弁護士大窪のコラム

2016.04.07更新

 日本で一番駅から遠い裁判所はどこでしょうか。

 この点、「駅」をどう考えるか(バス停も含むのかどうか)、離島にある裁判所も含めるのかによって回答は変わってくると思います。

 「駅」は鉄道の駅と考え、離島は除くと考えると、日本の中でも北海道の裁判所が「駅」から遠い裁判所でトップクラスに入るのはまず間違いないと思います。

 例えば私が先々月までいた旭川地裁名寄支部管内では、地裁支部がある名寄にはJRの駅があるものの、独立簡裁である中頓別簡裁がある中頓別町には駅がありません。あえて中頓別簡裁の「最寄り駅」をあげるとすればJR宗谷本線の音威子府駅でしょうが、峠を越えて40キロ以上の道のりを走らなければ駅に到着しません。

 北海道でこのように「駅」から遠い裁判所があるのは、国鉄がJRになったあとに道内の多くの路線が廃線になったことによります。中頓別は1989年まで天北線の駅がありましたが、天北線の廃止に伴い駅もなくなりました。前記の音威子府駅からは天北線の代替バスが走るようになりました。

 しかし、年月を経て中頓別簡裁は実質的により「駅」から「遠く」なっています。

 音威子府駅から走っていた天北線の代替バスが、乗客数が少なくなったという理由から、昨年廃止されてしまいました。旭川から宗谷本線にのって代替のバスを使うということもできなくなってしまったのです。

 さらに、旭川から音威子府駅へ向かう普通列車も、今年のダイヤ改正で大幅に削減されてしまいました。旭川から音威子府に向かう下りの普通列車は、一日に3本しか走っていません。普通列車の削減については路線の自治体から反対の声も挙がりましたが、このようなことになってしまいました。

 このように裁判所が駅から遠くなってしまったのは、乗客数の減少及びJR北海道の経営難という背景があります。ただ住んでいる人がみんながみんな自家用車を使う訳ではない以上、ここまでインフラである公共交通機関を減らしてしまったのは相当問題だと思います。

投稿者: 弁護士大窪和久

2016.03.28更新

 3月23日付で、北海道弁護士連合会(道弁連)は、「北海道の司法過疎問題に弛みなく取り組む共同宣言」を出しました。

  http://www.dobenren.org/statement/h27statement03.html

 タイトルだけだとなんのことかよくわかりませんが、要は3月23日付で道弁連と北海道が司法過疎に関する「包括連携協定」を結んだことをアピールするものです。この「包括連携協定」について、道弁連は「北海道の弁護士が地域住民の法的支援に関わることを通して地域の法化社会を実現することを基盤としながら,さらに地域の暮らし,まち,ひとの法文化を創造し,共働して司法過疎対策を行うための基盤整備の第一歩と位置付けられる」としています。

 道弁連はこれまで司法過疎対策として、すずらん基金法律事務所をつくり道内の公設事務所に派遣する弁護士を養成することや、弁護士のいない自治体でも法律相談の機会をつくる道内一斉無料相談などの取り組みをしてきています。

 こうした取り組みはいずれも道弁連(に属している弁護士)が主体となり、いずれも自分たちの会費のみを使って行ってきたものです。道内一斉無料相談については、自治体に広報や場所の提供などの協力をいただいてはいるものの、弁護士のみが自費を費やしてきたことには変わりありません。そしてこうした取り組みの結果、公設事務所に所長を途切れさせず派遣したり、一斉相談で相談のニーズに応えるなど、成果を出してきています。

 ただ、司法インフラの充実については弁護士の手弁当の取り組みだけでは限界があります。特に北海道内の支部裁判所は弁護士が常駐していないところが多く、かつ取り扱い事件が制限されていたり期日が少ないなど根本的に問題があるのですが、全く改善されません。弁護士サイドからは常にこの問題点を裁判所に突き付けてきましたが、それが反映されることはこれまで全くありませんでした。

