弁護士大窪のコラム

2020.10.21更新

毎日新聞で、「借金を返済せず、強制執行に向けた財産開示手続きで裁判所から命じられた出頭に正当な理由なく応じなかったとして、神奈川県警は20日、開成町の男性介護士(34)を民事執行法違反の疑いで書類送検した。県警によると、財産開示手続きの違反に刑事罰を科した改正法が4月に施行されて全国初の検挙」という内容の報道がありました。

今年4月の法改正により、財産開示手続については見直しがなされています。法改正前も、財産開示手続が行なわれた場合において債務者が正当な理由なく出頭しない場合などには30万円の科料が課せられることになってはいましたが、刑事罰ではないため、債務者が債務を払うより科料を払う方が安く済み財産開示手続に協力しようとはしないのではないかと実効性は疑問視されていました。そのためもあり財産開示手続はお世辞にもあまり使われている制度ではありません。

法改正により、6か月以下の懲役又は50万円以下の罰金という懲役刑を含む刑事罰が加わっており、従前よりは財産開示手続の実効性はあがったのではないかとされていますが、本件が初めての検挙例となるようです。裁判所が告発したのではなく債権者が告発したということですので、今後も裁判所が告発することはあまり期待できないかも知れません。今後の運用についてどうなるかはまだ未知数ですが、このような検挙例が増えていけば財産開示手続を行なうことで結果的に回収に繋がることはありそうです。

投稿者: 弁護士大窪和久

2020.10.20更新

典型的な弁護過誤の例として、民事訴訟における控訴期限の徒過があります。

民事訴訟において、第一審判決に不服があるときには控訴をすることが出来ますが、法律上期限が定められています。民事訴訟法285条では、「控訴は、判決書又は第254条第2項の調書の送達を受けた日から二週間の不変期間内に提起しなければならない」とされています。具体的には、控訴状は、判決正本を受領した日をいれないで、2週間の最終日までに提出する必要があります。これを徒過した場合には、控訴を行なうことが出来なくなります。なお、最終日が土日祝日や年末年始であればその翌日が最終日となりますが、最終日については書記官にあらかじめ確認しておくのが確実でしょう。

控訴状提出のミスでありがちなものは、控訴状の提出先が「判決をした第一審の裁判所」であるにも関わらず、控訴状を高裁に送ってしまうようなケースです。期限ギリギリで速達で郵送して安心したと思いきや、提出すべき期間を徒過してしまい取り返しのつかないことになるということもあります。単純なミスですが事務局に郵送を頼んでいたところそようなことになってしまった、というケースもあります。

弁護士が控訴期限を徒過した場合、弁護士としての基本的な業務を怠ったとして、懲戒請求されその結果懲戒例は多数有ります。

また、弁護士が控訴していれば勝訴していたとして訴訟での請求額相当の損害賠償を求めるということもあります。ただ、この場合請求額がそのまま損害になるかというとそういうわけでもなく、控訴審において勝訴の見込みがどの程度あったかが問題となります(過去の裁判例では、控訴したとしても勝訴の見込みがなかったとして弁護士に対する損害賠償を認めなかったものもあります(昭和60年1月23日横浜地判 判例時報1181号119頁等))。一方、訴訟まで行かずとも弁護士が加入している弁護士損害賠償保険により一定額の賠償がなされるというケースもあります。

本来有ってはならないことではありますが、万が一自分が依頼した弁護士が控訴期間徒過のような弁護過誤を行なった場合には、どのような対応が妥当かについて他の弁護士にセカンドオピニオンをとって判断するのも良いと思います。

 

投稿者: 弁護士大窪和久

2020.10.19更新

日本語の文書作成のアプリケーションとしては様々なものがありますが、一番多く使われているのはWORDだと思います。ただ当業界では、文書作成に一太郎を使っている人が比較的多く、人気も根強いものがあります。

一太郎が使われている理由として、WINDOWSリリース前からずっと使われてきたものであること、裁判所を含む官公庁で使われていた経緯があること、および文書作成の際レイアウトが崩れにくい等機能的に優れている点があること等が上げられます。

私自身も、司法修習時代には使用していたのですが、弁護士になってから事務所の先輩より、一太郎の作成するjtdファイルをみることができないので、一太郎を使うのをやめてWORDを使うようにしてもらいたいと命令されました。素直にその命令に従い、以後一太郎を使うことはなくなりました。

一太郎は、WINDOWS環境で一人で文書作成をしている分には良いアプリケーションではあるのですが、前記エピソードの通り、作成するファイルがWORDのファイル(doc,docx)と異なり、ファイルを共有するのに不適です。また、MAC環境やスマートフォン・タブレットでは一太郎が使えず、jtdファイルも参照できないという難点もあります。特にスマートフォン・タブレットで編集はおろか参照も出来ないというのは今となっては大きなデメリットであり、今後あえて使用する必要は無いと個人的には考えています。

弁護団等でも、過去にはjtdファイルが流されて参照できないということもありましたが、今はそのようなことはほとんど無くなりました。先輩の言うことに従い早くからWORDに切り替えておいて良かったと思います。

