弁護士大窪のコラム

2018.09.05更新

 インターネットに関する相談の中で、近年良く受けているのがいわゆるまとめサイトに誹謗中傷の投稿が掲載されているというものです。
 

 まとめサイトとは、匿名掲示板等やSNSの投稿をまとめて記事にして掲載しているサイトのことをいいます。したがって、例えば誹謗中傷の投稿が匿名掲示板に書かれていった場合にまとめサイトでもその誹謗中傷の投稿が掲載されることになります。
 

検索エンジンなどで人名を検索した場合、元となった匿名掲示板やSNSの投稿よりもまとめサイトの投稿の方が上位に来ることも良くあります。匿名掲示板やSNSについては読む人も利用者に限られますが、まとめサイトは匿名掲示板やSNSの利用者以外にも読者があるからです。まして有名なまとめサイトに投稿が掲載された場合には読者が爆発的に増えることにもなります。

 匿名掲示板やSNSの場合、誹謗中傷の投稿削除要望に対応する窓口が作られており、(曲がりなりにも)削除対応されるためそれで投稿が削除されることもあります。ただまとめサイトの場合、そもそも運営主体がどこなのかサイト上で明記されていないものがほとんどですし、連絡先とされているメールアドレスへ連絡しても無視されることも良くあります。そのため掲載元の匿名掲示板やSNSよりも投稿削除が難しいということになりがちです。

 ただ、このような運営主体が不明なまとめサイトであっても、どこかのサーバーを利用します。そこでサーバーを管理する会社を特定した上、そのサーバー管理会社を相手にしてプロバイダ責任制限法(特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律)により投稿削除を請求することができます。弁護士が投稿削除の依頼を受けた場合も、サーバー管理会社に対して削除請求を行って投稿を速やかに削除させるのが通例です。

 まとめサイト上の投稿削除だけではなく、まとめサイトにより誹謗中傷の投稿が広められたことについての損害賠償責任をとってもらいたいという思いもあるでしょう。この点近時まとめサイトの行ったまとめ投稿に対し、不法行為に基づく損害賠償が認められた裁判例(大阪地裁平成29年11月16日判決 判例時報2372号59頁)の事案が参考になるかと思いますのでご紹介いたします。

 この事案では、匿名掲示板の投稿をまとめサイトに掲載したことにより原告の権利を新たに侵害したかどうかが争点となりました。この点被告(まとめサイトの運営)側は、仮にまとめサイト上に問題がある投稿の掲載があったとしても、原告の権利はあくまで掲載元の匿名掲示板の投稿により侵害されたにすぎず、まとめサイト上の掲載が新たに原告の権利を侵害したとはいえないと主張しています。

 ただ裁判所は、サイト上の掲載では表題の作成や表記文字の強調等が行われていることや、まとめサイト上に多数のコメントが掲載されており多くの読者がいること等からすると、まとめサイト上の投稿は引用元の匿名掲示板の投稿とは異なる新たな意味合いを有するものであるとして、被告の主張を排斥し、まとめサイト上の掲載が新たに原告の権利を侵害したと認めました。なお、地裁での判決の後本年6月に大阪高裁で本件の控訴審判決が出されていますが、地裁の判断を維持しています。

 上記裁判例の考え方に従えば、まとめサイト上の投稿に対してまとめサイトの運営者に対しても損害賠償請求を行うこともありえることになります。

 まとめサイト上の誹謗中傷の投稿については運営者がどこの誰だか分からないこともあって泣き寝入りする人も多いですが、弁護士に依頼すれば投稿削除や被害回復へ繋げていくこともできますので、まず弁護士に相談されることをお勧めいたします。

投稿者: 弁護士大窪和久

2018.05.24更新

 最近、インターネット上でのなりすまし行為についての相談を多く受け付けております。

インターネット上でのなりすまし行為とは、本人の実名や本人がインターネット上で使っているハンドルネームをつかったり、本人の写っている画像を使ったりしてあたかも本人がそのアカウントを使っているような形でインターネットの掲示板やSNSで投稿を行うことを指します。