 本来司法インフラの充実については弁護士だけではなく地域住民の問題でもあるはずです。住民が声を上げることがなければ、裁判所はおそらく永遠に貧弱なままであり続けると思います。そんな中で北海道が行政として初めて道弁連と司法過疎対策について「連携」したというのは、それだけでも結構大きな前進といえるかもしれません。

 むろん「連携」の中身が重要なのは当然ですが、これまで司法過疎対策について行政と道弁連の「連携」すらなされてこなかったことからすれば、包括連携協定を結んだこと自体が大きな意義があるともいえます。

投稿者: 弁護士大窪和久

2016.03.11更新

 今日で東日本大震災が発生してから5年目となります。

 5年前の3月11日は,私は奄美大島にいました。奄美大島で3年間公設事務所(前半は「奄美ひまわり基金法律事務所」の名前でしたが,途中で看板を変えて後半は「末広町法律事務所」の名前となりました)の所長として業務をしていました。ただ,所長を退任し北海道の道北法律事務所の名寄事務所に行く事が決まっており,3月11日は引っ越し準備のため奄美から北海道にいくことになっていました。といっても奄美空港から旭川空港までは直通便はなく,鹿児島空港と羽田空港での乗り継ぎが必要でした。3月11日は夕方の便で鹿児島まで飛び,翌日羽田まで飛んだ後旭川空港まで飛ぶことにしていたのです。

 出発の準備をしていたころ,twitterをみると東北で大きな地震が発生したというツイートが沢山流れていました。テレビをつけてみると地震及び津波の様子が報道されており,大変なことが起こっていることは明白でした。ただ東北のことであり,東京には影響はないだろうと考えてそのまま奄美空港に車で向かいました。

 奄美空港に到着すると,地震の影響で飛行機が軒並み欠航となっていました。自分が乗るはずであった鹿児島行きの飛行機についても,羽田空港から飛行機が到着しないという理由で欠航となり,結局北海道に行くこと自体断念をせざるを得ませんでした。同じく飛行機が欠航となった友人を乗せて車で奄美市まで戻りましたが,車内で「これは阪神淡路大震災なみかそれを超える被害が出るかも知れない」という話をしていました。

 奄美では地震および津波の被害は全くなかったのですが,福島第一原発が次々と爆発した後で,島から内地にミネラルウォーターを送る人が続出した結果,店からミネラルウォーターが消えるようなこともありました。内地が混乱する中,いったい日本はこれからどうなってしまうのだろうと相当不安だったのを覚えています。

 その後北海道名寄市に約5年間いて,再び東京に戻って来たのですが,一時期は自粛していたネオンサインも元に戻り,震災前の東京に完全に戻っているなとの印象を受けました。電力不足の為に節電しなければいけないと言われていたはずですが,今はそのようなことは東京では問題ではないのでしょうか。

 人間は(自分を含めて)過去のことを直ぐに忘れてしまうものですので,今日の記憶をここに書き留めておいて,後で読み返そうと思います。震災5年目となる今日,改めて震災のとき自分が何を見て何を考えたか思い返してみてはいかがでしょうか。

投稿者: 弁護士大窪和久

2016.03.10更新

 弁護士は一般的に多数の事件を抱えており,その多くの事件を同時に進めていかなければなりません。その事件管理をどのように行うかについては,事務所ごとに様々な工夫をしていると思います。

 私は事務所を自分で経営した公設事務所も含めて何度も事務所をかわっていますが,事件管理のやり方は変えていきました。

 公設事務所を自分で経営していたときには,エクセルをつかって事件管理をしていました。公設事務所の場合事件数と相談数を支援委員会に報告する必要もあるため,事件全体が分かるようにする必要もあったためです。エクセルによる事件のデータベース化はそれほど難しくありませんし,今も事件を一覧するためにエクセルで事件全体のデータはつくっています。

 ただ,エクセルによる表だけみていればリアルタイムで動いている事件の進捗が全て把握できるというものではなく,結局紙のファイルでまとめている情報をみて事件の内容を把握するということになりました。終了している事件の問い合わせがきても,エクセルの情報だけでは回答できないので倉庫から終了事件の紙のファイルを持ち出すということもしていました。

