弁護士大窪のコラム

2020.09.18更新

NHKのニュースで、「入れ墨のタトゥーの彫り師をしている男性が医師の免許がないのに客にタトゥーを入れたとして医師法違反の罪に問われた裁判で、最高裁判所は検察の上告を退ける決定をし、無罪が確定することになりました」との報道がありました。

ツイッターでも「あの最高裁がここまで踏み込んだ意見を出すのが驚き。これは弁護団の並々ならぬ尽力による成果なのだと思います」と書かせていただいたとおり、画期的な判断であると考えます。裁判長の補足意見で、「タトゥーの施術による保健衛生上の危険を防ぐため法律の規制を加えるのであれば、新たな立法によって行うべきだ」との立法提言がなされていますが、刑事訴訟の最高裁判決がここまで踏み込んだ立法提言を行うことはなかなかありません。

いずれ最高裁のホームページ等で判決文が公開される事件だと思いますので、公開後当ブログに改めて紹介させていただこうと思います。

投稿者: 弁護士大窪和久

2020.09.11更新

これまで既に様々な刑事弁護人が指摘していることではありますが、改めて、「逮捕されたときにはまず黙秘して弁護士を呼ぶ」ことを強く推奨いたします。

弁護士が会いに行く前に取調で警察官に事件のことを話し、その後警察官に供述調書を作られることは良くありますが、あとになってその供述調書の内容をみると、自分が思ってもいない内容に仕上がっていることが良くあります。あとの裁判でその内容を訂正しようとしても、裁判官は裁判所で話した内容よりも初期の供述内容の方が信用できるとして聞き入れてくれなかったり、話している内容が二転三転しているとして言い分を否定しています。

憲法で黙秘権が保障されていることは皆さんご存じであると思いますが、実際にいざ警察官を目の前にして個室で話をする状況では黙秘権を行使できず、警察官に迎合して話をしてしまうということになってしまうことが多いです。

事件について実際に自分がやっている場合でも、そうでない場合でも、まず弁護士に接見に来てもらい、相談することが重要です。事件についてやっていない場合であれば黙秘権を引き続き行使して警察に情報を与えないという方針をとるということもできますし、事件についてやっている場合でも、どのように話せば事実を伝えられるか考えることができます。

ですので、逮捕された時にはまず「弁護士が来るまでなにも話しません」といい、弁護士を呼びましょう。警察の方が「弁護士など役に立たない」「弁護士は信用できない」「弁護士は金のことばかり考えているのであなたのためにならない」などいうかも知れませんが、気にせず呼びましょう。知り合いに弁護士がいない場合でも、弁護士会の当番弁護士を呼んで欲しいと警察官に言えば、弁護士が接見に来てくれます。弁護士に話を聞いてもらい、それから落ち着いて今後のことを考えましょう。

投稿者: 弁護士大窪和久

2020.09.05更新

朝日新聞によれば、インターネットサイト上のやらせ投稿(依頼により低評価のレビューを付ける投稿)を行なった者について、刑事罰が出されたとの報道がなされたので事例として紹介します。

アマゾンで「星一つ」やらせ投稿 依頼者に異例の刑事罰

投稿によれば、ライバル会社の商品に低評価のレビューを書かせた(対価を支払いやらせ投稿を行なわせた)会社役員に対して、信用毀損罪で罰金20万円の略式命令が出されたとのことです。

サイト上の口コミ・レビューについて低評価を受けているという相談は良くありますが、多くの場合で問題となっているのは、匿名での口コミ・レビューを誰が行なったか特定するプロセスです。特定のための法的手続にもコストがかかり、かつサイト側も発信者情報開示の要件についてはきちんと争ってきますのでハードルは低くありません。この点本件でも、投稿者を「苦労の末特定し」たということで、方法については明らかではありませんがなんとか特定にたどり着き被害届を出すまでに至ったようです。

 

