弁護士大窪のコラム

2021.01.05更新

報道によれば、東京、埼玉、千葉、神奈川の1都3県を対象とした、特別措置法に基づく緊急事態宣言がだされるとのことです。今回の緊急事態宣言では、飲食店に対して閉店時間を午後8時に前倒しすることが主な内容であり、昨年行なわれた緊急事態宣言のように学校の休校を行なったり、映画館劇場の営業自粛を求めたりすることはなく、限定的な内容のようです。

緊急事態宣言の再発令で気になるのは、緊急事態宣言再発令により裁判所はどうするかという点です。

昨年の緊急事態宣言が行なわれた際、裁判所は業務を(一部を除いて)停止しました。東京地裁の場合、原則として5月7日から5月末日までの裁判期日指定を取消し、6月以降に順次再開するという扱いを行ないました。6月以降も法廷を隔週開廷としたため、裁判が大幅に(数ヶ月~半年程度)遅延してしまい、現在もその状況が続いています。

今回の緊急事態宣言でも同様の対応を行なった場合、予定されていた裁判は緊急事態宣言期間中は原則として止まってしまい、更に大幅な裁判遅延がもたらされることは必須です。裁判所が再度の緊急事態宣言に備えてIT設備の拡充等なんらかの準備を行なってきたということもありませんので、見通しとしては悲観的にせざるを得ません。

もっとも、前回の緊急事態宣言でも、緊急性のある事件(民事保全、DV事件、人身保護事件等)は期日が開かれましたので、そのような事案については今回も期日が開かれるのではないかと思います。

新形コロナウイルスの感染拡大は国内外でも封じ込めに成功した台湾のような国を除いて終わる見通しを見せません。日本でも今後また感染拡大により緊急事態宣言に追い込まれることもあると思いますので、司法に限らずどうやって感染拡大している中でも業務を続ける道を作るか検討していく必要はあるでしょう。

投稿者: 弁護士大窪和久

2021.01.05更新

あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願い致します。

昨年は新形コロナウイルスの感染拡大により、司法も含めた社会全体が大きく影響を被った一年でありました。予定されていた五輪も一年間延期されてしまい、その他の人の集まる機会もほとんど失われることになってしまいました。

本年に入っても、新形コロナウイルスの感染拡大が世界的に続き、新年早々東京では緊急事態宣言が出される旨の報道がされています。

我々人類は疫病と闘い続ける歴史を経験していますが、今もその厳しい最前線にあると言えます。大変厳しい状況ですが、もう一年生き延び、依頼者のために業務を続けていければと思います。

投稿者: 弁護士大窪和久

2020.12.28更新

2020年も終わりにさしかかりました。

今年一年を振り返ってみると、新形コロナウイルスの感染拡大によりどの立場にある人も大変な影響を被ったということがとても大きいと思います。

司法に関しても、緊急事態宣言に伴い長期間裁判所の期日が原則として行なわれなくなり、手続の遅延が著しいことになりました。日本では司法のIT化がようやくスタートラインに立ったところであり、裁判所に行かなければ裁判を受けられないという旧態依然としたシステムの弊害が明らかになりました。新形コロナウイルスの感染拡大については、年末にかけても広がっているところであり、再度裁判手続が中止せざるを得ないという事態に追い込まれることもあるかも知れません。

新形コロナウイルスの感染拡大以外の司法のトピックとしては、カルロス・ゴーンさんの事件をきっかけとして、日本の人質司法がクローズアップされたことが大きかったです。我々刑事弁護人にとっては、被疑者を身柄拘束して、弁護士の立ち会いも取調には認めず、長時間の自白を事実上強要し、その調書をもととして有罪判決が作り上げられているという実態は常識ですが、こうした実態が国外に知れ渡ったことになります。もっとも法務省は国外からの批判に一切耳を傾けていません。年末年始の時期も変わらず身柄を拘束され、自白を強要されている人が多数いることは今年も変わりませんでした。

日本の司法システムが、諸外国に比べても色々な面で後れを取っていることはもはや明らかだと思いますが、変化のスピードはとても緩慢です。司法に携わっている一人としては強い無力感を覚えますが、現在の古い司法システムの中において、一弁護士としてできる限り依頼者の役に立つように来年度以降も精進していきたいと思います。

 

投稿者: 弁護士大窪和久

2020.12.23更新

最高裁が袴田事件の高裁決定(1審で行なわれた再審決定を覆す)を取消、東京高裁に差し戻した上で再度審理するべきという決定を行ないました。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20201223/k10012779771000.html

本件決定で興味深いのは、5人の裁判官のうち2人が、東京高裁での審理をさせるのではなく、最高裁自ら再審開始決定の判断をすべきだという意見をだしていることです。

2人の裁判官は、本件で出されている証拠(DNA鑑定と、みそ漬けの再現実験の報告書)はいずれも新証拠として認められる物で、高裁の審理を要することなく再審開始の要件をみたすものであり、高裁に差し戻すことにより時間を費やすことに反対するという理由から、上記意見を出しています。最高裁の裁判官がこのような意見を出すのは異例ですが、この事件が既に50年余り費やしている事件であることを鑑みれば、2人の裁判官がこのような意見を出すことはうなずけます。1審で行なわれた再審決定からも既に6年も経過しており、高裁差戻の再審決定→再審開始も更に時間を要するのは当事者にとって酷にすぎるといえるでしょう。