 エクセルだけではなく,あわせて顧客管理ソフトを使ったり債務整理専用ソフトを使って事件管理を行うこともしてきましたが,事件全体が分かる形で管理するということはできず,結局紙のファイルを参照することが多かったです。

 前の事務所である道北法律事務所と今の事務所である桜丘法律事務所は事件管理システムとして弁護士事件管理専用ソフト「護」をつかっています。

 http://www.legal.co.jp/products/mamoru/mamoru.htm

 私が使った中では,この事件管理専用ソフトを使うのが一番事件管理の効率が良いと思いました。このソフトの良いところは,個別の事件の管理だけではなく,各弁護士と事務局の間でスケジュール管理,連絡,todo管理,依頼者からの電話連絡,事件毎の経理関係が共有できることです。道北法律事務所の旭川事務所と名寄事務所は場所的遠隔があるのですが,システムを共有しているため旭川で行っている事件もリアルタイムで名寄で把握することもできました。進行中の事件や終了した事件について確認するため紙のファイルを参照するということも圧倒的に少なくなりました。また,入力したスケジュールについては事務所外でもクラウドサービスを使ってスマートフォンで確認できるため,非常にいいと思います。

 ただし,今回事務所を移転する際に事件管理で問題となったのが,この事件管理ソフトの関係です。同じソフトを使っているのでそれほど問題はないようにも思われたのですが,この「護」はそもそも事件のデータを弁護士が移転の際に持ち出すということを想定しておらず,各事件のファイルについては一つ一つ手作業でコピーアンドペーストしなければなりませんでした(フォルダを纏めてコピーすることができないため)。

 弁護士は私に限らず事務所を移ることが多いのですが,そのたびに手作業でデータを一つずつ移すというのも難儀なので,ここは改善してもらいたいと思います。この点がクリアできればよりお勧めできるのですが。

投稿者: 弁護士大窪和久

2016.03.09更新

 私は合計6年間の間,公設事務所で所長弁護士をしてきました。公設事務所というのは,弁護士が足りない地域(例えば,裁判所の支部があるにも関わらずその管轄内に弁護士が一人もいないか一人しかいない地域)に,日弁連等が支援してつくられた法律事務所のことです。

 先月(平成28年2月)まで業務を行っていた北海道の名寄市(「なよろ」と読みます)にも私がいた道北法律事務所の他に,名寄ひまわり基金法律事務所という公設事務所が設立されています。公設事務所の特長として所長弁護士が3年ほどで交替するという点が有りますが,名寄の公設事務所もこの夏に弁護士が交替することとなっています。

 この公設事務所の後任者は,公募で選ばれます。応募してきた弁護士を,公設事務所の支援委員会(日弁連や地元の弁護士会などから委員が選ばれ,公設事務所を支援することを目的にされた組織です)のメンバーがみたうえで選任されることになります。

 私が公設事務所の所長をしていたのは5年前のことですが,その当時に比べると公設事務所の応募者は大幅に増えたと思います。私がいた旭川地裁管轄の公設事務所では,以前なら応募自体全くないということもありましたが(私がいた紋別でも私の後任の応募が公募後しばらくありませんでした),今では応募者が必ず複数でてくるようになりました。その原因としては弁護士の数そのものが大幅に増えたということもあるでしょうが,公設事務所に派遣する弁護士を養成する事務所が増えたということもあると思います。

 応募者が複数ということになると,当然ではありますが支援委員会の方で一人だけ選ぶということになります。どのような基準で選ぶかについては支援委員会のメンバー次第ということになりますが,最低限言えるのは「任期中問題を起こさない人」を選ぶということです。

 公設事務所は看板は「公設」とついていますが実態としては純然たる個人事務所であり,国や地方自治体が業務を監督することはありません。また日弁連や弁護士会も他の法律事務所に対して業務を直接監督することができないのと同じく,公設事務所の業務に対して直接監督することはできません。上記の支援委員会も公設事務所を「支援」することが目的であって,弁護士の業務を監督する権限があるわけでもありません。