投稿者: 弁護士大窪和久

2017.09.27更新

 ツイッター上で、弁護士が増えた結果として若手弁護士が刑事事件を受ける機会が少なくなり、研鑽を積むのが難しくなっているという話がありました。

 地方にいるときにはあまりそのようなことは感じなかったのですが、東京に戻ってみると、確かに刑事事件の研鑽を積むことが以前に比べて難しくなっていると思いました。弁護士は事件をすることによって学んでいくものなので、事件を受けられないというのはつらいところです。

 もっとも、東京での利点として、各種研修を受ける機会に事欠かないということがあります。地方ですと日弁連の研修の配信をみるにも弁護士会館まで出向かなければなりませんでしたが、そのような苦労もありません。

 当事務所でも、私が地方に派遣される前から刑事専門の神山先生が毎月ゼミを開いており、事務所の弁護士やゼミに参加した弁護士の現在進行中の事件に関して議論を行っております。

 私が派遣される前には相当ここで鍛えられました。帰ってきても以前と変わらず新人がこのゼミで徹底的に鍛えられています。

 今後の日程等については、事務所の方のブログでご案内しています。

 

投稿者: 弁護士大窪和久

2017.09.07更新

 少し前になりますが、容疑者の勾留請求却下率が過去10年間で5倍超になったとの報道がありました。

 http://www.sankei.com/affairs/news/160328/afr1603280008-n1.html  

 報道によれば、全国の地裁、簡裁で平成17年に0.47%だった勾留請求却下率は平成26年には2.71%まで上昇し、過去10年間で約5.8倍になったということです。日本では昔から「人質司法」と言われ、裁判官が被疑者被告人の身柄拘束を安易に認めてしまうことが問題とされてきました。ただ、裁判所が身柄拘束を安易に認める傾向は変わってきており、報道にもあるとおり否認事件であっても最高裁が身柄拘束を認めない判断をするようになっています。

 私は11年の間司法過疎地と呼ばれる場所で弁護士をしており、その間地域で刑事事件を数多く担当しました。私が担当した刑事事件で捕まった方から一番多く受けた訴えは「一刻も早く外に出たい」というものでした。刑事事件で結論的には罰金刑や懲役刑の執行猶予がなされる場合であったとしても、その結論が出るまでに何日間もずっと身柄拘束が続くということによって、精神的に相当追い詰められてしまいます。また、身柄拘束で仕事に行けないことによって職場を首になるなどその後の生活にも大きな影響を及ぼすことになります。

早急に身柄拘束を解くため弁護人が勾留請求の却下を求めたり、裁判官がなした勾留決定に対する準抗告を行うことはとても重要です。前記のように裁判官が身柄拘束を安易には認めないようになっているとはいえ、弁護人が身柄拘束を争わなければずっと身柄拘束されてしまう危険は依然として高いからです。

 被疑者勾留が続きそのまま起訴された後であっても、保釈が認められる場合には身柄拘束は解かれることにはなります。ただ、起訴される前の被疑者勾留だけでも原則として10日間までは身柄拘束されることとなり、その間の不利益は非常に大きいものがあります。

 現在施行されている刑事訴訟法では、死刑又は無期もしくは長期三年を超える懲役もしくは禁固にあたる刑の事件の被疑者が勾留され身柄拘束されている場合には、国が弁護人をつけることとされています(被疑者国選制度。なお法改正により、2018年6月までにはすべての被疑者勾留事件まで国が弁護人をつける形に制度が変わります)。私も被疑者の国選弁護人として数多くの事件で被疑者の身柄拘束を争ってきました。ただ被疑者の国選弁護人として活動できるのはすでに勾留されてしまった「後」のこととなってしまいますので、弁護人がベストを尽くしたとしても勾留により身柄を拘束されるリスクそのものをゼロにすることはできません。

 身柄拘束されるリスクを少なくするためには、勾留される前、できれば逮捕される前に弁護人がつくことが本来望ましいです。逮捕される前に弁護人が被害者と示談交渉するなどして、捜査機関に逮捕をさせないようにする活動ができればベストです。