投稿者: 弁護士大窪和久

2020.12.20更新

本年ももうすぐ終わろうとしていますが、今年において最も弁護士業務の効率化に貢献したサービスは、「弁護革命」だろうと私は思います。「弁護革命」の名前に偽りなしですし、後藤貞人先生、高野隆先生の推薦文の内容にも納得です。

弁護革命のサイトはこちら

弁護革命の最大の特徴は、大量の文書(PDFなど)を放り込むと、AIが全文テキスト・タイトル・日付・証拠番号まで自動で付けてくれ、テキストを抜き出してくれるところです。サイト上で文書をキーワードで検索することが出来ます。

実際にPDFをアップロードするとこの画像のようになります。画面上でPDFをテキスト化した情報を参照して、コピーアンドペーストすることができます。

弁護革命サンプル

とにかく大量の文書を整理することに向いており、刑事事件の尋問案を検討したり、民事事件の最終準備書面案を検討するなど、既存の書面の整理が必要な際にとにかく役に立ちます。特に宣伝を頼まれているわけでもありませんが、一人でも多くの弁護士に使って欲しいと思います。

今年中はキャンペーンで無料ですが、来年から有料になります。興味のある方はお早めに試すことをお勧め致します。

投稿者: 弁護士大窪和久

2020.12.18更新

73期の新人弁護士が登録を始める時期になりました。それに伴い、ツイッター上で「#新人弁護士に言いたいこと」というタグで弁護士が多種多様な投稿を行なっています。

自分の投稿はこれですが、あまり今後の参考にはならないと思います。ただ他の先生方の投稿については、なるほどと思えるものが多いので、一読する価値はあると思います。

他の先生方の投稿にも多くありますが、一番大切なのは、健康で毎日過ごすようにすることだと思います。ストレスの多い仕事ですし、新人時代には労働時間自体も多くなりがちです。それに耐えきれず仕事を辞める弁護士も多いです。仕事で心身を損なわないように長い目で仕事を続けていくことが大切だと思います。

 

投稿者: 弁護士大窪和久

2020.12.09更新

 証拠開示のデジタル化を実現する会(URL https://www.change-discovery.org/)において、今月20日まで、刑事訴訟における検察の証拠開示について、紙でコピーさせるのをやめて電子データで渡すことを求めることについて賛同の署名を募集しております。私も署名いたしました。

 刑事訴訟において、検察官から弁護人は証拠開示を受けることになりますが、この場合原則として弁護側が検察庁に訪れ、証拠を一枚一枚紙でコピーをしなければなりません。このコピー代が馬鹿にならず、例えば私が現在弁護人になっている事件(公訴事実に争い有り)でも、コピー代が50万円以上に達しています。コロナ渦の現在においても、紙のコピーを取りに行ったり、業者がコピーした大量の紙のコピーを引き取りに行かねばなりません。遠隔地の検察庁であれば、わざわざ紙のコピーを確保するために、弁護人側がコピー代だけではなく旅費等も負担した上証拠開示を受けることも珍しくはありません。

 民事訴訟では、IT化が徐々にでは有りますが日本でも進みつつあり、書証についてもデジタルデータでの提出が議論されていますが、刑事裁判においては明治時代と変わらない紙ベースの裁判が続けられており、大量の書面が用いられています。IT化の議論も全くなされていませんし、証拠開示についても検察庁は証拠をPDFファイルなどの電子データで渡すことを拒否しています。ただこれは極めて非効率ですし、個人がコピー代等大きな負担を強いられることになってしまいます。

 証拠開示のデジタル化を実現する会のサイトでは、海外の事例も紹介されています。例えば、隣国韓国では、民事訴訟だけではなく刑事訴訟のデジタル化も進めているということです。韓国は民事訴訟のIT化については日本の10年先を進んでいますが、刑事訴訟でも先を行かれることになりそうです。また、アメリカNY市では、クラウドストレージでの証拠開示が行なわれているようです。

 時代遅れの司法によって個人が不利益を受けるという実態を少しでも改善していく必要があります。悪しき実態を改善させるため、刑事裁判の証拠開示はデジタル化されるべきと考えます。賛同頂ける方は証拠開示のデジタル化を実現する会の賛同の署名をお願い致します。

  

 

 

 

投稿者: 弁護士大窪和久

2020.11.26更新

以前こちらのブログで紹介しました、ひまわり基金20周年記念シンポジウム配信イベントの動画が下記リンク先で配信が開始されました。

https://video.ibm.com/recorded/128653485

 