 仮に派遣された公設事務所の所長の業務について問題があっても,支援委員会等が監督して業務を是正することは困難です。また公設事務所がある地域は他に弁護士がいないか少ないので,地元の人が公設事務所について悪い噂をきいたとしても,他の弁護士を選ぶことが難しいという点もあります。結果任期中に所長弁護士が問題のある業務を続けて地元の人に不利益を与え,事務所を「支援」した日弁連や弁護士会の評判も落ちるということになりかねません。

 支援委員会も上記のような問題が起こりうるということは十二分に理解しているはずなので,まずは「任期中に問題を起こさない人」を選ぶことになります。応募した弁護士が多少事務処理能力が高かったり,弁護士としてのキャリアがあったとしても,支援委員会の方では保守的な判断をして別の弁護士を選定するということは十分あると思います。

投稿者: 弁護士大窪和久

2016.03.08更新

 今年の3月に北海道から東京に業務場所を移りました。

 弁護士が事務所をかわるのはそんなに珍しいことでもないのですが,そのたびにいろいろ問題になることがあります。

 まず問題になるのが事件記録の保管場所をどうするか,です。

 弁護士が事件を行う際には必ず事件の記録を作成し,その中に訴訟でつかった主張書面などもいれていきます。その事件記録が事件を行っていけば行っていくほど,当然増えていくことになります。

 この事件記録をいつまで保管しておくかについては事務所によって様々ですが,事件の問い合わせ等は忘れた頃にやってくることもあるため,なかなか直ぐに捨てるということにはできないものです。ベテランの先生では,事件記録については十数年にわたり保管し続けているということもあるようです。

 事務所移転の際に事件記録が残っている場合には当然その事件記録をもっていかなければいけないことになります。ただ事件記録が多くなれば事務所におくということはできず,別途事件記録の保管場所を考えなければならないことになります。

 今の事務所も記録の保管を事務所内だけで行うことはできず,別途終了した事件記録を他の場所にて保管していました。名寄の事務所でも自分の終了事件記録については事務所以外に場所を借りて保管していました。

 この保管に関するコストも馬鹿にならないです。終了事件記録をPDF化して内容がわかるようにできないかとも考えましたが,PDF化にもコストがかかります。終了した事件の事件記録のホチキスを外して,機械にかけるのも相当な手間と時間がかかるからです。

 日本の裁判所は主張書面の提出を電子メールでは認めないため,どうしても紙の記録が増えていくのは避けられません。移動することを考えると少しでも紙の記録を減らしていくべきですが,どのようにするかはまだ試行錯誤しています。

投稿者: 弁護士大窪和久

2016.03.02更新

 これまで5年弱働いておりました弁護士法人道北法律事務所を2月で退職し、公設事務所派遣前に所属していた桜丘法律事務所に復帰いたしました。道北の皆様には名寄事務所在籍中多大なるご支援いただきましたことを改めて御礼申し上げます。

 今後地方での経験を活かして引き続き弁護士として東京で活動を行って参りますので,宜しくお願い致します。

投稿者: 弁護士大窪和久

2016.02.16更新

 2013年2月に書いた司法のIT化に関する記事です。発表自体は他の方の発表と合わせて判例時報のバックナンバーに載せてもらいましたので興味のある方はそちらを。

 日本の司法のIT化は3年前と比べて何も進歩してきませんでした。私はサハリンには過去4回ほど訪問しており、行くたびに街並みも発展していましたが、裁判所の設備も充実していきました。北海道の街並みと裁判所のそれと比べると、非常に複雑です。

(以下事務所ブログ転載)

 2013年2月9日に行われた日本裁判官ネットワークが主催するシンポジウム「地域司法とIT裁判所」の中で、私はサハリンの司法のIT化について発表させていただきました。

 北海道弁護士会連合会は20年前よりサハリン州弁護士会の弁護士と交流があり、2年に1回は北海道の弁護士がサハリン州を訪問しています。私も過去3回訪問させていただいておりますが、3回目の訪問時(2011年)でサハリンの裁判所の訪問を行った際、IT化の面では日本が大きく遅れをとっていると感じざるを得ませんでした。私がサハリンの方が進んでいると思った点は次の通りです。

