弁護士大窪のコラム

2016.03.09更新

 私は合計6年間の間,公設事務所で所長弁護士をしてきました。公設事務所というのは,弁護士が足りない地域(例えば,裁判所の支部があるにも関わらずその管轄内に弁護士が一人もいないか一人しかいない地域)に,日弁連等が支援してつくられた法律事務所のことです。

 先月(平成28年2月)まで業務を行っていた北海道の名寄市(「なよろ」と読みます)にも私がいた道北法律事務所の他に,名寄ひまわり基金法律事務所という公設事務所が設立されています。公設事務所の特長として所長弁護士が3年ほどで交替するという点が有りますが,名寄の公設事務所もこの夏に弁護士が交替することとなっています。

 この公設事務所の後任者は,公募で選ばれます。応募してきた弁護士を,公設事務所の支援委員会(日弁連や地元の弁護士会などから委員が選ばれ,公設事務所を支援することを目的にされた組織です)のメンバーがみたうえで選任されることになります。

 私が公設事務所の所長をしていたのは5年前のことですが,その当時に比べると公設事務所の応募者は大幅に増えたと思います。私がいた旭川地裁管轄の公設事務所では,以前なら応募自体全くないということもありましたが(私がいた紋別でも私の後任の応募が公募後しばらくありませんでした),今では応募者が必ず複数でてくるようになりました。その原因としては弁護士の数そのものが大幅に増えたということもあるでしょうが,公設事務所に派遣する弁護士を養成する事務所が増えたということもあると思います。

 応募者が複数ということになると,当然ではありますが支援委員会の方で一人だけ選ぶということになります。どのような基準で選ぶかについては支援委員会のメンバー次第ということになりますが,最低限言えるのは「任期中問題を起こさない人」を選ぶということです。

 公設事務所は看板は「公設」とついていますが実態としては純然たる個人事務所であり,国や地方自治体が業務を監督することはありません。また日弁連や弁護士会も他の法律事務所に対して業務を直接監督することができないのと同じく,公設事務所の業務に対して直接監督することはできません。上記の支援委員会も公設事務所を「支援」することが目的であって,弁護士の業務を監督する権限があるわけでもありません。

 仮に派遣された公設事務所の所長の業務について問題があっても,支援委員会等が監督して業務を是正することは困難です。また公設事務所がある地域は他に弁護士がいないか少ないので,地元の人が公設事務所について悪い噂をきいたとしても,他の弁護士を選ぶことが難しいという点もあります。結果任期中に所長弁護士が問題のある業務を続けて地元の人に不利益を与え,事務所を「支援」した日弁連や弁護士会の評判も落ちるということになりかねません。

 支援委員会も上記のような問題が起こりうるということは十二分に理解しているはずなので,まずは「任期中に問題を起こさない人」を選ぶことになります。応募した弁護士が多少事務処理能力が高かったり,弁護士としてのキャリアがあったとしても,支援委員会の方では保守的な判断をして別の弁護士を選定するということは十分あると思います。

投稿者: 弁護士大窪和久

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