弁護士大窪のコラム

2020.11.26更新

以前こちらのブログで紹介しました、ひまわり基金20周年記念シンポジウム配信イベントの動画が下記リンク先で配信が開始されました。

https://video.ibm.com/recorded/128653485

 

イベント中、枝幸ひまわり基金法律事務所での活動も動画にされて取り上げられています。枝幸をはじめとする中頓別簡裁管内は、弁護士がいる地域へのアクセスが困難であり、地元からも弁護士の赴任が心待ちにされていました。この点、法テラスは地元の要請にも関わらず、相談数が見込めないとして事務所を設立することを拒絶しました。このため、日本弁護士連合会が資金を援助して公設事務所を設立し弁護士を赴任させています(日弁連の資金は弁護士が自腹を切っているものであり、公助より共助や自助を優先する「日本らしい」経緯を辿っていると思います)。そうして出来た事務所が地元に受け入れられ、弁護士が活躍しているのを見るのは大変感慨深いものがあります。

投稿者: 弁護士大窪和久

2020.11.21更新

民事裁判のIT化がようやく日本でも始まりつつありますが、民事裁判のIT化を進める上で出された意見として、本人訴訟の場合どうするのかというものがあります。

この点、2020年11月20日付河北新報の記事では、このように書かれています。

「日本の民事裁判では、弁護士を付けず訴えを起こす「本人訴訟」が認められている。原告がアプリを使う際に手間取った時、誰がどうサポートするのか。代理人は技術的に精通する必要があろう。訴訟当事者が習熟度により不利益を被ることがないよう、弁護士会によるバックアップが欠かせない。」

この記事ではあたかも本人訴訟でも当然に何某かの代理人がつくかのような書きぶりをしておりますが、実際には本人訴訟を行なう場合に裁判所や第三者が代理人を付けてくれることはありません(たまに民事事件で国選弁護人のような制度は無いのかと聞かれることはありますが、そのようなものはありません)。ですので訴訟でのアプリ利用等についても、当事者本人がなさねばならないことになります。

また、記事では弁護士会によるバックアップが期待されています。この点日弁連では、昨年9月12日付で、「民事裁判手続のIT化における本人サポートに関する基本方針」というものを出しています。その中で本人訴訟支援について「裁判を受ける権利を実質的に保障して必要な法律サービスを提供することを可能とするため,IT面についても必要なサポートを提供する」と打ちだしています。もっとも、そればかりではなく、「民事裁判手続のIT化は,新たな司法システムの構築を目指すものであり,それに伴い裁判を受ける権利に支障が生じる場合は,国がその責任において支障を除去することは当然である」として、国に十全なサポート体制の構築や支援を求めてもいるのです。

上記日弁連の基本方針にもあるように、本来的には、本人訴訟については国がバックアップすべき問題です。隣国の韓国では、代理人弁護士においては電子訴訟を推奨する一方、当事者本人の場合は従前通りの紙による裁判の機会を与えており、記録の電子化等については裁判所が行なっています。また他国でも、記録の電子化については国が行なうということをしています。他方、日本の裁判所は、今までの議論の中では本人訴訟の支援について全く行なう姿勢を見せておらず、当事者本人の「自助」任せにするということのようです。マスメディアにおかれては、民事裁判のIT化による当事者の負担について、国あるいは裁判所がサボタージュしてなんら対応しようとしていない点についても着目していただきたいものです。

投稿者: 弁護士大窪和久

2020.11.18更新

先日、櫻井光政弁護士(私の所属する桜丘法律事務所所長)が原告として、東京地検特捜部が業務上横領容疑で捜査対象とした男性を任意で取り調べた際、検事から接見を妨害されたことについて国賠を求めた事件の判決がありました。判決では弁護権の違法な侵害を認め、10万円の慰謝料の支払を命じています。

事実関係については、現在進行中の事件に関することでもありますので、こちらの記事で書いてあるような原告本人が記者会見で述べた内容以上のことを現時点でここで開示する予定はありません(なお、櫻井、私を含む当事務所の弁護士が弁護団をつくっています)。

ただ、本件は、任意取調中の検察の接見妨害について接見妨害を認めた先例として価値がある判決だと考えています。曲がりなりにも特捜たる存在がこのような違法な接見妨害を行なってまで被疑者の調書を取っていることが、まさにこの国の人質司法の病理を体現しているものと言わざるを得ません。

(2020.11.19 追記)

事務所のブログで櫻井弁護士が記事を書いておりますのでご参照ください。

投稿者: 弁護士大窪和久

2020.11.17更新

グーグルがCOVID-19 予測モデル(日本版)を公開しました。

これがどういうものかというと、グーグルによる説明によれば、

「COVID-19 感染予測 (日本版) は、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の日本全国での感染の広がりに関する予測データを提供しています。このデータは都道府県別に、対象期間である将来 28 日間のあいだに予測される死亡者数、陽性者数、入院・療養等患者数1を表しています。これらの項目に関する重要な指標として累計や日別のデータ、95 %予測区間等も掲載しています。また、全国の予測値は都道府県の予測値を足し合わせることで表示しています。」

