバイスを受けることが必要です。

この点、逮捕後さらに勾留された場合、資力の無いなどの理由で弁護人を自ら選任できない時には国の費用で弁護人を選任する国選弁護人制度というものがあります。勾留された後に国選弁護人の選任を希望し、要件を満たす場合には国選弁護人が選任され、法的なアドバイスを受けることができます。

もっとも被疑者段階で国選弁護人を付けることができるのは勾留された後であり、逮捕されてから勾留されるまでの間(最長72時間)は、国選弁護人によるアドバイスを受けることが出来ません。そのためこの期間に意に沿わない供述をとられてしまうおそれがあります。私選弁護人を最初から選任できるのであればこれを防ぐことができますが、私選弁護人を選任するだけの資力がない場合にはこれもできません。

この制度の不備を補うため、弁護士会の方で当番弁護士制度(当番として待機している弁護士が接見を行なう。初回接見は無料です)を作り、逮捕された本人や家族の弁護士会に対する依頼に応じて弁護士の派遣を行なっています。派遣される弁護士を選ぶことはできません。なお、引き続き弁護を依頼する場合には原則として自費で私選弁護を依頼することになりますが、弁護士会の刑事被疑者弁護援助制度により弁護士費用の援助が受けられる場合はあります。

上記当番弁護士制度は、国選弁護制度の欠陥(以前は被疑者段階での国選弁護制度はなく、被告人段階ではじめて国選弁護をつけられました)を補うため長年弁護士が自腹を切りかつ労力を払って継続しているものであり、逮捕段階で被疑者に国選弁護人が付けられるようになるのが本来は望ましいことは言うまでもありません。

 

投稿者: 弁護士大窪和久

2020.10.16更新

刑事裁判の場合、弁護人は検察が裁判所に提出予定の証拠について確認する必要があります。ただ、検察が弁護人に証拠のコピーを送ってくれるわけではありません(民事訴訟の場合、相手方に対し証拠の写しを送る必要がありますが、刑事裁判の場合そのようにルール設計がされているわけではありません)。弁護人が検察庁に直接いって証拠を謄写するのが原則となります。

もっとも、東京地検の場合、謄写センターで有料にてコピーをとってもらうことが可能です。また弁護士会の協同組合で謄写を受け付けてくれることもあります。ただ費用としては一枚数十円かかりますし、地方によってはそれ以上の負担が生じることもあります。

そのような費用的な問題で、私がかつて紋別の公設事務所にいた頃は、たまに実費を支払うので謄写をかわりにしてもらいたいという話を遠隔地の弁護士から求められたことはありました。断ると「弁護士会の金で事務所をおいているのにできないのはどういうことか」と憤られる方もいないわけではありませんでした。

記録謄写を公設事務所の弁護士に求めないようにという申し出等を弁護士会の方でしていただいたこともあり、次第にそのようなこともなくなりましたが、遠隔地の記録謄写が刑事弁護を行なう上でネックになっている現実そのものは今も変わっておりません。

この記録謄写に関しては、そもそも電子データによる謄写物の交付がなされれれば上記のような問題は一気に解決してしまうはずです。しかしながら、検察側はそのようなことは一切考えておりません。また東京地検謄写センターもまたそのようなことは行なわない旨明言しています(リンク先の高野先生のブログ参照)。民事裁判についてはIT化が進む中、刑事裁判だけが旧態依然とした紙中心の裁判から変化しようとしません。これは法改正により是正しなければいけない問題だと思います。

投稿者: 弁護士大窪和久

2020.10.04更新

私の所属する桜丘法律事務所の刑事事件の初回相談・接見費用(弁護人契約前)については下記の通りとなっております(2020年10月現在)。

○相談料 

・現に身体拘束されている被疑者のご親族あるいはこれに準ずる方からの初回相談 一時間まで無料 その後30分5000円(税抜)

・その他初回相談 30分5000円(税抜)

○接見費用

・2万円(税抜・交通費別)※接見後弁護人の委任契約に至った場合、着手金に充当します

刑事事件に関する費用詳細はこちらを参照してください。

投稿者: 弁護士大窪和久

2020.09.28更新

日経新聞で、「刑事裁判、IT化に遅れ 遠隔制度の活用は限定的」という記事が掲載されています。

同記事によれば、

「新型コロナウイルスの影響の下、日本の刑事裁判でIT活用の遅れが目立っている。海外ではオンライン化で感染を防ぎつつ審理の停滞を防ぐ工夫が進む」とありますが、日本では刑事裁判においてITはほぼ活用されていないといって良いでしょう。

民事裁判においては、内閣官房がIT化推進の方針を立てたことにより、少しずつではありますがIT化が進みつつありますが、刑事裁判は取り残されたままです。

また、新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言が終わったあとも、刑事裁判所の法廷は隔週開廷で三密を避ける方針をとっておりますし、検察についても隔週出勤等により捜査公判共に停滞しているというのが現状です。それにも関わらず、手つかずのIT化にも全く手を付けようとはしていません。このような刑事裁判の停滞により、裁判が長期化しており特に身柄事件については被告人が未決のまま長期間の勾留を強いられるなど、従前の人質司法の弊害が更に際立つ形となっております。