イベント中、枝幸ひまわり基金法律事務所での活動も動画にされて取り上げられています。枝幸をはじめとする中頓別簡裁管内は、弁護士がいる地域へのアクセスが困難であり、地元からも弁護士の赴任が心待ちにされていました。この点、法テラスは地元の要請にも関わらず、相談数が見込めないとして事務所を設立することを拒絶しました。このため、日本弁護士連合会が資金を援助して公設事務所を設立し弁護士を赴任させています(日弁連の資金は弁護士が自腹を切っているものであり、公助より共助や自助を優先する「日本らしい」経緯を辿っていると思います)。そうして出来た事務所が地元に受け入れられ、弁護士が活躍しているのを見るのは大変感慨深いものがあります。

投稿者: 弁護士大窪和久

2020.11.21更新

民事裁判のIT化がようやく日本でも始まりつつありますが、民事裁判のIT化を進める上で出された意見として、本人訴訟の場合どうするのかというものがあります。

この点、2020年11月20日付河北新報の記事では、このように書かれています。

「日本の民事裁判では、弁護士を付けず訴えを起こす「本人訴訟」が認められている。原告がアプリを使う際に手間取った時、誰がどうサポートするのか。代理人は技術的に精通する必要があろう。訴訟当事者が習熟度により不利益を被ることがないよう、弁護士会によるバックアップが欠かせない。」

この記事ではあたかも本人訴訟でも当然に何某かの代理人がつくかのような書きぶりをしておりますが、実際には本人訴訟を行なう場合に裁判所や第三者が代理人を付けてくれることはありません(たまに民事事件で国選弁護人のような制度は無いのかと聞かれることはありますが、そのようなものはありません)。ですので訴訟でのアプリ利用等についても、当事者本人がなさねばならないことになります。

また、記事では弁護士会によるバックアップが期待されています。この点日弁連では、昨年9月12日付で、「民事裁判手続のIT化における本人サポートに関する基本方針」というものを出しています。その中で本人訴訟支援について「裁判を受ける権利を実質的に保障して必要な法律サービスを提供することを可能とするため,IT面についても必要なサポートを提供する」と打ちだしています。もっとも、そればかりではなく、「民事裁判手続のIT化は,新たな司法システムの構築を目指すものであり,それに伴い裁判を受ける権利に支障が生じる場合は,国がその責任において支障を除去することは当然である」として、国に十全なサポート体制の構築や支援を求めてもいるのです。

上記日弁連の基本方針にもあるように、本来的には、本人訴訟については国がバックアップすべき問題です。隣国の韓国では、代理人弁護士においては電子訴訟を推奨する一方、当事者本人の場合は従前通りの紙による裁判の機会を与えており、記録の電子化等については裁判所が行なっています。また他国でも、記録の電子化については国が行なうということをしています。他方、日本の裁判所は、今までの議論の中では本人訴訟の支援について全く行なう姿勢を見せておらず、当事者本人の「自助」任せにするということのようです。マスメディアにおかれては、民事裁判のIT化による当事者の負担について、国あるいは裁判所がサボタージュしてなんら対応しようとしていない点についても着目していただきたいものです。

投稿者: 弁護士大窪和久

2020.11.18更新

先日、櫻井光政弁護士(私の所属する桜丘法律事務所所長)が原告として、東京地検特捜部が業務上横領容疑で捜査対象とした男性を任意で取り調べた際、検事から接見を妨害されたことについて国賠を求めた事件の判決がありました。判決では弁護権の違法な侵害を認め、10万円の慰謝料の支払を命じています。

事実関係については、現在進行中の事件に関することでもありますので、こちらの記事で書いてあるような原告本人が記者会見で述べた内容以上のことを現時点でここで開示する予定はありません(なお、櫻井、私を含む当事務所の弁護士が弁護団をつくっています)。

ただ、本件は、任意取調中の検察の接見妨害について接見妨害を認めた先例として価値がある判決だと考えています。曲がりなりにも特捜たる存在がこのような違法な接見妨害を行なってまで被疑者の調書を取っていることが、まさにこの国の人質司法の病理を体現しているものと言わざるを得ません。

(2020.11.19 追記)

事務所のブログで櫻井弁護士が記事を書いておりますのでご参照ください。

投稿者: 弁護士大窪和久

前へ 前へ

SEARCH

弁護士大窪のコラム 桜丘法律事務所

法律相談であなたのお悩みお話ししてみませんか?

法律相談は、今後に対する見通しを立てるプロセス。
正式依頼は、具体的に関係者などへ働きかけていくプロセスです。
この両者は全く異なりますので、別物としてお考えください。
法律相談で得た知識を元に、ご自分で進めてみても良いでしょう。

桜丘法律事務所 弁護士 大窪和久 TEL:03-3780-0991 受付時間 9:30~20:00 定休日 土曜日曜・祝日 住所 〒150-0031 東京都渋谷区桜丘町17-6 渋谷協栄ビル7階 24時間WEB予約。受付時間外はこちらからご連絡ください。 WEBでのご予約・ご相談はこちら
sp_bn01.png
予約はこちらから