というもので、日本全国及び都道府県毎に機械学習で28日間の感染の広がり等を予測させた結果が出てきています。

本日11月17日の時点では、12月12日までの予測数が出ておりますが、全国では12月12日の時点で陽性者数が3000人に迫ることや、北海道で陽性者が全国で一番多くなることなどの予測が出てきております。

グーグルの機械学習の確度がどの程度のものなのかは今後の実際の推移を見ていかないと分からないことではありますが、今後の政策や感染対策がどうなるかの予測に繋がるものとして大変興味深いものであることは間違いありません。

 

投稿者: 弁護士大窪和久

2020.11.11更新

刑事事件で逮捕勾留されてしまい、長期間身柄が拘束されることのつらさは体験した人しか分からないだろうと思います。勾留をはじめてなされた人は例外なく、一秒でも早く外に出たいという希望を持ちます。

勾留に対してなしうる手続はいくつかありますが、今回は勾留理由開示について説明します。

憲法及び刑事訴訟法は、被告人について、裁判所に勾留理由の開示を請求することを認めています(憲法34条後段、刑事訴訟法82条1項)し、被疑者については勾留状を発布した裁判官に対して勾留理由の開示の請求をすることが認められています(刑事訴訟法207条による82条の準用)。また被疑者・被告人本人だけではなく、弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族、兄弟姉妹その他利害関係人も請求することが出来ます(刑事訴訟法82条2項)。

勾留理由開示があった場合には、裁判所は5日以内に開示期日を指定した上(刑事訴訟規則82条1項、同84条)、公開法廷で勾留の理由を答える必要があります(憲法34条後段、刑事訴訟法83条1項)。

勾留理由開示については、裁判官が抽象的なことを話すに留まり、形骸化されているとも言われています。ただ、私の経験上は事前の求釈明を具体的に行なえばそれに応じてある程度の回答が裁判官より得られることもあり、勾留について問題がある場合には積極的に行なうべき手続と思います。また、副次的な効果として、公開法廷で行なわれる関係上接見禁止がついている被疑者被告人であっても、傍聴席の家族に顔を見せることができるという面もあります。

他方、公開法廷になるべく出たくは無いという意向を被疑者被告人が持つ場合には手続を取りにくいという面もありますので、被疑者被告人の意向を尊重した上手続をなすか否か判断することは当然必要となります。

 

投稿者: 弁護士大窪和久

2020.11.10更新

総務省は、現在の発信者情報開示制度の改善に向けて、発信者情報開示の在り方に関する研究会を設置してこれまで9回の会合を行なってきました。11月12日に10回目の会合が行なわれています。

そして、同研究会により最終とりまとめ骨子が出されており、制度変更の方向性が明らかになったと言えます。

最終とりまとめ骨子では、発信者情報の開示対象の拡大(電話番号およびログイン時情報)、新たな裁判手続の創設と通信ログの保全、裁判外開示の促進というものが柱となっています。この中でもっとも影響が大きいのは、新たな裁判手続の創設でしょう。

現状では、発信者を特定するためには、SNS等の運営主体のプロバイダにまず仮処分を行ない、接続元のIPアドレスの開示を受けた後で改めて接続に使われたプロバイダの運営会社に裁判を行なう必要がありますが、二回の手続を要するのが負担が大きいとして、問題になっていました。最終とりまとめ骨子では、従前の手続に「加えて」新しく手続を設けて、この難点を解消しようとしています。また、発信者情報開示の難点として、プロバイダがログを短時間で消してしまうという点がありますが、この点をクリアするためにログを迅速に保全する手続も上記開示の手続とまとめて行なうことができるようにもするようです。

現状の開示手続は被害者側の負担が大きく、負担のために使われないということも多いのですが、上記のような方向性での改善があれば現在より多少は開示手続も使われるのでは無いかと思います。もっとも、研究会での議論では、表現の自由が関わる以上開示の是非については訴訟手続でしっかりと審理する必要があるともされており、その点では弁護士が関与しなければ手続を進めていくのは難しいのは従前と変わりないのではないかと思われます。

 

投稿者: 弁護士大窪和久

2020.11.03更新

gigazineにて、「Appleは環境のためにLightningを諦めてiPhoneをUSB Type-Cに対応させろ」という主張が掲載されています。

記事によれば、「Appleは「環境への負荷を軽減する」という目的から、iPhone 12のリリースを期に電源アダプタとEarPodsの同梱を終了しました。こうしたAppleの姿勢について、IT系ニュースサイトのThe Vergeが、「本当に環境問題を考えるならば、まずLighthingを諦めてiPhoneをUSB Type-Cに対応させるところから始めるべき」と一刀両断して」いるとのことでした。

Appleは新しいiPhone12シリーズにおいて、USB-C - Lightningケーブルのみを同梱して、従前より環境に配慮したとしています。ただ記事でも指摘されているとおり、USB-Cに対応したアダプタをもっている人がどれだけいるかという問題があり(私も持っておりません)環境に配慮したというのに疑問があります。それよりもiPadで行なったのと同じように、LighthingからUSB Type-Cに変えるべきだったのではないかというのは当然の疑問だと思います。

ユーザーの多いiPhoneでもLighthingに変えてしまうと、ライセンス収入がなくなってしまうという収益面の問題はあったのかも知れませんが、環境面から言えば早く移行を行なうべきだと思いました。

投稿者: 弁護士大窪和久

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