 インターネット上でのなりすまし行為が続いて本人であれば絶対に投稿しないような内容が投稿されネット上に拡散された結果、本人の名誉が毀損され続けるということも珍しくありません。またインターネット上のなりすまし行為による被害は有名人ばかりではなく、一般の方でも多いのが実情です。本人の知り合いが嫌がらせでインターネット上のなりすまし行為を行うということも少なくありません。

 インターネット上のなりすまし行為は、どうせ自分がやっていることがばれることはないだろうという安易な気持ちで行っている人が多いようです。確かになりすまして投稿する際には、どこかに自分の実名や住所を入力するわけではありませんので、自分がやっていることが特定されるわけはないだろうと考えるのでしょう。

 しかしながら実際には裁判上の手続を使いインターネット上でのなりすまし行為をした者を特定することは可能です。特定するためにはまず投稿がなされたサイトやSNSを運営する会社に対して仮処分を申立て、投稿者の発信者情報(ログイン時のIPアドレス)の開示を求めます。開示された投稿者の発信者情報からは投稿者が利用しているプロバイダが特定できます。そのプロバイダの運営会社に対して発信者情報開示請求訴訟を提起して判決を得れば投稿者の情報(氏名、住所、メールアドレスなど)が判明し、投稿者の特定に至ります。

 インターネット上でのなりすまし行為により本人の名誉が毀損されている場合には、加害者に対しては損害賠償請求を行うことが可能です。それでは具体的にどの程度の損害賠償が得られるのでしょうか。損害賠償の金額は事案の内容によりますが、近時判例タイムズで紹介された裁判例(大阪地裁平成29年8月30日判決 判例タイムズ1445号202頁)の事案が参考になるかと思いますのでご紹介いたします。

 この事案では、加害者はSNSで被害者のなりすましアカウント(被害者がSNSで使っていたアカウント名と同じ名前を使い、かつ被害者の顔写真を使用したもの)をSNSで作りました。このなりすましアカウントは約一か月程度SNS上にそのままの状態で存在していました。そして加害者はこのなりすましアカウントを使って、他者に対し「ザコなんですか」「お前の性格の醜さは、みなが知った事だろう」などといった誹謗中傷を繰り返したり、被害者の顔について醜い顔である旨の侮辱行為を行っていました。そこで被害者は加害者を特定した上で、損害賠償請求訴訟を裁判所に提起したのです。

 裁判所はこの加害者のなりすまし行為によって、被害者の名誉権及び肖像権が侵害されたとして、加害者に対し慰謝料60万円の支払を命じました。

 しかし裁判所が認めた損害はこの慰謝料だけではありません。被害者は加害者を特定するために、SNSの運営会社に対する仮処分およびプロバイダに対する発信者情報開示訴訟を行いましたが、その為に58万6000円の弁護士費用を負担しました。この弁護士費用についても損害として加害者に対して支払を命じているのです。

 さらに裁判所はこの損害賠償請求訴訟自体の弁護士費用(12万円)も損害として加害者に対して支払を命じておりますので、合計130万6000円の損害賠償責任を加害者は負うこととなったのです。
 
 安直な気持ちで行ったなりすまし行為であっても、その結果上記のように大きな代償を払うことになることは良く知っておくべきだと思います。
 
 また一方で、なりすまし行為がどこの誰によって行われたか分からないと言って泣き寝入りする人も多いですが、法的手続をしっかりとっていけば上記のような形で判決を得た上で被害回復へ繋げることもできますので、被害にあったら弁護士に相談されることをお勧めいたします。

投稿者: 弁護士大窪和久

2018.04.11更新

先日、株式会社ロイヤル、ヒッグスコミック株式会社、株式会社アヤコン及びその関係会社による被害(無料エステを受けられるとの勧誘を受け、多額のクレジット契約を結ばされる)救済を目的として設立された「ロイヤル・ヒッグスコミック・アヤコン被害弁護団」が結成されました。私も団員として活動しております。

