弁護士大窪のコラム

2021.03.31更新

FNNプライムオンラインで「「一太郎」禁止令? 農水省「ワード原則化」通知」との記事が出されています。記事によれば、中央官庁のワープロソフトは原則として「ワード」が使われているものの、一部「一太郎」が使われている状態にあり、「ソフトの互換性の問題から相次ぐ法案の条文ミスの理由とされたり、民間企業とのやり取りで不便が生じ、政府内で「一太郎」の使用を問題視する声が上がっている」とのことです。そしてそうした意見を受けて、農水省が省内で「ワード使用を原則化」する通知を出したということです。

「一太郎」は日本語ワープロソフトとしては定評があり、それを使うこと自体には問題は無いと思います。ただ組織内で異なるソフトが使われていればファイル形式や編集方法等で違いが出てくることはあり得ることであり、一つのソフトに統一した方が確かに望ましいといえるでしょう。なお、弁護士の間では「一太郎」は根強い人気がありますが、既に裁判所は「ワード」に統一しています。

投稿者: 弁護士大窪和久

2021.03.19更新

 本月17日に、札幌地裁が同性婚の不受理を行なったことについては憲法に違反するという判断を示しました。本判決はBBCニュースでも報じられ、白石早樹子さんの解説において「今回の札幌地裁の判決ははっきりとした分岐点だ。賠償請求は退けられたが、違憲判決という大きな成果を勝ち取った実質勝訴だという声が次々に上がっている」と紹介されています。

 本裁判については、弁護団がCALL4(社会課題の解決を目指す訴訟“の支援に特化したウェブプラットフォーム)上で判決文、判決要旨だけではなく、主張書面や証拠なども公開しているため(公開箇所はこちら)、原告被告がどのような主張を行なっているのか明確になっています。原告準備書面では同性婚に関して緻密な書面が提出されており、弁護団が本判決を勝ち取るのにいかに汗を流してきたかが良くわかるものとなっています。

 判決では、 同性間の婚姻を認める規定を設けていない民法及び戸籍法の婚姻に関する諸規定について、法の下の平等を定める憲法14条1項に反するとの判断をしています。

 具体的には、「同性愛は精神疾患ではなく,自らの意思に基づいて選択、変更できないことは,現在は確立した知見になっている。圧倒的多数派である異性愛者の理解又は許容がなければ,同性愛者のカップルは,重要な法的利益である婚姻によって生じる法的効果を享受する利益の一部であってもこれを受け得ないとするのは,同性愛者の保護が,異性愛者と比してあまりにも欠けるといわざるを得ない」「我が国及び諸外国において,同性愛者と異性愛者との間の区別を解消すべきとする要請が高まっていることは考慮すべき事情である一方,同性婚に対する否定的意見や価値観を有する国民が少なからずいることは,同性愛者に対して,婚姻によって生じる法的効果の一部ですらもこれを享受する法的手段を提供しないことを合理的とみるか否かの検討の場面においては,限定的に斟酌すべきものである」とした上で、同性愛者に対しては,婚姻によって生じる法的効果の一部ですらもこれを享受する法的手段を提供しないとしていることは,立法府の裁量権の範囲を超えたものであるといわざるを得ず,本件区別取扱いは,その限度で合理的根拠を欠く差別取扱いに当たると解さざるを得ない」と判断しているのです。これまで日本の裁判所が同性婚を認めない民法等の規定を違憲であるとした判断はなく、まさに画期的な判断といえるでしょう。

 なお本判決は、同性婚を認めない民法等の規定は憲法24条には違反しないとしています。その理由については、現行民法への改正や憲法が制定された戦後初期の頃においても、同性愛は精神疾患であるとされており、同性婚は許されないものと解されていたこと、憲法 24条が「両性」など男女を想起させる文言を用いていることにも照らせば、同条は異性婚について定めたものであり、同性婚について定めるものではないというものです。ただここで本判決は、民法等で同性婚を認める規定をおくことについて「憲法24条に反する」という判断を行なっているわけではありません。ネット等では本判決が同性婚を憲法24条に違反するものと判示したというような言説がありますが、判決文にあたればそのような読み方は出来ないことは明白です。

 判決中にも言及されているとおり、日本では特に高齢者で同性婚について否定的な意見を持つ人が多く、(私も地方時代、そのような意見を聞くことが少なからずありました)、そのせいもあってか法制度の整備も遅々としているのが現状です。本判決を機に法制度整備をきちんと進める方向へ議論がなされることを期待します。

 

投稿者: 弁護士大窪和久

2021.03.19更新

 本月17日に、札幌地裁が同性婚の不受理を行なったことについては憲法に違反するという判断を示しました。本判決はBBCニュースでも報じられ、白石早樹子さんの解説において「今回の札幌地裁の判決ははっきりとした分岐点だ。賠償請求は退けられたが、違憲判決という大きな成果を勝ち取った実質勝訴だという声が次々に上がっている」と紹介されています。

