弁護士大窪のコラム

2016.02.16更新

 過去の事務所ブログから記事を転載しています。

 まだ北海道の会社では国際仲裁が広く使われているとは言えませんが、今後ロシアの会社との取引が拡大していけば、紛争解決手段ということでは有益であると思います。

 この国際仲裁については、本年3月25日に札幌で日弁連主催・道弁連と札弁共催でセミナーが開かれますので、興味のある方は行かれるといいと思います。

http://www.nichibenren.or.jp/event/year/2016/160325.html

(以下過去ブログより転載)

 2012年3月5日に北海道弁護士会連合会で国士舘大学の中村達也教授をお招きし,国際仲裁についての研修が行われました。

 国際仲裁とは,国を超えた紛争につき,第三者である仲裁人が当事者の言い分や証拠に基づき判断をして,紛争を解決する制度のことを言います。

 この国際仲裁は,例えばロシアの会社と取引をするにあたり,トラブルが生じた場合には問題解決の手段として極めて大きな意味を持ちます。なぜなら,訴訟による解決が困難であるからです。

 この点,ロシアの会社とのトラブル(例えば,売買代金の不払いがあった場合など)について日本の裁判所で裁判を行い,勝訴判決を得ることができたとしても,日本の裁判所で勝ち取った判決をもとにしてロシアで強制執行をしようとしても,することができません。日本とロシアの間では「相手国の判決を相互に承認する制度は存在しないので,日本における裁判でロシア企業に対する有利な判決あるいは仮処分命令を得たとしても,この判決や命令に基づいて,ロシア国内での相手方の資産差し押さえ等,強制執行は,事実上,不可能」であるからです(2010年3月 独立行政法人日本貿易機構「ロシアにおける契約行為と実務上の留意点」14頁)。

 一方,国際仲裁により判断を得ることができれば,仲裁判断に国際的通用性が認められているので財産の差し押さえをすることができます。

 この国際仲裁をおこなうためには,あらかじめ当事者間で契約で国際仲裁を行う場合の取り決めをすることが必要です。

 ここで特に注意をしなければならないのが,仲裁を行う場所(仲裁地)や,仲裁を行う際に判断の基礎となる法(準拠法)をきちんと定めておくことです。仲裁地を決めておかなかったが故に,仲裁地が遠く離れた第三国になってしまうというケースもあります。日本を仲裁地にし,日本法を準拠法とすれば紛争が起こった場合に有利になるでしょう。

 今後北海道とサハリンなどロシアとの間での商取引はより活発になると思いますが,取引を行うにあたり国際仲裁をどう行うかについてはきちんと取り決めておくことをお勧めいたします。

投稿者: 弁護士大窪和久

2016.02.15更新

 過去に書いた事務所ブログの転載をしています。

 ちなみに旭川地裁名寄支部については、これが書かれたときから状況は全くよくなっていません。裁判期日や調停期日が2か月後3か月後になることも珍しいことではありません。

 こんな状況であれば、むしろ全手続を本庁のテレビ会議でやれるようなシステムにした方がマシかも知れませんが、そうしたIT関係のインフラにもお金を全くかけないんですよね、裁判所は。

(以下過去のブログ転載)

 2012年3月2日に,日本弁護士連合会で「全国支部問題シンポジウム」が開かれました。

 これは,日弁連が「支部の機能低下を食い止め、支部において「市民に身近で利用しやく、頼りになる司法」が実現するよう、各地の情勢と改善策について検討することを目的に開催」しているもので,今年で5回目となります。

 例えば道北地域では旭川市には旭川地方裁判所があり,旭川市周辺に住む人はこの裁判所を使い裁判などすることができますが,旭川から遠方に住む人は旭川地方裁判所の支部を使うことになります(旭川地方裁判所には,稚内,名寄,紋別,留萌の四つの支部があります)。

 ところが,支部は地方裁判所の本庁と異なり,裁判が出来る期日が限られるであるとか,出来ない事件があるなど様々な制約があります。旭川地方裁判所の各支部は日本の中でも最も制約が厳しい支部で,裁判官が一月に一回三日間の間だけしかいないため,その間にしか裁判を行うことができません。支部と言うよりも,出張所とたとえた方が良いかもしれません。

