弁護士大窪のコラム

2023.01.04更新

新年あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

旧年中は、新型コロナウィルスの感染対策ということで、在宅でも業務を行うことができる体勢を整えました。結果、実際の打ち合わせが必要な場面や法廷での尋問等を除き、在宅における業務に支障がなくなっております。コロナウィルスに関する感染対策は社会的には緩和が進んでいますが、流行の規模自体は回数を追う毎に大きくなっており、今年も対策を行う必要性を感じております。

また、次年度からは、裁判所における提出書面が電子化されるようになり、どこにいても業務を行うことができる環境をますます整えやすくなります。

事務所における相談も、現在はご希望に合わせてWEB会議を利用した相談を行っておりますので、お問い合わせの際にはご希望をお伝え頂ければ幸いです。

 

投稿者: 弁護士大窪和久

2022.10.20更新

インターネット上の誹謗中傷の投稿者に関する情報開示のための新しい裁判手続(発信者情報開示命令事件)が、本年10月1日より開始されました。

これまでインターネット上の誹謗中傷の投稿者に関する情報開示については、(1)SNSの運営者等のコンテンツプロバイダに対して仮処分を申立てた上、仮処分の結果経由プロバイダからのアクセスに関する情報の開示を受ける(2)経由プロバイダに対して訴訟を行い、勝訴して経由プロバイダの契約者に関する情報の開示を得るという二回の裁判手続を経る必要がありました。二回の裁判手続を要することから、時間もかかり、その間に経由プロバイダのログ保存期間を徒過し、時間切れで特定に至らないということも残念ながらあります。また、投稿者が電話回線でMVNOを使っている場合等複数の経由プロバイダが関わる場合、二回の裁判手続では終わらず、さらに裁判をしなければ特定に至らないと言うこともありました。

本年10月1日から始まりました発信者情報開示命令事件は、コンテンツプロバイダに情報を開示させた上、経由プロバイダの発信者情報の保全を行い、経由プロバイダに情報を開示させるという一連の手続を一つの裁判手続の中で完結するようになります。これは投稿者が電話回線でMVNOを使っている場合等複数の経由プロバイダが関わる場合も同様です。

よって、本手続によって、従前数ヶ月発信者情報開示まで要していたのに対し、それより短期間で開示に至るのではないかと考えられています。運用が既に始まっておりますので、実際の運用の結果どうなったかについては、改めてブログに投稿したいと考えております。

投稿者: 弁護士大窪和久

2022.08.19更新

2022年8月17日の読売新聞の記事によれば、「暴行でけがを負わせた相手方への賠償金支払いに応じず、裁判所の財産開示手続きに出頭しなかったとして民事執行法違反の疑いで書類送検され、大阪地検が不起訴とした加害者の男性に対し、大阪第4検察審査会が「起訴相当」と議決した」とのことです。本件で検察審査会の議決では男性には地裁から期日の呼び出しの書類が届いていたことなどを指摘し、「不起訴には疑義があり、国民の常識で考えると刑事責任は厳しく追及されるべきだ」としているとのことです。

財産開示手続については、現行法では6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金の刑事罰が定められています。刑事罰が定められる前は、財産開示手続の期日に出頭しない債務者が多く、手続の実効性について問題がありました。刑事罰が定められた現在、刑事罰導入前に比べて手続を無視する債務者も減少したように思われます。ただ、財産開示手続を無視する債務者に対して、検察が不起訴としてしまえば財産開示手続の実効性が損なわれることになることとなるでしょう。期日呼び出しが正当に行なわれていたにも関わらず、嫌疑不十分とした検察の判断については疑問が残るところであり、検察審査会により正常な判断がなされたといえるのではないでしょうか。

私が携わった案件でも、財産開示手続を利用することにより、債権回収に繋がったケースもあります。債務者の財産が不明な場合でも債権回収を諦めることなく、弁護士に相談して財産開示手続を進めることを検討しても良いでしょう。

投稿者: 弁護士大窪和久

2022.08.19更新

第二東京弁護士会は、SNSサービスを利用した違法行為に対する意見書(弁護士会照会への対応)を2022年8月17日に、総務大臣、消費者庁長官、内閣府消費者委員会委員長に提出しています。本意見書については私の所属する委員会の担当部会で議論し会としての提出ができるよう調整し、ようやく提出に至ったものです。なお、本意見書とほぼ同様の内容の意見書・会長声明が埼玉弁護士会、愛知県弁護士会、福井弁護士会からも既に出されています。