弁護団のサイトはこちら

被害者の方々は、「エステが無料で受けられます。」などといった勧誘文言により、エステを受けるための条件であるなどと称して、株式会社ロイヤルやヒッグスコミック株式会社、株式会社アヤコンらが販売する美容関連商品や会員権などを購入させられて(あるいはエステ契約をさせられ)、その代金支払に関しクレジット契約を締結させられています。

被害者の方々は、上記契約と併せて、当該販売商品をレンタル先にレンタルする契約をさせられ、当該レンタル料によりクレジット支払ができると説明を受けていましたが、その後、既にレンタル会社の全てがレンタル料の支払を停止していると考えられ、被害者らは自分でクレジット負債の支払を開始せざるを得ない状況となっており、その被害が拡大しつつあります。

このため、現在は多数の被害者の方々が、多額のクレジット債務を負担しているという状況にあるものと考えられています。被害者の人数としては当弁護団が把握しているだけでも500人以上に上ります。

当事務所が事務局として相談の受付を行っておりますので、下記相談窓口にお気軽にご連絡ください。

※2020年7月末をもって新規の相談受け付けを終了いたしました。

ご相談窓口
〒150-0031 東京都渋谷区桜丘町17-6
渋谷協栄ビル7階 桜丘法律事務所
電 話 03-3780-0991(平日午前10時~午後5時)
FAX 03-3780-0992

 

 

 

投稿者: 弁護士大窪和久

2017.09.27更新

 ツイッター上で、弁護士が増えた結果として若手弁護士が刑事事件を受ける機会が少なくなり、研鑽を積むのが難しくなっているという話がありました。

 地方にいるときにはあまりそのようなことは感じなかったのですが、東京に戻ってみると、確かに刑事事件の研鑽を積むことが以前に比べて難しくなっていると思いました。弁護士は事件をすることによって学んでいくものなので、事件を受けられないというのはつらいところです。

 もっとも、東京での利点として、各種研修を受ける機会に事欠かないということがあります。地方ですと日弁連の研修の配信をみるにも弁護士会館まで出向かなければなりませんでしたが、そのような苦労もありません。

 当事務所でも、私が地方に派遣される前から刑事専門の神山先生が毎月ゼミを開いており、事務所の弁護士やゼミに参加した弁護士の現在進行中の事件に関して議論を行っております。

 私が派遣される前には相当ここで鍛えられました。帰ってきても以前と変わらず新人がこのゼミで徹底的に鍛えられています。

 今後の日程等については、事務所の方のブログでご案内しています。

 

投稿者: 弁護士大窪和久

2017.09.20更新

当事務所のブログの方で、高齢者向け個人顧問契約(ホームロイヤー)のご案内をさせていただいております。

→ http://sakuragaokadayori.cocolog-nifty.com/blog/2017/06/post-0544.html

 上記ブログの方にもあるとおり、弁護士と個人顧問契約(ホームロイヤー契約)を締結して、預貯金や不動産といった大事な財産の管理方針や、遺言の内容など、種々の心配事について、時間をかけて継続的に協議を行い、問題があれば弁護士の方で依頼を受けて解決するということができます。

 当事務所でのホームロイヤーの費用は、月額5000円から1万円を標準としておりますので、通常の顧問契約よりもご利用いただきやすい料金となっております。ご利用をご検討いただければ幸いです。

投稿者: 弁護士大窪和久

2017.09.12更新

 AppleWatchが発売開始になってだいぶ経過しました。
 

 私は発売後すぐに発注して、届いてから以後はほとんど毎日AppleWatchをつけて生活しています。

 ただ以前に住んでいた北海道名寄市では、とうとう私の他にAppleWatchを着用している人に会わないままでした。その後、さすがに東京にでてきたら他に着けている人もいるだろうと思っていたのですが、やはり着けている人は未だに少ない状況です。東京でのiPhoneユーザー率の圧倒的な多さからすると、かなり意外でした。

 ただAppleWatchについて買う価値があるのかどうか、というのは難しい問いです。AppleWatchがなければできないということがあまりなく、iPhoneがあれば大体事足りてしまうからです。