 裁判所の支部は市民が利用しやすい裁判所とは言えないのでは無いかという問題意識のもと,シンポジウムでは各地の抱える問題点について議論がなされました。

 本年の議論の内容については下記リンク先(ツイッターの投稿内容をまとめたもの)を参照して頂きたいと思いますが,5回のシンポを経ても,裁判所に大きな改善が見られたと言うことはありません。

 司法試験に合格した人数が増えているにもかかわらず,裁判官の数もほとんど増えてはいません。そもそも日本の司法予算が長年にわたって国家予算全体の0.4%ほどでしか無い状態が続いており(平成23年度は約3200億円であり,来年度は減額が予定されています),その限られた予算の中では人的にも物的にも裁判所を充実させることができないのでしょう。ただ,それでは地方に住んでいる人の「裁判を受ける権利」を守ることにはなりません。

 全国支部問題シンポジウム (togetter) http://togetter.com/li/266478

投稿者: 弁護士大窪和久

2016.02.14更新

2012年2月から書き始めた事務所ブログから順番に転載/追記をしていこうと思います。まずは4年前の自己紹介から。初心忘るるべからずですね。4年前に名寄市役所にいらした禧久さんはもう退職されていますが、未だに交流を続けさせていただいています。

(以下転載)

名寄事務所の所長をしている大窪と申します。このたび事務所のサイト及びブログを開設いたしました。最初ですのでまずご挨拶をさせて頂きたいと思います。

 私は昨年春より名寄事務所で業務を行っておりますが,経歴にあるとおり北海道で弁護士として業務を行うのは名寄が初めてではありません。2005年から2008年までの3年間はオホーツク海に面した紋別市の法律事務所(紋別ひまわり基金法律事務所)で仕事をさせていただいております。

名寄と同様,紋別は裁判所があるにもかかわらず長年にわたり弁護士が一人もいない街でした。裁判所があるのに弁護士がいない場所をなくすため日本弁護士連合会は各地に「公設事務所」と呼ばれる弁護士を交替で派遣する法律事務所を開設していますが,紋別ひまわり基金法律事務所もその一つです。

そこで街にたった一人の弁護士として多数の相談を受け,多数の事件を受任し解決してきました。紋別での仕事を通じ,弁護士がいない地域では一人の弁護士の力がより重要であると考えるようになりました。

その後も鹿児島県奄美大島という弁護士が少ない地域で,公設事務所所長として3年間仕事を行ってきました。昨年北海道に戻り名寄で仕事を始めたのも,名寄も未だ市内に弁護士が2名しかおらず,一人の弁護士の力が強く求められているところであると考えたからです。

 笠原弁護士の挨拶の通り,道北地域でも弁護士が増えておりますが,弁護士の数が単に地方で増えればいいというものではなく,その場所の弁護士がどのような仕事をするかが問題です。特に弁護士の少ない地域では地域の方が弁護士を選ぶことが難しいので,弁護士の責任は本当に重いものだと思います。

 長年全国の弁護士・司法書士と協力して多重債務問題に取り組まれた奄美市役所の禧久孝一さんの著書「奄美の「借金解決」係長」では,弁護士がいない地域における法律専門家のあるべき姿について「たしかにここ数年で,ひまわり基金法律事務所とか,法テラス(日本司法支援センター)の地方事務所など,誰もが気軽に法律相談を受けられる数多くの「場」が,全国に設置されました。ただ,そういった取り組みはまだ緒についたばかり。そこに赴任する弁護士や司法書士に必要な「資質」は,都心部の法律事務所とは異なる部分も多々あります。そこが十分に理解されていないように思うのです」と指摘されています。

 また,弁護士自身の主張を最後まで押し通さないとプライドが許さない弁護士や,相談者に対して高圧的だったり冷淡だったりする弁護士には「弁護士過疎地域で仕事をして欲しくありません」という厳しい指摘もなされております。

 私が奄美大島で3年間仕事をしている間には,禧久さんから直接弁護士のあり方についてお話を伺いましたが,本当に耳の痛い指摘ばかりでした。

 今後名寄で仕事を行っていくにあたり,より良い法的サービスを提供させて頂くだけではなく,親しみやすい事務所としていきたいと考えております。今後ともよろしくお願いいたします。

(2012年2月9日)

投稿者: 弁護士大窪和久

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