内容は、SNSサービスを通じた詐欺被害の実態を調査した上で、事業者に対して詐欺の被害者からの開示請求(特に弁護士会照会について)適切に回答をするよう指導するよう求めるものです。

背景として、現在広く使われているLINEが、詐欺の加害者と被害者との間のコミュニケーションで多く使われているという事実があります。詐欺の被害者は、加害者のLINEのアカウントしかわからず、損害賠償請求するにも加害者の所在が全く分からないということが良くあります。しかし、弁護士会照会などにより詐欺の個人情報の開示を求めても、事業者がこれに応じないため、被害者が泣き寝入りをせざるを得なくなっているというのが現状です。少なくとも、私の所属する委員会の担当部会で事例調査した限りでは、LINE株式会社が弁護士会照会に答えたケースはほぼありませんでした(過去例外的に回答したケースはあるようですが、近年は回答例は見受けられません)。

本意見書の提出は問題解決へのスタートラインに過ぎません。LINEなどSNSサービス事業者が適切な対応をするよう取り組みを続けていきたいと考えております。

投稿者: 弁護士大窪和久

2022.08.06更新

個人情報保護委員会が、7月20日付で破産者の個人情報をインターネット上で掲載しているWEBサイト運営者に対して、情報開示を停止するよう勧告を行っています。

破産者の個人情報については、官報に掲載されています。この情報をインターネット上で掲載するWEBサイトは過去にもありました。それらは既に削除されていますが、再び破産者の個人情報を掲載するWEBサイトが現れたので、それに対する勧告ということになります。

個人情報保護委員会は、個人情報の掲載がなされていることによって違法行為を助長誘発する可能性がある(法19条違反)、利用目的の本人の通知がなされていない(法21条1項違反)、本人の同意なく不特定多数人にデータが閲覧可能な状態にある(法27条1項違反)を理由として、法145条1項に基づき勧告を行っています。

もっとも、WEBサイトは海外のサーバー上にデータが存在し、運営者に関する連絡手段も存在しないことから個人情報保護委員会は公示送達により勧告を行っているに留まっています。

しかしながら、今日(2022年8月6日現在)も、問題となっているWEBサイトでは引き続き破産者の個人情報(住所氏名)をインターネット上での公開を続けており、ビットコインの支払を行わなければ情報削除には応じないとしています。今のところ、個人情報保護委員会の勧告に従う様子はありません。

このようなサイトが現れる背景には、破産者の個人情報が官報に掲載されているという点があり、弁護士会の消費者保護委員会等でもこの点が問題にされています。もっとも債権者側からすれば破産者の個人情報を知る必要性も存在しており、破産者の個人情報の公開をどうするかについては議論の余地があるところです。

現時点では、破産者の個人情報をインターネット上で公開されてしまうリスクがあることを前提として、破産手続を行うか否かについて検討を行う必要があると言えそうです。

投稿者: 弁護士大窪和久

2022.06.24更新

インターネット上において、犯罪歴が投稿されてしまい、生活に支障が出るので削除できないかという相談をよく受けます。

しかし、インターネット上の犯罪歴の削除請求については容易ではありません。2017年1月31日に最高裁がグーグル上の検索結果(犯罪歴が示されている)の削除について「当該事実を公表されない法的利益と当該URL等情報を検索結果として提供する理由に関する諸事情を比較衡量して判断すべきもので,その結果,当該事実を公表されない法的利益が優越することが明らかな場合には,検索事業者に対し,当該URL等情報を検索結果から削除することを求めることができるものと解するのが相当である」との判断を行っています。その後の下級審では、インターネット上の犯罪歴の削除請求においては同最高裁判例の考え方に従い、犯罪歴は公共の利害に関する事項であって本件事実を公表されない法的利益が優越することが「明らか」であるとはいえないとして請求を認めない判断をすることが多くなりました。

ただ、上記最高裁の判断は検索事業者の事業の性格(インターネット上の情報流通の基盤)に着目したものであって、検索事業者以外について同様の判断をすべきか否かという点は別途考慮されるべきところです。