 例えば、AppleWatchでは電話をすることができますが、iPhoneとBluetoothで繋がっていなければできません。iPhoneが近くにあるのにあえて腕時計に向かって話しかける形で電話することが必要な状況は限られます。AppleWatchで通知を受けることができるのも確かに便利ではあるのですが、iPhoneを見ればいいだけの話でもあります。

 ただ、AppleWatchがなければできないこととして、一日の活動記録があります。AppleWatchでは「アクティビティ」機能というものがあり、一日にどれくらい徒歩で移動したか(歩数、距離)、どれくらい運動したかを記録してくれます。また「スタンド」として、一時間に一回立ち上がることを促してくれる機能があります。このデーターはiPhoneの「ヘルスケア」アプリに蓄積され、他のiPhoneのアプリでも参照することは可能なので、健康管理に役立たせることができます。このアクティビティ機能は有能ですので、健康が気になるのであればAppleWatchを購入する価値は十分あると思います。

 またseries2になってからは、suicaやiD等の電子マネー決済も使えるようになってきました。私はいまはコンビニや自動改札など、決済が必要な場面では必ずapple watchを使っています。財布から電子マネーの各カードを出さなくてもいいこと自体便利です。

 まだまだ発展途上のギアではありますが、上記の点に魅力を感じるのであれば購入してみてもいいのではないでしょうか。

投稿者: 弁護士大窪和久

2017.09.11更新

 昨年7月にポケモンGOがリリースされ、社会現象化しています。ダウンロード数は現在iOSで1億ダウンロード、androidで5000万ダウンロードにも達していますし、町中にもポケモンを求めて歩く人が本当に多いです。特に都内の公園はポケモンを求める人で溢れており、ゴミの問題等が顕在化しています。
 

 現実の世界とリンクさせた仮想空間を舞台とするゲームはポケモンGOが初めてではありませんが(ポケモンGOの開発元が製作したイングレスが先駆けとしてプレイされています)、ユーザー数の多さからポケモンGOは仮想空間を舞台とするゲームの問題点を顕在化しました。現在進行形中の問題ですが整理するためここにポケモンGOに関する法的問題をまとめておきます(あとで追記するかもしれません)。

○ポケストップの撤去請求の問題

 ポケモンGOにはアイテムを手に入れることができる「ポケストップ」という仮想空間上のポイントがあります。これは現実の公共施設や、歴史的建造物等があるところに設置されています。この「ポケストップ」がある場所にはモンスターも集まる(モンスターを呼び寄せる「ルアー」というアイテムを設置することもできます)ため、プレイヤーがやってくるということになります。特に「ポケストップ」が複数設置されている公園などは、多数のプレイヤーで集まっています。

 ゲームプレイヤーが集まるのを良しとしない施設管理者から、ゲーム会社に対して「ポケストップ」の撤去請求が多数出ています。なんと日本の最高裁からも「ポケストップ」の撤去請求がなされています。

 ゲーム会社は撤去請求には応じているので撤去請求訴訟がなされるという事態にはいたらないのだろうと思いますが、仮に訴訟になった場合、仮想空間上の設置物に対して現実の施設管理者からの撤去請求の可否という法的論点について判断されることになります。これまでこれを判断した裁判例も調べた限りは見当たらないので、どう裁判所が判断するのかは興味があります。

○ゲームのプレイヤーの事故・事件の問題
 ポケモンGOは現実の世界とリンクさせた仮想空間を舞台とするため、プレイヤーは現実世界をあちこち歩き回ることになります。そこでゲームに気を取られたまま歩きスマホをして、プレイヤーが事故に遭う危険性があることは否定できません。

 またゲームに気を取られるあまり、本当は入ってはいけない場所にプレイヤーが入り込むという問題も生じております。アメリカでは原発敷地内にプレイヤーが不法侵入したという事件も起こりました。