1 情報キオスク

 サハリンの裁判所では、裁判所のロビーや法廷の外にタッチパネル式の掲示板(情報キオスク)が設置されており、事件毎に法廷の場所・当事者・代理人名が表示されますので、それでどの法廷でどのような事件の裁判がなされているか検索することが可能です。また、2010年より、係属中の事件につき全てインターネットで検索可能ともなっています。日本では、裁判所内では法廷の外に張り紙を貼ったり、受付で事件の案内等を行うにとどまり、ITの利用はなされていません。

2 テレビ電話会議システム

 サハリンの裁判所では、法廷内に他の裁判所内の法廷を映し出すモニターが設置されており、「同時裁判」が可能となっています。同時裁判とは、たとえば本来ハバロフスクの高等裁判所で行うべき裁判をサハリンの地方裁判所で別の裁判官が同時に法廷にでること及び当事者がサハリンの法廷にいる形で行うことを条件にしてできる、というものです。遠方の裁判所にはいけないという場合でも近くの裁判所にいく形で裁判を行うことができます。日本では、テレビ電話会議システムは一部裁判所(本庁及び規模の大きい支部)におかれているにとどまり、利用できるのも民事訴訟の証人尋問等限られた場合でしかありません。

3 全判決のインターネット公開

 サハリンの裁判所では、2008年以降言い渡しのあった判決については全てインターネットで公開が義務づけられております。事件の内容・裁判官名で判例検索可能です(ただし利用にあたっては登録が必要となります)。日本では、最高裁のサイト等で限定的にインターネットで公開されているにすぎず、裁判官ですら公刊物に掲載されている判例や訴訟当事者から提出のあった裁判例以外の判決の内容を知ることは困難なのが現状です。

4 主張書面等の電子メールによる提出

 サハリンの裁判所では、訴状・主張書面等について電子メールで提出可能となっています。日本では、書面提出に電子メールを使うことは認められておらず、持参、郵送あるいはファックスの利用による提出を行うことしかできません。

 なおサハリンでは弁護士の側もITを活用しており、裁判所に書面を電子メールで提出するのはもちろんのこと、判例や法律については書籍ではなくインターネット上のデータベースで検索を行って調べていました(法律が改正が多く、書籍では追いつかないためデータベースを利用しているとのことでした)。どの事務所もペーパーレスが徹底されており、紙の事件記録や書籍に囲まれた日本の法律事務所とはかなりの違いがあります。

 サハリンの司法がここまでIT化が進んだのはここ数年のことのようですが、IT化の結果司法の使い勝手は非常に向上していました。日本もIT化を進めない理由は無いと思いますので、司法の使い勝手を良くするため他国に学ぶべきだと思います。特にテレビ電話会議システムを充実させることにより、遠隔地故裁判所を利用できないという地方の悩みは大きく軽減されるはずです。

投稿者: 弁護士大窪和久

2016.02.16更新

 過去の事務所ブログから記事を転載しています。

 まだ北海道の会社では国際仲裁が広く使われているとは言えませんが、今後ロシアの会社との取引が拡大していけば、紛争解決手段ということでは有益であると思います。

 この国際仲裁については、本年3月25日に札幌で日弁連主催・道弁連と札弁共催でセミナーが開かれますので、興味のある方は行かれるといいと思います。

http://www.nichibenren.or.jp/event/year/2016/160325.html

(以下過去ブログより転載)

 2012年3月5日に北海道弁護士会連合会で国士舘大学の中村達也教授をお招きし,国際仲裁についての研修が行われました。

 国際仲裁とは,国を超えた紛争につき,第三者である仲裁人が当事者の言い分や証拠に基づき判断をして,紛争を解決する制度のことを言います。

 この国際仲裁は,例えばロシアの会社と取引をするにあたり,トラブルが生じた場合には問題解決の手段として極めて大きな意味を持ちます。なぜなら,訴訟による解決が困難であるからです。