この点、2022年6月24日に最高裁はツイッター上での犯罪歴の削除請求について新たな判断を行いました。最高裁は、犯罪事実の削除の可否については、「上告人の本件事実を公表されない法的利益と本件各ツイートを一般の閲覧に供し続ける理由に関する諸事情を比較衡量して判断すべきものであって、その結果、本件事実を公表されない法的利益が本件各ツイートを一般の閲覧に供し続ける理由に優越する場合には、本件各ツイートの削除を求めることができるものと解するのが相当である」と判断しました。原審はツイートの削除については「犯罪事実を公表されない法的利益が優越することが明らかな場合」に限られるという前記2017年1月31日の規範をつかって判断していますが、最高裁は「ツイッターの利用者に提供しているサービスの内容やツイッターの利用の実態等を考慮しても、 そのように解することはできない」とこれを否定しています。

したがって、インターネット上での犯罪歴の削除請求(検索結果を除く)については、犯罪事実を公表されない法的利益が優越することが「明らか」な場合に限らず、優越すると認められる場合にも認められることが最高裁の判断により明確になりました。今後の裁判所の判断にも大きく影響するものですので、ここで紹介させて頂きました。

なお、2022年6月24日最高裁判決の補足意見(草野耕一裁判官)は、犯罪の実名報道について具体的な効用があるのかという点について検討を行っており、その内容が大変説得的であると考えました。該当部分は次の通りです。

「実名報道がもたらす第一の効用は、実名報道の制裁としての働きの中に求めることができる。実名報道に、一般予防、特別予防及び応報感情の充足という制裁に固有の効用があることは否定し難い事実であろう(この効用をもたらす実名報道の機能を、以下、「実名報道の制裁的機能」という。)。しかしながら、犯罪に対する制裁は国家が独占的に行うというのが我が国憲法秩序の下での基本原則であるから、実名報道の制裁的機能が生み出す効用を是認するとしても、その行使はあくまで司法権の発動によってなされる法律上の制裁に対して付加的な限度においてのみ許容されるべきものであろう。したがって、本事件のように、刑の執行が完了し、刑の言渡しの効力もなくなっている状況下において、実名報道の制裁的機能が もたらす効用をプライバシー侵害の可否をはかるうえでの比較衡量の対象となる社 会的利益として評価する余地は全くないか、あるとしても僅少である。」

「実名報道がもたらす第二の効用は、犯罪者の実名を公表することによって、 当該犯罪者が他者に対して更なる害悪を及ぼす可能性を減少させ得る点に求めることができる(この効用をもたらす実名報道の機能を、以下、「実名報道の社会防衛機能」という。)。しかしながら、この効用は個人のプライバシーに属する事実を みだりに公表されない利益が法的保護の対象となるとする価値判断と原則的に相容れない側面を有している。なぜならば、人が社会の中で有効に自己実現を図っていくためには自己に関する情報の対外的流出をコントロールし得ることが不可欠であり、この点こそがプライバシーが保護されるべき利益であることの中核的理由の一つと考えられるからである。したがって、実名報道の社会防衛機能がもたらす効用をプライバシー侵害の可否をはかるうえでの比較衡量の対象となる社会的利益として評価し得ることがあるとしても、それは、再犯可能性を危惧すべき具体的理由がある場合や凶悪事件によって被害を受けた者(又はその遺族)のトラウマが未だ癒されていない場合、あるいは、犯罪者が公職に就く現実的可能性がある場合など、 しかるべき事情が認められる場合に限られると解するのが相当であるところ、本事件にはそのような事情は見出し難い。」

「第三に、実名報道がなされることにより犯罪者やその家族が受けるであろう 精神的ないしは経済的苦しみを想像することに快楽を見出す人の存在を指摘せねば ならない。人間には他人の不幸に嗜虐的快楽を覚える心性があることは不幸な事実 であり(わが国には、古来「隣りの不幸は蜜の味」と嘯くことを許容するサブカルチャーが存在していると説く社会科学者もいる。)、実名報道がインターネット上で拡散しやすいとすれば、その背景にはこのような人間の心性が少なからぬ役割を果たしているように思われる(この心性ないしはそれがもたらす快楽のことを社会科学の用語を使って、以下、「負の外的選好」といい、負の外的選好をもたらす実名報道の機能を、以下、「実名報道の外的選好機能」という。)。しかしながら、 負の外的選好が、豊かで公正で寛容な社会の形成を妨げるものであることは明白であり、そうである以上、実名報道がもたらす負の外的選好をもってプライバシー侵 害の可否をはかるうえでの比較衡量の対象となる社会的利益と考えることはできない(なお、実名報道の外的選好機能は国民の応報感情を充足させる限度において一定の社会的意義を有しているといえなくもないが、この点については、実名報道の制裁機能の項において既に斟酌されている。)。」