 これらゲームのプレイヤーの事故・事件についてゲーム会社が法的責任を負うとまではいえないのかもしれません(ゲーム内ではこれらの点についてゲーム機同時に注意喚起されており、ゲーム会社としてはこれでやるべきことはやっているということなのでしょう)が、ゲームによって生じうる事故事件に対する対策をどのようにとるのかは今後の課題だと思います。 

○個人情報の流出の問題

 ポケモンGOのプレイ画面の写真はSNSでも多くあげられていますが、プレイ画面の写真によりプレイヤーがどこでゲームをしていたかは特定されます。写真に位置情報が含まれていたならなおさらです。そのため、SNSの投稿者がどこにいるかという個人情報が流出してしまう危険性も否定できません。

○ゲーム課金の問題

 ポケモンGOについては、ほかのアプリゲームと同様にアイテム課金という要素があります。ポケモンを捕まえるためのボールや、ポケモンを呼び寄せるためのアイテムを課金して手に入れることができます。もっとも珍しいポケモンを捕まえるためになくてはならない課金アイテムというものはないため、いわゆるガチャを導入しているゲームに比べて射幸性は低いです。

 もっとも未成年者が多くプレイしているゲームであり、熱中するあまり未成年者が親に黙って多額の課金をするということはあるでしょう。その点についてゲーム会社が適切な対応をするかという問題はあります。

○青少年の深夜にわたる徘徊の問題

 ポケモンGOのポケモンは時間を問わずに出現するため、昼間だけではなく夜にもプレイヤーがポケモンを求めて歩き回ることになります。このため日本各地で夜の公園や神社などで青少年が補導されていることが報じられています。

 この点については、将来ゲーム側の方でプレイヤーの年齢によってモンスターの出現時間を制約するような対策が打たれるかもしれません。

投稿者: 弁護士大窪和久

2017.09.08更新

 弁護士の能力の高低にかかわらず、弁護士のデスクはおうおうにして書類の山になって片付いていないことが多いです。
 

 私も例外ではなく、以前は机の上に書類の山ができあがっており、片付いているとは全く言えない状態でした。
 

 事務所の机を片付けるためには、どうしてもこの書類の山をなんとかしないとどうにもなりません。
 

 以前ロシアで法律事務所を訪れたことが何回かあるのですが、例外なく弁護士事務所の机の上が片付いていました。そもそも机の上にも棚にも書類が殆ど無い状態です。
 

 ロシアでは法廷に出す書面の電子提出が認められていることや、法律に関する情報を書籍ではなくデータベースで得ていること(法改正が多く書籍では対応できないとのことです)から、書類や書籍を保管する必要が日本に比べて非常に少なくなっています。そのため法律事務所でも書類の山に苦しむことがなくなっています。
 

 結局、法律事務所の机が片付かない問題の解決方法は紙を排除することしかないと思います。
 

 日本では裁判所や法テラス等には紙の書面で提出しなければならなかったり、法律書籍が紙でしか出版されない(データベースサービスもほとんどない)ことから、ロシアと同じというわけにはいきません。ただ、書類の絶対量を減らす努力をしなければ、なかなか書類の山を駆逐することはできないと思います。 
 

 私は従前にあった書類については大幅に整理しました。新しく舞い込んでくる書類については、いらないものは即座に処分し、情報の保存が必要な物は電子化して処分しています。その結果まだ机の上に書類を置いて保存するということはしていません。これを維持し続けていくことが今後の課題です。

投稿者: 弁護士大窪和久

2017.09.07更新

 少し前になりますが、容疑者の勾留請求却下率が過去10年間で5倍超になったとの報道がありました。

 http://www.sankei.com/affairs/news/160328/afr1603280008-n1.html  

 報道によれば、全国の地裁、簡裁で平成17年に0.47%だった勾留請求却下率は平成26年には2.71%まで上昇し、過去10年間で約5.8倍になったということです。日本では昔から「人質司法」と言われ、裁判官が被疑者被告人の身柄拘束を安易に認めてしまうことが問題とされてきました。ただ、裁判所が身柄拘束を安易に認める傾向は変わってきており、報道にもあるとおり否認事件であっても最高裁が身柄拘束を認めない判断をするようになっています。

