弁護士大窪のコラム

2020.10.30更新

以前のブログで紹介しました公設事務所所長弁護士意見交換会を本日実施しました。

第二東京弁護士会(公設事務所運営支援等委員会)では、毎年秋に、二弁出身の公設事務所長・スタッフ弁護士を対象として、意見交換会を開催しています。本年は本来は糸魚川で行なわれる予定でしたが、コロナ渦のためZOOMを利用したオンラインでの実施となりました。来年以降コロナ渦の状況が変わればまた現地での意見交換会になるかも知れませんが、場所を越えてオンラインでの議論が出来るのは弁護士過疎地域の弁護士にとっては大きな利点ではあります。

司会として議事を進行させていただきましたが、事件関係の悩みの他にも、事務所運営関係についての質問も多くありました。コロナ渦の状況故、リモートワークやオンライン相談についてどのように進めて行けば良いかという点も議論になりました。事件関係については守秘義務もありますので当然ここではかけませんが、事務所運営関係について一般的なものについては議論の積み残しの点も含めてこちらのブログで何回かにわけて書いていこうかと考えております。

 

投稿者: 弁護士大窪和久

2020.10.29更新

cnet Japanで、「マイクロソフト「Teams」のデイリーアクティブユーザーが1億1500万人に」という記事が掲載されました。

同記事によれば、「Microsoft Teams」に関する最新の統計を発表した。最高経営責任者(CEO)のSatya Nadella氏によれば、Teamsの現在のデイリーアクティブユーザーは1億1500万人を超えているという」とのことです。今年3月の時点では4400万人ということだったので、この短期間で3倍近くにまでユーザーが増えたことになります。

コロナ渦で通常の会議からWEB会議に移行したのは日本だけではなく世界的な傾向ですが、このような増え方をみると、改めてコロナ渦が世界に及ぼした影響の大きさという物を感じずにはいられません。

先のブログにもあるとおり日本でも裁判所を含めTeamsがWEB会議用のツールとして広くビジネスで使われるようになりました。ZOOMのような手軽さはありませんが、その分セキュリティ面では優れているツールであり、今後も広く使われていくのではないかと思います。マイクロソフトはTeamsだけではなくOffice365といったサブスクリプションサービスでも売り上げを伸ばしており、コロナ渦は強い追い風になっています。

 

投稿者: 弁護士大窪和久

2020.10.28更新

逮捕されると身柄が拘束されて、その後取調が行なわれます。身柄が拘束される中で取調を受けた結果、法律的な知識が不十分なままで供述を行い、事実と異なる供述調書が作られてしまうことはあります。逮捕された場合にできる限り早期に弁護士に相談して法的なアドバイスを受けることが必要です。

この点、逮捕後さらに勾留された場合、資力の無いなどの理由で弁護人を自ら選任できない時には国の費用で弁護人を選任する国選弁護人制度というものがあります。勾留された後に国選弁護人の選任を希望し、要件を満たす場合には国選弁護人が選任され、法的なアドバイスを受けることができます。

もっとも被疑者段階で国選弁護人を付けることができるのは勾留された後であり、逮捕されてから勾留されるまでの間(最長72時間)は、国選弁護人によるアドバイスを受けることが出来ません。そのためこの期間に意に沿わない供述をとられてしまうおそれがあります。私選弁護人を最初から選任できるのであればこれを防ぐことができますが、私選弁護人を選任するだけの資力がない場合にはこれもできません。

この制度の不備を補うため、弁護士会の方で当番弁護士制度(当番として待機している弁護士が接見を行なう。初回接見は無料です)を作り、逮捕された本人や家族の弁護士会に対する依頼に応じて弁護士の派遣を行なっています。派遣される弁護士を選ぶことはできません。なお、引き続き弁護を依頼する場合には原則として自費で私選弁護を依頼することになりますが、弁護士会の刑事被疑者弁護援助制度により弁護士費用の援助が受けられる場合はあります。

