総務省は、現在の発信者情報開示制度の改善に向けて、発信者情報開示の在り方に関する研究会を設置してこれまで9回の会合を行なってきました。11月12日に10回目の会合が行なわれています。
そして、同研究会により最終とりまとめ骨子が出されており、制度変更の方向性が明らかになったと言えます。
最終とりまとめ骨子では、発信者情報の開示対象の拡大(電話番号およびログイン時情報)、新たな裁判手続の創設と通信ログの保全、裁判外開示の促進というものが柱となっています。この中でもっとも影響が大きいのは、新たな裁判手続の創設でしょう。
現状では、発信者を特定するためには、SNS等の運営主体のプロバイダにまず仮処分を行ない、接続元のIPアドレスの開示を受けた後で改めて接続に使われたプロバイダの運営会社に裁判を行なう必要がありますが、二回の手続を要するのが負担が大きいとして、問題になっていました。最終とりまとめ骨子では、従前の手続に「加えて」新しく手続を設けて、この難点を解消しようとしています。また、発信者情報開示の難点として、プロバイダがログを短時間で消してしまうという点がありますが、この点をクリアするためにログを迅速に保全する手続も上記開示の手続とまとめて行なうことができるようにもするようです。
現状の開示手続は被害者側の負担が大きく、負担のために使われないということも多いのですが、上記のような方向性での改善があれば現在より多少は開示手続も使われるのでは無いかと思います。もっとも、研究会での議論では、表現の自由が関わる以上開示の是非については訴訟手続でしっかりと審理する必要があるともされており、その点では弁護士が関与しなければ手続を進めていくのは難しいのは従前と変わりないのではないかと思われます。