現在のインターネットでは、草野裁判官のいうところの「実名報道の外的選好機能」により、実名報道の内容が広く拡散してしまい、拡散した報道内容を削除することも難しい状態になっています。今回の最高裁判決をうけて、このような状態が少しでも改善されることを期待します。

投稿者: 弁護士大窪和久

2022.06.14更新

本年6月13日に、刑法等の一部を改正する法律が参議院で可決成立しました。

今回の刑法改正の内容の一つとして、侮辱罪の厳罰化があります。現行法では刑法231条において、「事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する」と定められておりますが、改正法ではこれに加え、1年以下の拘禁刑(現行法上の懲役・禁固)、30万円以下の罰金についても課することができるようになりました。この改正の理由としては、「近年における公然と人を侮辱する犯罪の実情等に鑑み、侮辱罪の法定刑を引き上げる必要がある」とのことです。

確かに、私が受ける法律相談の中でも、近年はインターネット上の誹謗中傷が非常に多くなっており、立法事実はあると考えます。また、侮辱罪の場合、法定刑が低いこともあってか、立件できるだけの証拠を被害者側が全て揃えた場合であっても、検察官が不起訴処分にしてしまうなどのケースも見受けられました。

今回の法定刑の引き上げにより、従来より捜査機関が侮辱行為について積極的に捜査立件することになるのではないかと思われます。もっとも、特にSNSの匿名の投稿の場合、捜査機関が捜査に乗り出す前にプロバイダの有する発信ログが消去されてしまい、投稿者の特定に至らず立件もできないといったケースも珍しくはありませんので、まずは弁護士に相談されることをお勧め致します。

 

投稿者: 弁護士大窪和久

2022.05.26更新

日本経済新聞の記事によれば、総務省が今年の夏に改正予定の郵便事業の個人情報保護の指針解説において、弁護士会照会(弁護士会が弁護士会を通じて照会を行ない情報開示を求める制度)による転居者情報の開示を認めるようにするとのことです。

日本郵便は、これまで郵便局に提出された転居届の情報について、弁護士会照会による開示に一切応じてきませんでした。この点、弁護士会照会による報告義務があることについては裁判において認められてきたものの、義務を怠ったことによるペナルティがない(弁護士会が損害賠償を求めた裁判において、最高裁が損害賠償義務を否定する判断をしたため)こともあり、転居先情報が開示されない状態が今も続いています。日弁連も日本郵便に弁護士会照会に対する回答を行なうよう会長談話をだしていますが全く聞き入れられませんでした。

これまで、転居先が分からないことにより裁判等を断念せざるを得ないケースが数多くありましたが、運用が変われば救われる人も出てくることになるでしょう。

 

投稿者: 弁護士大窪和久

2022.04.28更新

2022年度より運用が開始された民事裁判書類電子提出システム(mints)ですが、運用開始される裁判所について裁判所のサイトにて情報が公開されています。

2022年4月21日から、甲府地方裁判所(本庁)及び大津地方裁判所(本庁)にて運用が開始されています。

また、2022年夏から秋頃に、知的財産高等裁判所、東京地方裁判所民事第5部、民事第8部、民事第29部、民事第34部、民事第40部、民事第46部及び民事第47部並びに大阪地方裁判所第21民事部及び第26民事部にて運用が開始されるとのことです。

民事裁判書類電子提出システムについては、現在行なわれているteamsによるWEB会議同様、当事者双方に訴訟代理人がありかつ両代理人が希望する場合のみの運用となりますが、代理人にとって利用しない理由も特段ありませんので、広く使われることになると思います。はやく全ての裁判所にて運用が開始されることを願います。

投稿者: 弁護士大窪和久

2022.04.07更新

2022年度が始まり一週間経過しました。

新年度の目標として、整理整頓をきちんと行なうことを心がけています。

訴訟事件の関係でも、今年度からmints(訴訟書類の電子提出システム)の運用が開始され、印刷した紙が業務に必要なくなることが現実化しつつあります。業務に限らず日常生活からもなるべく紙を一掃して、すっきりとした環境で過ごしていけるようにしたいと考えております。

投稿者: 弁護士大窪和久

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