音声SNSアプリ「Clubhouse」が話題になっています。現在はユーザー数を制限するためか、招待制になっています。私も招待を受けて、どのようなものかを試してみました。
内容としては、音声のみのSNSサービスというもので、モデレーターが作った「ルーム」において、モデレーターとモデレーターが選択した者が話すことができ、その他のユーザーは聞き手に回るというものです。既存のSNSサービスで言えば、ゲーム実況等で使われているdiscordと余り変わりませんが、発言者を「ルーム」の主であるモデレーターが選択することができるのがサービスの肝です。相互コミュニケーションを取るSNSというより、主催者が講演やシンポジウムを手軽に出来るという種類のツールと考えれば良いと思います。
この「Clubhouse」については、今後トラブルが急増することが予想されます。まず「ルーム」内で誹謗中傷やプライバシーの侵害にあたるような発言が行なわれることは今後あるでしょう。ここで問題になるのが、「Clubhouse」では実名での利用が推奨されているものの、実際にはハンドルネームと思われる名称で使っている人が多々おり、その場合どこの誰が誹謗中傷等行なったのか特定しなければならないという点です。他のSNSでもこの点は問題となり、プロバイダ責任制限法による手続により発信者情報開示を行なうことになります。ただ、「Clubhouse」の場合、この記事で中澤弁護士が指摘されているとおり、現時点では日本向けでのサービス提供がされていないことから、日本法は使えず、「Clubhouse」の運営会社のある米国にて証拠開示制度を使う必要があるでしょう。
また、「Clubhouse」を使い、詐欺のトラブルが生じることも今後あると思われます。現時点でも音声の利用が出来るという点で類似のサービス「LINE」を使い、詐欺のトラブルは多発しています。「LINE」同様、「Clubhouse」も電話番号さえ有ればハンドルネームや偽名を使って利用することが可能であり、詐欺の被害に遭ったものの、相手方の情報が分からず泣き寝入りにあうということは考えられます。「LINE」の場合、運営会社は原則として詐欺事件でも利用者の個人情報の開示には応じない姿勢を見せており、警察に相談しても被害救済にはなかなか結びつかないのが現状です。「Clubhouse」がどう対応するかはまだ分かりませんが、これまでの海外のSNS運営会社と同様の対応をとるということであればかなり厳しいのではないかと思われます。以上のような点を踏まえると、「Clubhouse」の素性の分からない相手との取引に関しては応じるべきではないでしょう。