このまま他国に比べて貧弱な刑事裁判を続けるのは明らかに誰の得にもなっていないので、コロナ渦での他国の実践を少しでも学んでいくべきとは思いますが、裁判所や法務省のこれまでの動きを見る限り悲観的にならざるを得ません。

投稿者: 弁護士大窪和久

2020.09.24更新

以前当ブログで、勾留請求却下率について、東京地裁では近年増加しており、検察官が勾留請求を行う場合でも認められないケースが増えてきたことを指摘しました。

http://www.okubo-lawyer.jp/blog/2017/09/post-6-511055.html

ただ、昨年末以来東京地裁では、身柄拘束について以前より慎重になる傾向があり、例えば保釈などでも保釈金の金額を従前より高額にしてきています。勾留請求却下についても、今後揺れ戻しになり却下率が減少するかもしれません。

また、検察官は従前通り、刑事訴訟法60条1項各号所定の勾留の各理由が乏しいにもかかわらず勾留請求することには変わりありません。

このような状況では、弁護人による活動により、勾留の理由がないことについての主張や疎明をすることが身柄解放のためには今まで以上に重要になっていると言えます。逮捕後の身柄拘束の長期化は、状況によっては犯罪による刑罰(罰金や執行猶予付き懲役など)より遙かに社会的なダメージが大きくなるものでありますので、逮捕後においてはいち早く弁護人についてもらい身柄解放に向けて動いてもらうことが必要です。

投稿者: 弁護士大窪和久

2020.09.18更新

NHKのニュースで、「入れ墨のタトゥーの彫り師をしている男性が医師の免許がないのに客にタトゥーを入れたとして医師法違反の罪に問われた裁判で、最高裁判所は検察の上告を退ける決定をし、無罪が確定することになりました」との報道がありました。

ツイッターでも「あの最高裁がここまで踏み込んだ意見を出すのが驚き。これは弁護団の並々ならぬ尽力による成果なのだと思います」と書かせていただいたとおり、画期的な判断であると考えます。裁判長の補足意見で、「タトゥーの施術による保健衛生上の危険を防ぐため法律の規制を加えるのであれば、新たな立法によって行うべきだ」との立法提言がなされていますが、刑事訴訟の最高裁判決がここまで踏み込んだ立法提言を行うことはなかなかありません。

いずれ最高裁のホームページ等で判決文が公開される事件だと思いますので、公開後当ブログに改めて紹介させていただこうと思います。

投稿者: 弁護士大窪和久

2020.09.11更新

これまで既に様々な刑事弁護人が指摘していることではありますが、改めて、「逮捕されたときにはまず黙秘して弁護士を呼ぶ」ことを強く推奨いたします。

弁護士が会いに行く前に取調で警察官に事件のことを話し、その後警察官に供述調書を作られることは良くありますが、あとになってその供述調書の内容をみると、自分が思ってもいない内容に仕上がっていることが良くあります。あとの裁判でその内容を訂正しようとしても、裁判官は裁判所で話した内容よりも初期の供述内容の方が信用できるとして聞き入れてくれなかったり、話している内容が二転三転しているとして言い分を否定しています。

憲法で黙秘権が保障されていることは皆さんご存じであると思いますが、実際にいざ警察官を目の前にして個室で話をする状況では黙秘権を行使できず、警察官に迎合して話をしてしまうということになってしまうことが多いです。

事件について実際に自分がやっている場合でも、そうでない場合でも、まず弁護士に接見に来てもらい、相談することが重要です。事件についてやっていない場合であれば黙秘権を引き続き行使して警察に情報を与えないという方針をとるということもできますし、事件についてやっている場合でも、どのように話せば事実を伝えられるか考えることができます。

ですので、逮捕された時にはまず「弁護士が来るまでなにも話しません」といい、弁護士を呼びましょう。警察の方が「弁護士など役に立たない」「弁護士は信用できない」「弁護士は金のことばかり考えているのであなたのためにならない」などいうかも知れませんが、気にせず呼びましょう。知り合いに弁護士がいない場合でも、弁護士会の当番弁護士を呼んで欲しいと警察官に言えば、弁護士が接見に来てくれます。弁護士に話を聞いてもらい、それから落ち着いて今後のことを考えましょう。

投稿者: 弁護士大窪和久

2020.09.05更新

朝日新聞によれば、インターネットサイト上のやらせ投稿(依頼により低評価のレビューを付ける投稿)を行なった者について、刑事罰が出されたとの報道がなされたので事例として紹介します。

アマゾンで「星一つ」やらせ投稿 依頼者に異例の刑事罰

投稿によれば、ライバル会社の商品に低評価のレビューを書かせた(対価を支払いやらせ投稿を行なわせた)会社役員に対して、信用毀損罪で罰金20万円の略式命令が出されたとのことです。

サイト上の口コミ・レビューについて低評価を受けているという相談は良くありますが、多くの場合で問題となっているのは、匿名での口コミ・レビューを誰が行なったか特定するプロセスです。特定のための法的手続にもコストがかかり、かつサイト側も発信者情報開示の要件についてはきちんと争ってきますのでハードルは低くありません。この点本件でも、投稿者を「苦労の末特定し」たということで、方法については明らかではありませんがなんとか特定にたどり着き被害届を出すまでに至ったようです。

 

投稿者: 弁護士大窪和久

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