 この点,ロシアの会社とのトラブル(例えば,売買代金の不払いがあった場合など)について日本の裁判所で裁判を行い,勝訴判決を得ることができたとしても,日本の裁判所で勝ち取った判決をもとにしてロシアで強制執行をしようとしても,することができません。日本とロシアの間では「相手国の判決を相互に承認する制度は存在しないので,日本における裁判でロシア企業に対する有利な判決あるいは仮処分命令を得たとしても,この判決や命令に基づいて,ロシア国内での相手方の資産差し押さえ等,強制執行は,事実上,不可能」であるからです(2010年3月 独立行政法人日本貿易機構「ロシアにおける契約行為と実務上の留意点」14頁)。

 一方,国際仲裁により判断を得ることができれば,仲裁判断に国際的通用性が認められているので財産の差し押さえをすることができます。

 この国際仲裁をおこなうためには,あらかじめ当事者間で契約で国際仲裁を行う場合の取り決めをすることが必要です。

 ここで特に注意をしなければならないのが,仲裁を行う場所(仲裁地)や,仲裁を行う際に判断の基礎となる法(準拠法)をきちんと定めておくことです。仲裁地を決めておかなかったが故に,仲裁地が遠く離れた第三国になってしまうというケースもあります。日本を仲裁地にし,日本法を準拠法とすれば紛争が起こった場合に有利になるでしょう。

 今後北海道とサハリンなどロシアとの間での商取引はより活発になると思いますが,取引を行うにあたり国際仲裁をどう行うかについてはきちんと取り決めておくことをお勧めいたします。

投稿者: 弁護士大窪和久

2016.02.15更新

 過去に書いた事務所ブログの転載をしています。

 ちなみに旭川地裁名寄支部については、これが書かれたときから状況は全くよくなっていません。裁判期日や調停期日が2か月後3か月後になることも珍しいことではありません。

 こんな状況であれば、むしろ全手続を本庁のテレビ会議でやれるようなシステムにした方がマシかも知れませんが、そうしたIT関係のインフラにもお金を全くかけないんですよね、裁判所は。

(以下過去のブログ転載)

 2012年3月2日に,日本弁護士連合会で「全国支部問題シンポジウム」が開かれました。

 これは,日弁連が「支部の機能低下を食い止め、支部において「市民に身近で利用しやく、頼りになる司法」が実現するよう、各地の情勢と改善策について検討することを目的に開催」しているもので,今年で5回目となります。

 例えば道北地域では旭川市には旭川地方裁判所があり,旭川市周辺に住む人はこの裁判所を使い裁判などすることができますが,旭川から遠方に住む人は旭川地方裁判所の支部を使うことになります(旭川地方裁判所には,稚内,名寄,紋別,留萌の四つの支部があります)。

 ところが,支部は地方裁判所の本庁と異なり,裁判が出来る期日が限られるであるとか,出来ない事件があるなど様々な制約があります。旭川地方裁判所の各支部は日本の中でも最も制約が厳しい支部で,裁判官が一月に一回三日間の間だけしかいないため,その間にしか裁判を行うことができません。支部と言うよりも,出張所とたとえた方が良いかもしれません。

 裁判所の支部は市民が利用しやすい裁判所とは言えないのでは無いかという問題意識のもと,シンポジウムでは各地の抱える問題点について議論がなされました。

 本年の議論の内容については下記リンク先(ツイッターの投稿内容をまとめたもの)を参照して頂きたいと思いますが,5回のシンポを経ても,裁判所に大きな改善が見られたと言うことはありません。

 司法試験に合格した人数が増えているにもかかわらず,裁判官の数もほとんど増えてはいません。そもそも日本の司法予算が長年にわたって国家予算全体の0.4%ほどでしか無い状態が続いており(平成23年度は約3200億円であり,来年度は減額が予定されています),その限られた予算の中では人的にも物的にも裁判所を充実させることができないのでしょう。ただ,それでは地方に住んでいる人の「裁判を受ける権利」を守ることにはなりません。

 全国支部問題シンポジウム (togetter) http://togetter.com/li/266478

投稿者: 弁護士大窪和久

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