投稿者: 弁護士大窪和久

2020.10.16更新

刑事裁判の場合、弁護人は検察が裁判所に提出予定の証拠について確認する必要があります。ただ、検察が弁護人に証拠のコピーを送ってくれるわけではありません(民事訴訟の場合、相手方に対し証拠の写しを送る必要がありますが、刑事裁判の場合そのようにルール設計がされているわけではありません)。弁護人が検察庁に直接いって証拠を謄写するのが原則となります。

もっとも、東京地検の場合、謄写センターで有料にてコピーをとってもらうことが可能です。また弁護士会の協同組合で謄写を受け付けてくれることもあります。ただ費用としては一枚数十円かかりますし、地方によってはそれ以上の負担が生じることもあります。

そのような費用的な問題で、私がかつて紋別の公設事務所にいた頃は、たまに実費を支払うので謄写をかわりにしてもらいたいという話を遠隔地の弁護士から求められたことはありました。断ると「弁護士会の金で事務所をおいているのにできないのはどういうことか」と憤られる方もいないわけではありませんでした。

記録謄写を公設事務所の弁護士に求めないようにという申し出等を弁護士会の方でしていただいたこともあり、次第にそのようなこともなくなりましたが、遠隔地の記録謄写が刑事弁護を行なう上でネックになっている現実そのものは今も変わっておりません。

この記録謄写に関しては、そもそも電子データによる謄写物の交付がなされれれば上記のような問題は一気に解決してしまうはずです。しかしながら、検察側はそのようなことは一切考えておりません。また東京地検謄写センターもまたそのようなことは行なわない旨明言しています(リンク先の高野先生のブログ参照)。民事裁判についてはIT化が進む中、刑事裁判だけが旧態依然とした紙中心の裁判から変化しようとしません。これは法改正により是正しなければいけない問題だと思います。

投稿者: 弁護士大窪和久

2020.10.15更新

今年は日弁連ひまわり基金20周年ということで各地でイベントが行なわれていますが、日弁連でオンラインシンポジウムが行なわれます。

本シンポジウムでは、私が紋別の公設事務所にいたときも市長であった宮川良一紋別市長、私と同じく56期で東京の事務所で養成を受けてその後活躍した林信行先生と葦名ゆき先生(56期で公設事務所にて仕事をした弁護士は私を含めていろいろな人がいましたが、この二人はその中でもエース級の働きをされたと思います)が参加されます。私が紋別にいた頃は若くがむしゃらに仕事をしていましたが、今はもうそれも歴史の一部になったと思うと感慨深いものがあります。

・日時 

2020年11月24日(火) 13時00分~16時15分

・タイトル

日弁連ひまわり基金20周年記念シンポジウム『ここに弁護士がいてよかった』

・視聴方法

こちらのリンクから(開催後も視聴可能) https://video.ibm.com/channel/nichibenren 

・イベント情報

日弁連のサイト https://www.nichibenren.or.jp/event/year/2020/201124.html

投稿者: 弁護士大窪和久

2020.10.14更新

数日前のブログでも書きましたが、日本時間14日午前2時よりAppleのスペシャルイベントがあり、その場でiPhone12の発表がありました。

iPhone12は4種類あり、iPhone12、サイズが小さいiPhone 12 mini、カメラの機能等が充実しているiPhone12 ProとiPhone 12 Pro Maxの4機種が発売されると言うことです。いずれも5G対応ですが、私は最上位機種であるiPhone 12 Pro Maxを購入予定です。購入できるのは11月に入ってからとなりますが、購入後感想等を当ブログで書くかも知れません。

5G対応が一番の特色だと思いますが、新しいワイヤレス充電システムであるMagSafeも個人的には興味があります。iPhoneの背中に磁力でくっ付けて充電するということのようです。従来のワイヤレス充電ですと、充電器との位置のずれが生じて充電できないということもあったのですが、MagSafeがあったならそのようなことも少なくなるのかなと思います。

また、春先にiPhoneSE2を購入してしまったので買い換えまではしませんが、サイズがSE2よりも小さくなったiPhone 12 miniも大変魅力的な製品だと思いました。

投稿者: 弁護士大窪和久

2020.10.13更新

今日はメトロコマース事件大阪医科大学事件の上告審判決が出ています。どちらも最高裁HPに既に判決文が掲載されています。

いずれも短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律8条(改正前の労働契約法20条)が禁じる不合理な条件の禁止にあたるかが問題となった事件で、メトロコマース事件では退職金、大阪医科大学事件では賞与について正社員と契約社員との間の格差が問題となりました。

いずれも高裁判決では格差が不合理であるという判断を行なっていますが、最高裁はこれを覆し、格差の不合理性を否定し使用者側に有利な判断を下しています。

もっとも、メトロコマース事件の方は反対意見があります。反対意見によれば、正社員と契約社員の職務の内容等に大きな相違がないことからすると、退職金についての使用者の裁量判断を尊重するとしても、不合理な条件の禁止にあたるといえ、高裁判決を破棄するには及ばないとしています。最高裁の判断はいずれも事例判断であり、実際の事件にそのままあてはまるものではないので反対意見の考え方も踏まえて考慮していく必要はあるでしょう。