 本裁判については、弁護団がCALL4(社会課題の解決を目指す訴訟“の支援に特化したウェブプラットフォーム)上で判決文、判決要旨だけではなく、主張書面や証拠なども公開しているため(公開箇所はこちら)、原告被告がどのような主張を行なっているのか明確になっています。原告準備書面では同性婚に関して緻密な書面が提出されており、弁護団が本判決を勝ち取るのにいかに汗を流してきたかが良くわかるものとなっています。

 判決では、 同性間の婚姻を認める規定を設けていない民法及び戸籍法の婚姻に関する諸規定について、法の下の平等を定める憲法14条1項に反するとの判断をしています。

 具体的には、「同性愛は精神疾患ではなく,自らの意思に基づいて選択、変更できないことは,現在は確立した知見になっている。圧倒的多数派である異性愛者の理解又は許容がなければ,同性愛者のカップルは,重要な法的利益である婚姻によって生じる法的効果を享受する利益の一部であってもこれを受け得ないとするのは,同性愛者の保護が,異性愛者と比してあまりにも欠けるといわざるを得ない」「我が国及び諸外国において,同性愛者と異性愛者との間の区別を解消すべきとする要請が高まっていることは考慮すべき事情である一方,同性婚に対する否定的意見や価値観を有する国民が少なからずいることは,同性愛者に対して,婚姻によって生じる法的効果の一部ですらもこれを享受する法的手段を提供しないことを合理的とみるか否かの検討の場面においては,限定的に斟酌すべきものである」とした上で、同性愛者に対しては,婚姻によって生じる法的効果の一部ですらもこれを享受する法的手段を提供しないとしていることは,立法府の裁量権の範囲を超えたものであるといわざるを得ず,本件区別取扱いは,その限度で合理的根拠を欠く差別取扱いに当たると解さざるを得ない」と判断しているのです。これまで日本の裁判所が同性婚を認めない民法等の規定を違憲であるとした判断はなく、まさに画期的な判断といえるでしょう。

 なお本判決は、同性婚を認めない民法等の規定は憲法24条には違反しないとしています。その理由については、現行民法への改正や憲法が制定された戦後初期の頃においても、同性愛は精神疾患であるとされており、同性婚は許されないものと解されていたこと、憲法 24条が「両性」など男女を想起させる文言を用いていることにも照らせば、同条は異性婚について定めたものであり、同性婚について定めるものではないというものです。ただここで本判決は、民法等で同性婚を認める規定をおくことについて「憲法24条に反する」という判断を行なっているわけではありません。ネット等では本判決が同性婚を憲法24条に違反するものと判示したというような言説がありますが、判決文にあたればそのような読み方は出来ないことは明白です。

 判決中にも言及されているとおり、日本では特に高齢者で同性婚について否定的な意見を持つ人が多く、(私も地方時代、そのような意見を聞くことが少なからずありました)、そのせいもあってか法制度の整備も遅々としているのが現状です。本判決を機に法制度整備をきちんと進める方向へ議論がなされることを期待します。

 

投稿者: 弁護士大窪和久

2021.03.02更新

2021年2月26日に、プロバイダ責任制限法改正案が閣議決定され、国会に提出されました。法案の内容も総務省のホームページで公開されています。

プロバイダ責任制限法の改正については、以前も当ブログでとりあげた通り、発信者情報開示の在り方に関する研究会により検討が行われてきました。研究会の出した最終とりまとめ骨子では、発信者情報の開示対象の拡大(電話番号およびログイン時情報)、新たな裁判手続の創設と通信ログの保全、裁判外開示の促進が主な内容になっており、改正案でもそれに沿った内容の条文改正が予定されています。

また、改正案は、管轄について詳細な規定を定めており、新たな裁判手続(発信者情報開示命令事件)において、相手方が海外法人であったとしても、申立内容が法人の日本における業務に関するものである場合であれば日本の裁判所の管轄が認められることが明文で定められました。また、プロバイダが地方にある場合でも、東京地方裁判所あるいは大阪地方裁判所に管轄を認めており、今後東京地裁及び大阪地裁で本件事件を集中的に取り扱うことを想定していると思われます。

今国会で改正案が成立した場合、2022年までの間に施行されることになります。また、法改正にともない、総務省では相談対応の充実に向けた連携と体制整備の方もおこなうということです。詳細はこちらの「政策パッケージの進捗状況について」に紹介されています。

今回の改正案では、開示までの手続の簡略化を図った一方、権利開示の要件(権利侵害が明らかであるとき)の要件は緩和しませんでしたので、法改正がなされたとしても権利侵害の明白性についてプロバイダ側が厳しく争ってくることには違いはありません。被害者としては十分な主張立証を行う必要があり、開示手続に関して弁護士に依頼する必要性が減じるということもないだろうと思われます。

投稿者: 弁護士大窪和久

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