上記当番弁護士制度は、国選弁護制度の欠陥(以前は被疑者段階での国選弁護制度はなく、被告人段階ではじめて国選弁護をつけられました)を補うため長年弁護士が自腹を切りかつ労力を払って継続しているものであり、逮捕段階で被疑者に国選弁護人が付けられるようになるのが本来は望ましいことは言うまでもありません。

 

投稿者: 弁護士大窪和久

2020.10.27更新

総理大臣がかわってから後、携帯電話会社が料金の値下げを行なうというニュースが良く出されています。本日も「KDDIが新料金プラン導入へ 20GB月4千円以下に」という内容が報道されています。

ただこの報道をよく読むと、サブブランドUQモバイルでこれまで出していない20Gのプランを出すという内容であり、通信量あたりの料金を下げるという話ではないようです。

これまでも総務省が携帯電話の値下げ圧力を携帯電話会社にかけていますが、そのたび携帯電話会社はプランや割引制度を変更するものの、通信量あたりの料金を下げるということはしてこなかったように思われます。キャリアは三社独占で競争の働くところではないので、今後もこうした状況は変わることはなく、携帯電話料金の値下げは期待できないと考えます。

携帯電話料金は高止まりしているだけではなく、複雑なプランや割引制度が乱立して、割引前の値段がわかりにくく、結果消費者が不意打ち的な損害を受けると言うこともあります。この問題も長年に渡り指摘されていますが全く改善していません。こうした状況も、キャリアが三社独占で似たようなサービスを提供し続ける中では変わらないのではないかと思います。

投稿者: 弁護士大窪和久

2020.10.26更新

民事裁判において、新型コロナウイルスでWEB会議の実施件数が東京地裁で9月は400件となり、導入当初の10倍に急増しているとの報道がありました。

同報道では、「東京地裁はウェブ会議が急増した背景に新型コロナウイルスの感染拡大による関係者の意識や行動の変化があるとみて、さらに活用を進めていく方針です。東京地方裁判所の後藤健民事部所長代行者は「新型コロナウイルスの影響で、結果として弁護士の意識が変わり使ってもらえるようになったのではないか。より迅速で適正な裁判ができるようになることを期待している」と話しています」と東京地裁の見解が掲載されています。

しかし、「弁護士の意識が変わり使えてもらえるようになったから」WEB会議の実施件数が増えたというのは、事実とは乖離している見解のように思われます。

そもそも、期日をWEB会議にするか否かについては裁判所の裁量によるものであり弁護士が決められるものでは本来ありません。また、東京地裁がWEB会議を導入し始めたのは今年の2月以降(しかも、全ての部で導入したわけではありません)であり、コロナウイルス感染拡大以前にWEB会議が実施されたことはありませんでした。感染拡大以前は、弁護士が希望しても一切WEB会議は実施されなかったのです。

また、東京地裁は緊急事態宣言中は一部の期日(身柄の刑事事件、民事保全等)を除いては全ての期日を行なわず、WEB会議で期日を進めるということも行ないませんでした。さらに、緊急事態宣言が開けてからも今日に至るまで法廷を隔週開廷にしており期日がなかなか入らない状態が継続していますが、法廷での期日が入らない週に代替としてWEB会議を実施するということも行なっていません。

むしろWEB会議については東京地裁ではなく大阪地裁など他の裁判所での実施の方が先行しており、東京地裁は他の裁判所に比べても後れを取っております。WEB会議による進行を訴訟当事者から求められても、機材が期日に準備できない等の理由で実施が出来ないということもあります。

9月の400件という数字自体、東京地裁で行なわれている期日のほんの一部に過ぎません。東京地裁の消極的な運用方針により、新型コロナウイルス感染拡大の影響があってもなお「これしかWEB会議が行なわれていない」というのが現状認識として正しいように思われます。

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、東京地裁の裁判が大幅に遅延しているのは事実です。東京地裁におかれては、是非とも「より迅速で適正な裁判ができるよう」に従前の姿勢を改め積極的にWEB会議を実施して頂きたいと思います。

