私が所属する第二東京弁護士会の会報誌『NIBEN Frontier』(2025年12月号)が発行されました。
他会の先生方は普段目にされる機会が少ないかと存じますが、今号に掲載されていた「市民会議報告」の内容が、所属会を問わず、私たち弁護士業界全体にとって極めて深刻かつ共有すべき課題を含んでいましたので、本ブログでご紹介したいと思います。
■ 議題となった「弁護士広告の課題」
今回の市民会議では、インターネット広告を利用した不適切な弁護士業務、特に「二次被害」を生むような事案について厳しい議論が交わされました。
報告の中で、当会の副会長より、以下のような実態が問題提起されています。
・詐欺被害金の回収等を謳いながら、高額な着手金を受け取り、実質的な活動を行わない悪質な事例
・依頼者が一度も弁護士と会うことなく、弁護士資格のない事務員等が対応しているケース
近年、国際ロマンス詐欺や投資詐欺の被害回復を掲げるネット広告が急増していますが、被害者救済どころか、傷口に塩を塗るような対応が行われているケースがあるというのです。
これは単なる「質の低い業務」の範疇を超え、非弁提携や詐欺的な業務運営が疑われる事案であり、弁護士全体の信用を失墜させる由々しき問題です。
■ 市民委員からの痛烈な指摘
こうした現状に対し、外部の有識者である市民委員の方々からは、非常に重い指摘がなされています。
「監督官庁を持たない弁護士業界だからこそ、JARO(日本広告審査機構)のような第三者機関と連携し、消費者からの声を真摯に受け止めるべき」
私たちは「弁護士自治」のもと、自らを律することを前提に高い独立性を認められています。しかし、自浄作用が働いていないと見なされれば、このように「外部機関による監視・連携が必要だ」という声が上がるのは必然です。
また、「市場原理に任せると、検索結果が広告料をかけている情報に偏る」との懸念も示されました。
資金力のある一部の不適切な業者の広告ばかりが市民の目に留まり、真面目に業務を行っている弁護士にアクセスできなくなる。その結果、市民が不利益を被るという構造的な問題も指摘されています。
■ 業界全体の信頼を守るために
報告では、「クリーンな弁護士像を積極的に発信していくべき」という意見や、弁護士個々の倫理観の向上、継続的なコンプライアンス研修の必要性についても触れられていました。
一部の弁護士(あるいは弁護士の名を借りた業者)による悪質な行為が、「弁護士なんてそんなものだ」という不信感を社会に植え付けてしまえば、私たち全員がそのツケを払うことになります。
二弁の会報誌での報告ではありましたが、ここで指摘された課題は、どの単位会に所属しているかに関わらず、現代の弁護士全員が直面している問題です。
「監督官庁がない」という特権にあぐらをかくことなく、市民からの厳しい視線を意識し、襟を正して業務にあたらねばならないと痛感した次第です。
2025.12.12更新
弁護士の広告に関し「監督官庁がないからこそ第三者の監視が必要」という市民の声(二弁市民会議報告より)
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