投稿者: 弁護士大窪和久

2020.10.12更新

手軽にVRを楽しめるVRヘッドセットとして、Oculus Questがあります。PCやゲーム機といった親機と接続することなくスタンドアローンで映像やゲームなどを体験することができる製品

私自身も購入して試してみましたが、確かに画期的な製品だと思いましたが、既存のゲーム機・スマートフォンと比べて画素が荒く、まだまだ発展途上のものであるという感想を抱いています。

この新製品であるOculus Quest 2が明日発売となります。カタログスペックでいうと既存機を遙かに上回るものであり、期待できるかもしれません。

ただその反面、Oculus Quest 2などOculusのヘッドセットを使うに当たって、今月よりfacebookのアカウントが必須となったことがインターネット上で議論となっています。2014年にOculusを買収したFacebookの意向によるものですが、facebookのアカウントで登録したところアカウントが凍結されてしまい、使用できなくなったというケースが少なからず報告されているようです。また、そもそもこのOculusのログインにFacebookアカウントを必須とすることは反トラスト法(独占禁止法)に引っかかる可能性もあるとの指摘もあります。

上記のような問題もありますので、購入に当たっては様子を見ておき、問題が解決された段階で新規購入してみようかと思います。

 

投稿者: 弁護士大窪和久

2020.10.10更新

Appleが10月14日にスペシャルイベントを行なうとの発表がなされています。

このブログを書いている時点では、内容については明らかにされていませんが、例年通りですといよいよiPhoneの新機種がでるのではないかと予想され、各種メディアでも出るであろうiPhoneについて予測記事が出されています。

engadgetによれば、「今回は次期フラッグシップiPhone 12(仮)シリーズの発表が確実視されています。その内訳は、おそらく前年のiPhone 11シリーズをしのぐ画面サイズ3種類/4モデル。そのうち背面カメラが2つのエントリーモデルが5.4インチおよび6.1インチ、高価で背面カメラが3つのProモデルが6.1インチおよび6.7インチの2つとの予測が主流となっています」とのことで、各種ニーズに応えた機種展開になる模様です。

個人的に一番注目しているのは、5G対応です。すでにandroidの機種では5G対応のものが多数リリースされており、iPhoneは出遅れてしまっています。まだまだキャリアのエリアが整っていないとはいえ、5Gはこれまでのインターネットの使われ方を大きく変える可能性があるものであることは間違いなく、iPhoneでも対応をいち早くして欲しかったところです。発表を見て5G対応モデルがリリースされるなら買い換えを予定しています。

 

投稿者: 弁護士大窪和久

2020.10.06更新

普段持ち歩く物(バッグ、財布、鍵、スマホ等)については、ヒューマンエラーにより落としたり忘れたりする危険は避けて通れません。無くしてはいけない物については持ち歩かないのが一番ですが、持ち歩かざるを得ない物もあります。

そのような紛失したら困るけれども持ち歩かざるを得ない物について探し出せる手段を確保しておくことは重要です。スマートフォンであれば、今ではクラウドサービスを使って(私の私用しているiPhoneであれば、icloudの「探す」機能)紛失した場所を追跡することは可能であり、それで発見に至るということもあります。それ以外の物についても、忘れ物トラッカーを付けていれば、場所を探し出せる可能性は高まります。

私が使い続けている忘れ物トラッカーは「tile」という製品になります。これはスマートフォンとBluetoothで接続されており、接続されているスマートフォン経由で場所を記録しています。そして物をなくした場合でも、Bluetoothで接続されている範囲であれば忘れ物トラッカーから音を出して発見することができます。

また、スマートフォンと忘れ物トラッカーの位置が離れBluetoothの接続されている範囲外になった場合も、接続が切れた場所を記録しており、スマートフォンのアプリで探すことが可能です。また紛失した忘れ物トラッカーについて、他のユーザーがBluetoothで接続した場合、場所についてアプリに通知が来ます(クラウド経由なので個人情報が漏れることはないとのことです)。

さらに、サブスクリプションサービスに入る必要はありますが、忘れ物トラッカーをどこかに置き忘れても、離れるとスマホに通知が発せられる機能もあり、忘れてしまう前に気づくこともできます。

忘れ物トラッカーを購入することで(サブスクリプションに入る場合はその費用も含め)一定のコストはかかってしまいますが、忘れ物を探す時間や見つからなかった場合のロスを考えれば、払う意味があるコストだと思います。私はバッグ、財布、鍵、AirPodsproの入ったケース、ジムのカードケース等に忘れ物トラッカーを付けています。自宅内でどこにいったか探すなどにもちょくちょくお世話になっているので、十分恩恵にあずかっています。お勧めです。

投稿者: 弁護士大窪和久

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