投稿者: 弁護士大窪和久

2020.10.22更新

他の裁判所では既に運用が行なわれていますが、東京地裁でも他の裁判所に遅れて、teamsによる訴訟手続を進めるようになってきました。

裁判官によれば、もともと進める予定ではあったが、新型コロナウイルス感染拡大が今も続いている状況に鑑み、前倒しで積極的に取り扱いを行なうようになったということのようです。接続テストを行ない、問題が無いことを確認した上で期日を行なうという流れです(これは他の裁判所も同じ)。

もっとも、弁護士によってはまだteamsは未経験であり、従前の電話会議や弁論準備の方が良いという意見を出す方もおられました。

確かにteamsは他のテレビ会議システム(ZOOMなど)と比べても初見ですと取っつきにくい面があるのは事実ですが、せっかく裁判所がITを使うようになってきたということに加え、新型コロナウイルス感染拡大防止のためには少しでも接触の機会を減らすことが重要ですので、弁護士側でも積極的にteamsを利用していくことが望ましいと思います。またteamsは単に電話会議のかわりになるだけではなく、書面共有など紙に頼らない手続進行もやろうと思えばできるシステムですので、弁護士側も活用方法について裁判所に提案していくのが良いのではないかとも考えます。

 

投稿者: 弁護士大窪和久

2020.10.21更新

毎日新聞で、「借金を返済せず、強制執行に向けた財産開示手続きで裁判所から命じられた出頭に正当な理由なく応じなかったとして、神奈川県警は20日、開成町の男性介護士(34)を民事執行法違反の疑いで書類送検した。県警によると、財産開示手続きの違反に刑事罰を科した改正法が4月に施行されて全国初の検挙」という内容の報道がありました。

今年4月の法改正により、財産開示手続については見直しがなされています。法改正前も、財産開示手続が行なわれた場合において債務者が正当な理由なく出頭しない場合などには30万円の科料が課せられることになってはいましたが、刑事罰ではないため、債務者が債務を払うより科料を払う方が安く済み財産開示手続に協力しようとはしないのではないかと実効性は疑問視されていました。そのためもあり財産開示手続はお世辞にもあまり使われている制度ではありません。

法改正により、6か月以下の懲役又は50万円以下の罰金という懲役刑を含む刑事罰が加わっており、従前よりは財産開示手続の実効性はあがったのではないかとされていますが、本件が初めての検挙例となるようです。裁判所が告発したのではなく債権者が告発したということですので、今後も裁判所が告発することはあまり期待できないかも知れません。今後の運用についてどうなるかはまだ未知数ですが、このような検挙例が増えていけば財産開示手続を行なうことで結果的に回収に繋がることはありそうです。

投稿者: 弁護士大窪和久

2020.10.20更新

典型的な弁護過誤の例として、民事訴訟における控訴期限の徒過があります。

民事訴訟において、第一審判決に不服があるときには控訴をすることが出来ますが、法律上期限が定められています。民事訴訟法285条では、「控訴は、判決書又は第254条第2項の調書の送達を受けた日から二週間の不変期間内に提起しなければならない」とされています。具体的には、控訴状は、判決正本を受領した日をいれないで、2週間の最終日までに提出する必要があります。これを徒過した場合には、控訴を行なうことが出来なくなります。なお、最終日が土日祝日や年末年始であればその翌日が最終日となりますが、最終日については書記官にあらかじめ確認しておくのが確実でしょう。

控訴状提出のミスでありがちなものは、控訴状の提出先が「判決をした第一審の裁判所」であるにも関わらず、控訴状を高裁に送ってしまうようなケースです。期限ギリギリで速達で郵送して安心したと思いきや、提出すべき期間を徒過してしまい取り返しのつかないことになるということもあります。単純なミスですが事務局に郵送を頼んでいたところそようなことになってしまった、というケースもあります。