 私は11年の間司法過疎地と呼ばれる場所で弁護士をしており、その間地域で刑事事件を数多く担当しました。私が担当した刑事事件で捕まった方から一番多く受けた訴えは「一刻も早く外に出たい」というものでした。刑事事件で結論的には罰金刑や懲役刑の執行猶予がなされる場合であったとしても、その結論が出るまでに何日間もずっと身柄拘束が続くということによって、精神的に相当追い詰められてしまいます。また、身柄拘束で仕事に行けないことによって職場を首になるなどその後の生活にも大きな影響を及ぼすことになります。

早急に身柄拘束を解くため弁護人が勾留請求の却下を求めたり、裁判官がなした勾留決定に対する準抗告を行うことはとても重要です。前記のように裁判官が身柄拘束を安易には認めないようになっているとはいえ、弁護人が身柄拘束を争わなければずっと身柄拘束されてしまう危険は依然として高いからです。

 被疑者勾留が続きそのまま起訴された後であっても、保釈が認められる場合には身柄拘束は解かれることにはなります。ただ、起訴される前の被疑者勾留だけでも原則として10日間までは身柄拘束されることとなり、その間の不利益は非常に大きいものがあります。

 現在施行されている刑事訴訟法では、死刑又は無期もしくは長期三年を超える懲役もしくは禁固にあたる刑の事件の被疑者が勾留され身柄拘束されている場合には、国が弁護人をつけることとされています(被疑者国選制度。なお法改正により、2018年6月までにはすべての被疑者勾留事件まで国が弁護人をつける形に制度が変わります)。私も被疑者の国選弁護人として数多くの事件で被疑者の身柄拘束を争ってきました。ただ被疑者の国選弁護人として活動できるのはすでに勾留されてしまった「後」のこととなってしまいますので、弁護人がベストを尽くしたとしても勾留により身柄を拘束されるリスクそのものをゼロにすることはできません。

 身柄拘束されるリスクを少なくするためには、勾留される前、できれば逮捕される前に弁護人がつくことが本来望ましいです。逮捕される前に弁護人が被害者と示談交渉するなどして、捜査機関に逮捕をさせないようにする活動ができればベストです。

 また、逮捕されてしまったとしても、早急に弁護人がつけば勾留請求の取消を求めることで勾留されることを防ぐことができます。逮捕された直後は前記のように被疑者国選制度は使えませんが、弁護士会で実施している当番弁護士制度を使い無料で弁護士に接見に来てもらうこともできます。

 前記の通り身柄拘束に対してはいち早い弁護士による対応が重要となりますので、ご家族が警察に捕まってしまった場合であるとか、自分が刑事事件で捕まるか不安に思っている場合などはお気軽にご相談していただければと思います。

投稿者: 弁護士大窪和久

2017.09.06更新

 離婚に関してはこれまでいろいろな方の相談受任を受けてきましたが、上記の通り相談段階では離婚に関して迷われて離婚しないという選択をする人はいたものの、事件として受任したあとでよりを戻す方向に至った人はいませんでした。
 

 私の依頼者の中には、配偶者から離婚訴訟を提起されたものの、その配偶者が不貞行為を行っていることから争いたいという方はおられました。結局不貞行為についての立証が成功し請求を棄却することはできましたが、だからといって二人が同居して元の関係に戻るということはありませんでした。

 一方で、何人かの弁護士からは事件受任後に夫婦がよりを戻したという例を教えてもらうことができました。調停事件でもそうですし、訴訟として事件が係属した後でも依頼者の希望で事件をとりやめるということはあるようです。
 

基本的には一方当事者が弁護士を代理人につけて法的手続に入ることを決断したという時点で離婚を行うという強い意思があるわけですから、元に戻ることはないと思います。ただ、手続の中でその思いが変わることも(レアケースではあるとはいえ)全く無いわけではないようです。

 事件については予断をもつことなく依頼者の希望がどこにあるのか常に考えなければいけないということですね。

投稿者: 弁護士大窪和久

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