 また、逮捕されてしまったとしても、早急に弁護人がつけば勾留請求の取消を求めることで勾留されることを防ぐことができます。逮捕された直後は前記のように被疑者国選制度は使えませんが、弁護士会で実施している当番弁護士制度を使い無料で弁護士に接見に来てもらうこともできます。

 前記の通り身柄拘束に対してはいち早い弁護士による対応が重要となりますので、ご家族が警察に捕まってしまった場合であるとか、自分が刑事事件で捕まるか不安に思っている場合などはお気軽にご相談していただければと思います。

投稿者: 弁護士大窪和久

2017.09.04更新

 刑事弁護、特に被疑者の方が逮捕勾留されている事件については、時間的制約があるので、事件の段取りについてよくよく考えていかないといけないと思います。

 接見をいつ行うであるとか、準抗告や勾留理由開示をどのタイミングで行うとか、意見書をまとめるための調査とか、被害者の方との示談等々、ちゃんと方針を立てた上自分の予定のスケジュールを組んでいかなければなりません。自分も被疑者段階で事件を受けた場合には、あらかじめ処分が決まる可能性がある日を見据えて、その日までの間に接見する日・時間などを予定表に組み込みます。
 

 地方の弁護士過疎地域に日弁連や法テラスが事務所を設立しているのは、民事事件の需要に応えるという意味もありますが、刑事事件(特に被疑者段階)について時間的制約がある中弁護士が接見等多くのことをしなければならないということがあるので、それに対応出来る地元の弁護士をおくという意味が大きいです。かつて被疑者国選が導入される前には、弁護士が偏在している状況では制度を導入することは難しいなどということも言われたものですが、今は弁護士過疎地域にいる弁護士の頑張りもあり制度が成り立っています。
 

 刑事事件における迅速な対応はどこであれ必要なことでありますので、今後も頑張っていこうと思います。

投稿者: 弁護士大窪和久

2016.05.17更新

 報道によりますと、今年の夏以降のAndroid端末(一部除く)については、捜査に必要とされる場合本人に通知なく警察がGPSの位置情報を取得できるようになるということです。

 今までもGPSの位置情報については裁判所の令状があれば警察が捜査のため取得することができたことには変わりありません。ただ、従前総務省がGPSの位置情報取得につき定めていたガイドラインでは、令状があるときでも、端末の利用者に対し位置情報の取得について知らせなければ情報を取得してはならないという条件がついていました。ただこの条件がついていると事実上捜査にならない(位置情報の取得がなされていることを明かしてしまっては端末の所有者の動きが分からなくなる)ということが指摘されました。

 そこで捜査の必要性のため、総務省がガイドラインを昨年改正し裁判所の令状があればGPSの位置情報を捜査機関が取得できるようになったわけです。

 捜査機関がGPSの位置情報を取得するにあたっての問題点として、GPSの位置情報を取得することで端末の利用者がいつどこに行ったかということが全て丸裸になってしまうという点があります。

 既にGPSの位置情報については警察は積極的に証拠として利用しており、否認する容疑者のアリバイつぶしなどでかなり使われています。GPS情報で端末利用者の一日の行動がピンポイントでわかるわけですから、証拠としては有用性はあるのは確かです。半面、それほど重要な犯罪ではない事件で警察があえて裁判所の令状をとり、もっぱら個人の行動を監視することに使うという濫用の危険性もあります。

 GPSの位置情報を裁判所が発令するには刑事訴訟法218条の要件をみたせば足りるのですが、刑訴法はGPSの位置情報取得に関する改正等は特になされていないので、上記濫用の危険性はかなり高いと言わざるを得ません。

 今後個人が取り得る対応としては、スマートフォンを使わないという方法もあるでしょうが、それが難しいという場合にはiPhoneを使うのがベターだと思います。報道でも書かれていますが、そもそもiPhoneはGPSの位置情報についてキャリアもappleも取得できないようになっているため警察もまた情報を取得できないためです。

投稿者: 弁護士大窪和久

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