弁護士が控訴期限を徒過した場合、弁護士としての基本的な業務を怠ったとして、懲戒請求されその結果懲戒例は多数有ります。

また、弁護士が控訴していれば勝訴していたとして訴訟での請求額相当の損害賠償を求めるということもあります。ただ、この場合請求額がそのまま損害になるかというとそういうわけでもなく、控訴審において勝訴の見込みがどの程度あったかが問題となります(過去の裁判例では、控訴したとしても勝訴の見込みがなかったとして弁護士に対する損害賠償を認めなかったものもあります(昭和60年1月23日横浜地判 判例時報1181号119頁等))。一方、訴訟まで行かずとも弁護士が加入している弁護士損害賠償保険により一定額の賠償がなされるというケースもあります。

本来有ってはならないことではありますが、万が一自分が依頼した弁護士が控訴期間徒過のような弁護過誤を行なった場合には、どのような対応が妥当かについて他の弁護士にセカンドオピニオンをとって判断するのも良いと思います。

 

投稿者: 弁護士大窪和久

2020.10.19更新

日本語の文書作成のアプリケーションとしては様々なものがありますが、一番多く使われているのはWORDだと思います。ただ当業界では、文書作成に一太郎を使っている人が比較的多く、人気も根強いものがあります。

一太郎が使われている理由として、WINDOWSリリース前からずっと使われてきたものであること、裁判所を含む官公庁で使われていた経緯があること、および文書作成の際レイアウトが崩れにくい等機能的に優れている点があること等が上げられます。

私自身も、司法修習時代には使用していたのですが、弁護士になってから事務所の先輩より、一太郎の作成するjtdファイルをみることができないので、一太郎を使うのをやめてWORDを使うようにしてもらいたいと命令されました。素直にその命令に従い、以後一太郎を使うことはなくなりました。

一太郎は、WINDOWS環境で一人で文書作成をしている分には良いアプリケーションではあるのですが、前記エピソードの通り、作成するファイルがWORDのファイル(doc,docx)と異なり、ファイルを共有するのに不適です。また、MAC環境やスマートフォン・タブレットでは一太郎が使えず、jtdファイルも参照できないという難点もあります。特にスマートフォン・タブレットで編集はおろか参照も出来ないというのは今となっては大きなデメリットであり、今後あえて使用する必要は無いと個人的には考えています。

弁護団等でも、過去にはjtdファイルが流されて参照できないということもありましたが、今はそのようなことはほとんど無くなりました。先輩の言うことに従い早くからWORDに切り替えておいて良かったと思います。

投稿者: 弁護士大窪和久

2020.10.16更新

刑事裁判の場合、弁護人は検察が裁判所に提出予定の証拠について確認する必要があります。ただ、検察が弁護人に証拠のコピーを送ってくれるわけではありません(民事訴訟の場合、相手方に対し証拠の写しを送る必要がありますが、刑事裁判の場合そのようにルール設計がされているわけではありません)。弁護人が検察庁に直接いって証拠を謄写するのが原則となります。

もっとも、東京地検の場合、謄写センターで有料にてコピーをとってもらうことが可能です。また弁護士会の協同組合で謄写を受け付けてくれることもあります。ただ費用としては一枚数十円かかりますし、地方によってはそれ以上の負担が生じることもあります。

そのような費用的な問題で、私がかつて紋別の公設事務所にいた頃は、たまに実費を支払うので謄写をかわりにしてもらいたいという話を遠隔地の弁護士から求められたことはありました。断ると「弁護士会の金で事務所をおいているのにできないのはどういうことか」と憤られる方もいないわけではありませんでした。

記録謄写を公設事務所の弁護士に求めないようにという申し出等を弁護士会の方でしていただいたこともあり、次第にそのようなこともなくなりましたが、遠隔地の記録謄写が刑事弁護を行なう上でネックになっている現実そのものは今も変わっておりません。

この記録謄写に関しては、そもそも電子データによる謄写物の交付がなされれれば上記のような問題は一気に解決してしまうはずです。しかしながら、検察側はそのようなことは一切考えておりません。また東京地検謄写センターもまたそのようなことは行なわない旨明言しています(リンク先の高野先生のブログ参照)。民事裁判についてはIT化が進む中、刑事裁判だけが旧態依然とした紙中心の裁判から変化しようとしません。これは法改正により是正しなければいけない問題だと思います。

投稿者: 弁護士大窪和久

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